◆「そして人間の自由とは、演戯の自由のほかのなにものも意味しません」(福田恆存『藝術とは何か』41頁,中公文庫) 「演戯」を抽象化すれば意識的な仮面と意識的な素顔である。つまりまずは明確な意識で二つに分けること、分節することが必要となる。生真面目の融合無分別はこれと対極にある。
◆20代のころに読み大きな影響を受けたのは、福田恆存『人間・この劇的なるもの 』(新潮文庫)であった。二重性(ときに二律背反になりえる質)という二つの旋律が織り成す生の形式(要請)が、現在の完全燃焼のうちに人は演戯を獲得する。必然のうちに未然を見て、未然のうちに必然を予感せよと。