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p.256|この世界に生きる人じゃない、そう感じる人がいた。

窓から見える空の寂しさを知る人へ

25年を生きた人間。 数字が同じでも、その道筋は全く違う。 濃霧の夜を少し前の自分だと言う彼にとっての霧は一体どんなものなんだろう。 夜でなくても、現在進行形で霧が晴れない私は‘暗い’のだろうか。 でも、もうすぐ、またすぐだとこの体が言っているからこの霧が晴れるわけがない。

昨日のラジオの声の主は作詞家だと言っていた。 表現者とは一体どんな気持ちなんだろう たった一言で救われることがあって、 たった一言で絶望することもある。 矛であり、盾もある“言葉”を 声の主はどんな風に使うのだろう。 彼の作る唄を聴きたくなった。 いつか、聴けるのかな。

退院が決まった。 9度目の病院生活は、とても長く感じた。 今年の誕生日はどこで過ごすのだろう。 そんなことを考えていたら ラジオから声が聞こえてきた。 私と同い年の、その声の持ち主は 濃霧の夜は少し前の自分のようだと言っていた。 窓を開けると、濃い霧の夜が広がっていた。

夢の種を見つけた。 自転車に巻き付くように登場した蔦は隣の建物のフェンスに伸びる蔦だった。 朝日を浴びて生命力を漲らせるそれは眩しくて 同時に、その細い体で生きようと必死な姿はここにいる人たちと重なった。 そういえば 中庭でどんぐりを見ていた彼はまだどこかにいるだろうか。

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