【ぶるっちの読書日記 第42回】 長い結婚生活で感じること。他人と健やかに暮らす秘訣は、信頼とあきらめ。他人は、自分の所有物や鏡ではないと心に刻むこと。だからふたり暮らしでも「おひとり様」なのだ。 「おひとり様のふたり暮らし」スタジオクゥ ひよさ&うにさ(コミックエッセイの森)
【ぶるっちの読書日記 第39回】 直木賞作家、朝井氏のエッセイ…いや、エッセイと言うにはあまりに自虐的バカ話で、圧倒的に可笑しい。手垢のついた表現だが、作者をここまで身近に感じることができるのは、朝井氏の現実認識力と文才があってこそ。 「時をかけるゆとり」朝井リョウ(文春文庫)
【ぶるっちの読書日記 第40回】 ほんの僅かな毛羽立ちをそっと撫で付けてみたり、時には生地に逆らってそそけ立たせてみたり…そんな心象風景を連想させる短編集。シルキーな絵画のようで、挑発的要素のない芸術。穏やかな空気感を纏いたい日曜の午後にぜひ。 「ギフト」原田マハ(ポプラ文庫)
【ぶるっちの読書日記 第38回】 恥ずかしながら私、読んだ本の内容を忘れやすいタチなのです…そんな私が、数年前に読んだにも関わらず詳細を覚えているのが本作。ラストシーンを思い出すだけでウルッと出来るのは、私にとってはこの本しかありません。 「容疑者Xの献身」東野圭吾(文春文庫)
【ぶるっちの読書日記 第36回】 物事を真摯に観察し、その理を普遍的に詳らかにする…理系ミステリらしく条理が整ったストーリー。しかしその餡には微かなセンチメントが忍ばせてある。そんな人間の愛らしさは、きっと「科学」と相反するものではないのだ。 「リケジョ!」伊予原新(角川文庫)
【ぶるっちの読書日記 第31回】 パッと見はキャラ萌えゆるゆるの癒し系。一方で、冬キャンプの凍える寒さや、明け方の富士山の輝きを見事に描き切った表現派。その両立こそが、このマンガが持つ高いオリジナリティの源泉だと思うのです。 「ゆるきゃん△」あfろ(まんがタイムKRコミックス)
【ぶるっちの読書日記 第34回】 「コミュニケーション能力が不足しているから、手段である英語も獲得できない」…発行された1982年当時はおそらく先鋭的だった議論が今も変わらずここにあるのは何かもどかしいのです。 「外国人とのコミュニケーション」J.V.ネウストプニー(岩波新書)
【ぶるっちの読書日記 第32回】 古典と呼ばれても遜色ないような歴史的名作。人間関係のドロドロや、それに関わる殺人も起こるミステリー…なのに、読みにくさが全くない。フィクションと現実との距離感の上手さこそが赤川小説の真骨頂なのです。 「三毛猫ホームズの推理」赤川次郎(角川文庫)
【ぶるっちの読書日記 第35回】 超自然的な小説は、想像力がオーバーヒートするためあまり得意ではありません。しかし本作は、浮世離れしながらも叙景的で、際立ったキャラクター達が縦横無尽に舞い遊ぶ、快然たるファンタジーでした。なむなむ。 「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦(角川文庫)
【ぶるっちの読書日記 第21回】 昔、見栄を張って「キッチン」の英語翻訳本を買いました。難しくて読み通せないかなと思ったのですが、なんと完読できたのです。シンプルな英語で、色や匂いまで感じ取れました。それだけ世界的名作なんだと実感したのです。 「キッチン」吉本ばなな(角川文庫)
【ぶるっちの読書日記 第11回】 大人が忘れてしまった、重くて痛々しい「子どもの無力さ」がここにはある。「こんな作品、所詮ライトノベルだろ」とうそぶく人に、この作品は決して届かない。 大人こそ、そんな偏見をなくすべきなのに。 「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」桜庭一樹(角川文庫)
【ぶるっちの読書日記 第7回】 「水曜どうでしょう」名物Dのエッセイ集。普通の番組が「旅」を企画の軸に据えるところ、どうでしょうは「互いの信頼」を軸にします。行き当たりばったりで喧嘩ばかりでも、それが素直に笑える稀有な番組なのです。 「人の波に乗らない」藤村忠寿(朝日新聞出版)
【ぶるっちの読書日記 第28回】 角田さんが世界中を旅した際にしたためたエッセイ集。僻地も含む、時に大胆な旅。その感慨を、古の紀行文であれば和歌に託すところ、本作では淡々と記していく。しかしその端的な詩情は、不思議な高揚感を呼び起こす。 「いつも旅のなか」角田光代(角川文庫)
【ぶるっちの読書日記 第14回】 心情の揺れ動きや表情の変化など、文章のみで過不足なく伝えるのは難しい。しかし、本作は2人の女流剣士を主人公に、素敵なスポーツ青春モノを構築している。爽快とはかくもノスタルジックなものか…(笑) 「武士道シックスティーン」誉田哲也(文春文庫)
