母が小説家になったのは私が生まれるよりも前のこと。 父はそのもっと前から母の物語が好きだったそうだ。 母は時々、温かい歴史を話した。 父が登場するその話が私は好きだった。 でも、父がいない今、それが歴史か物語か見抜くことはできない。 母はきっと、まだ隣にいて欲しかったんだと思う。