【ぶるっちの読書日記 第4回】 「すべてがFになる」で有名なミステリ作家 森氏の1998年ウェブ日記。多作な作家らしい、種々の話題で書き下された膨大な文章。氏の(正用でも誤用でも)「穿った」視点に触れると、頭の中が洗濯された気分になる。 「すべてがEになる」森博嗣(幻冬舎文庫)
【ぶるっちの読書日記 第3回】 鴻上氏のエッセイ単行本第17弾。柔和なようで鋭利な筆致。10代で初めて触れた氏の文章は、私の人生観に大き過ぎる影響を与えている。 ー芸能は「肯定感」を、芸術は「挑発」を与えるものー 「この世界はあなたが思うよりはるかに広い」鴻上尚史(扶桑社)
【ぶるっちの読書日記 第2回】 思想から芸術、経済から科学までのリベラルアーツに関するプロとの対談集。平野啓一郎さんの小説論や山極寿一さんの人類学論は読んで損はないかも。 「これからの教養 激変する世界を生き抜くための知の11講」菅付雅信 編(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
【ぶるっちの読書日記 第1回】 『競争優位性のある戦略の真髄は、他人に話したくなるストーリー』という提言で著名な経営学者の日記。論理的洞察と個人的嗜好とを交えた軽妙洒脱な文章は、『事実』だけでなく『事実を捉えるセンス』まで追体験できる。 「戦略読書日記」楠木建(プレジデント社)
【ぶるっちの読書日記 第41回】 アラサー女性たちの仕事や恋愛を切り取ったオムニバスマンガ。美味しい朝食を食べ一息入れることで新たな視座を手に入れるまでがフォーマット…誰もが日々行う営みの意義を静かに提示してくれる。 「いつかティファニーで朝食を」マキヒロチ(バンチコミックス)
【ぶるっちの読書日記 第37回】 物質的豊かさには流されないムーブメント…この本はそれを「一時的流行」ではなく、「昔ながらの基本的な営み」として記しています。淡々とした、でも何より魅力的な日常が羨ましいのです。 「大東京ビンボー生活マニュアル」前川つかさ(ワイドKCモーニング)
【ぶるっちの読書日記 第33回】 何のきっかけでこの本に辿り着いたのか全く覚えていません。ただ、中学生の時にこの本を読み(当時はコバルト文庫でした)、何かを創作したい衝動に駆られたのをはっきり覚えています。紛れもなく、私を形造った原点です。 「星へ行く船」新井素子(出版芸術社)
【ぶるっちの読書日記 第30回】 攻めたタイトルに対して、非常に堅実な内容。要点はよくある自己啓発本と遠くありませんが、作者が足掻いてきた軌跡を綴る真っ直ぐな言葉の重さこそが、この本の価値そのものだと思うのです。 「作家で億は稼げません」吉田親司(エムディエヌコーポレーション)
【ぶるっちの読書日記 第29回】 最近流行りのごはん作る系マンガ。ゆっくりまったりの癒し系で、登場人物みんな優しくトゲがない…気持ちが洗われる貴重な経験が出来ます。そういう意味では、読者に向けた「ごほうび」でもあるのですね。 「ごほうびごはん」こもとも子(芳文社コミックス)
【ぶるっちの読書日記 第27回】 自分の夢が他人の夢と相容れない時、私はどうすべきか・・・軽いタッチの表紙に騙されるなかれ。この本はライトノベルの風貌をしながら、本質はSFであり、任侠ものであり、そして哲学書そのものなのです。 「猫の地球儀 その2 幽の章」秋山瑞人(電撃文庫)
【ぶるっちの読書日記 第26回】 我々が何かを考える時、自分の立ち位置が基幹となる「言語」の助けを借りる。バイリンガルの本質は、複数言語をペラペラ操ることではなく、明確な立ち位置を持った上で、各言語で自分を表現できることなのだ。 「英語を子どもに教えるな」市川力(中公新書)
【ぶるっちの読書日記 第25回】 人間の視界は限られている。マスコミも、いまや個人ですら、その限定的「視点」を振り翳す。しかし180度後方には全く違った景色が広がっているかもしれない。それを想像できることこそ人間の叡智であり器量なのだろう。 「破線のマリス」野沢尚(講談社文庫)
【ぶるっちの読書日記 第24回】 このストーリーを着想し、精緻なプロットを的確な文章群に組み立てた価値ある大仕事。これ以上は何も言わない。興味ある方はまず読んで欲しい。そして読み終わった時に、タイトルを再度味わって欲しい。 「葉桜の季節に君を想うということ」歌野晶午(文春文庫)
【ぶるっちの読書日記 第23回】 「ピタゴラスイッチ」生みの親である筆者。まったり、ゆるゆる、かわいい、と皮相的に見せながら、コアには種々の知性を忍ばせる。「表層に惑わされない想像力こそが大事なんだよ」と言わんばかりに。 「四国はどこまで入れ換え可能か」佐藤雅彦(新潮文庫)
【ぶるっちの読書日記 第22回】 名作を参照したストーリー、人が死なないミステリー、ワトソン役と安楽椅子探偵…それ自身は旧知のプロット。こじんまりした短編集…そんな顔をしながら、最後一気に話が収束していく様は筆致の力。 「ビブリア古書堂の事件手帖」三上延(メディアワークス文庫)
【ぶるっちの読書日記 第20回】 くまモン産みの親は語る。「特別な人が持つ先天的才能」ではなく「精度高い知識のもと事象を客観視し、精度高くアウトプットすること」こそセンス。感覚ではなく論理で説明できるから再現性があるのだ、と。 「センスは知識からはじまる」水野学(朝日新聞出版)
【ぶるっちの読書日記 第19回】 ほんの一晩、生の世界と死の世界とをツナグ物語。そう聞くとハートフルなファンタジー。凡作なら感動の邂逅で染めるところを、本作は魂の対峙で塗り潰す。再会は自分の鬱屈を昇華させる機会、なんて一方通行で単純じゃない、と。 「ツナグ」辻村深月(新潮文庫)
【ぶるっちの読書日記 第18回】 昔、アメリカ赴任の機会を得た。個人主義で冷たい文化…恐れと共に渡米したが、事実は全く逆だった。個人主義とは「個々を尊重すること」、だから「自分を大切にするように、他人も大切にする」ことだった。 「ニューヨークのとけない魔法」岡田光世(文春文庫)
【ぶるっちの読書日記 第17回】 本には、何らか筆者なりの結論があります。しかしこの本は「分からない」という結論をもって「あなたはどう思いますか?」と問いかけます。自分で考え抜き、「自分自身を得る」きっかけを与える本と思います。 「14歳からの哲学」池田晶子(トランスビュー)
【ぶるっちの読書日記 第16回】 「夢をかなえるゾウ」でお馴染み、水野氏がブログに書き溜めた日記です。と言いつつ、ほとんどは少しお下品なネタの集まり。漢の生き様を自分でツッコんでいくスタイルは、日々の倦怠感を忘れるのにちょっと効果的かも(笑)。 「ウケる日記」水野敬也(文響社)
【ぶるっちの読書日記 第15回】 人が何かを判断する際、「感覚、感情」あるいは「論理、理性」を根拠にします。後者は「論理学」として体系化され、コンピュータの演算などにも使われています。この本、難解な論理学を丁寧に学べる良書です。 「まったくゼロからの論理学」野矢茂樹(岩波書店)
【ぶるっちの読書日記 第13回】 詐欺師たちが挑む「正義の詐欺」…使い古された題材を用いながらも、張り巡らされた伏線の見事な回収劇が、本作を一廉の作品に仕上げている。 ー理想的な詐欺はですね、相手が騙されたことに気づかない詐欺なんですよ 「カラスの親指」道尾秀介(講談社文庫)
【ぶるっちの読書日記 第12回】 棚の奥から大事に保管している本が出てきました。文字が多く決して見目麗しいマンガではありませんが、一般の少女漫画にはない、シニカルな視点や調和的顛末との絶妙な距離感が大好きで、私の心のバイブルなのです。 「甲子園の空に笑え!」川原泉(白泉社文庫)
【ぶるっちの読書日記 第10回】 噂はどう拡まるのか?ウイルス感染を抑制するには?火事の延焼を防ぐ都市計画は?…基礎科学だった「つながり理論」が、現代の必須課題に応用展開されていく様を見るにつけ、サイエンスの力強さに心震えてしまうのです。 「つながりの科学」小田垣孝(裳華房)
【ぶるっちの読書日記 第9回】 キラキラした1ページを切り取った恋愛小説。ただ、どこかで見たようなプロットだなあ…といったパッと見に騙されるなかれ。その骨格にあるのは、実は緻密なミステリー。やっぱり、人間ってとってもミステリー。 「イニシエーション・ラブ」乾くるみ(文春文庫)
【ぶるっちの読書日記 第8回】 高校生だからこその濃密な時間を素敵に表現した一冊。「いい年したオッサンが読む本か?」というツッコミも聞こえてきますが(笑)、「実用性」のためでなく「心のメンテナンス」のために触れたい本なのです。 「マリア様がみてる」今野緒雪(集英社コバルト文庫)
【ぶるっちの読書日記 第6回】 我々は、人生の終わりをどこか遠くに感じて生きている。しかし、自分に明確な余命が与えられたとしたら…夭逝した筆者の痛々しいほどの機微が、この小説はフィクションではない、と思わせるような現実感を与えている。 「余命10年」小坂流加(文芸社文庫NEO)
【ぶるっちの読書日記 第5回】 Kindle Unlimitedで見つけた漫画。今は冴えないおじさんだけど…試行錯誤しながら音楽にハマっていった80年代。ワクワクしながらもどこかジメジメする青春がそこにありました。 「音楽とおじさん」奈良崎コロスケ(Kindle e-book)