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「200字の書評」(324) 2022.8.10



おはようございます。気温は既に30℃を超えています。

立秋です。ご挨拶は暑中見舞いから残暑見舞いになりますが、暑さがぶり返しています。お盆の帰省ラッシュ、故郷へ急ぐ気持ちは理解しますが、コロナと交通事故に十分注意し、楽しい旅になるよう願っています。

散歩の道すがら百日紅が存在感を際立たせていました。 強烈な暑さと豪雨、気候変動の激しさは人智を超えているのでしょうか。超えさせたのは人間の放埓さかもしれません。北陸、東北の豪雨被害は深刻です。「50年に一度の危険」「命を守るための行動を」と気象庁を始め関係各機関は呼びかけています。でも考えてください。毎年ですよ。こんな状況は。

コロナ対応も同様ですが、掛け声ばかりで、教訓を生かした対策やら、長期的な施策は一向に見えてきません。国土強靭化、均衡ある発展など、耳障りの良いスローガンは掲げても、国民の生命財産を守る着実な政策展開はされていないのが現実です。 ウクライナ戦争、台湾危機など、新しい戦前になりそうな気配が漂っています。広島・長崎の原爆投下、敗戦、振り返るべきこの夏です。最も振り返るべき為政者たちは、海の向こうの親分の顔色を窺って、軍事費増額やら改憲に現を抜かしている、情けないこの夏です。

情けないと言えば、統一教会をめぐる政府自民党のけじめのなさです。アベ派を中心に大物小物100人以上関与していると言われています、哀れなのはその不道徳さがわかっていないことです。物心両面の支援を受けて絡めとられ、政策的にも発想を同じくされています。韓国生まれの怪しげな宗教団体を賛美する一方で、嫌韓を公言する。日本人からの献金は韓国に送られている。矛盾は感じないのでしょうか。政界の宗教汚染を指してカルト・ファシズム(日本会議―国家神道、創価学会ー仏教、統一教会ーキリスト教)と警鐘を鳴らす向きもあります。

さて、今回の書評は異色の二人が都内を歩き、その地の変遷と事件にまつわる記憶を掘り起こします。昭和前期の東京が蘇ります。




森まゆみ/中島岳志「帝都の事件を歩く―藤村操から2・26まで」亜紀書房 2012年

江戸の色濃い東京は、明治天皇を戴き帝都に染め直されていく。本郷に始まり江戸川橋、東京駅、隅田川、田端、日本橋、永田町と巡る二人の探訪は、各々の関心分野と交差しつつ広がっていく。森は地域に息づき語り伝えられる “人といのち”の記憶を掘り出し、中島は街角や建物に残る事件の断片から、その背景に迫る。大正・昭和の文学と煩悶する青年の群像が、やがて軍部に収斂していく歴史の苦悶は、現代にも通底するのか。




【葉月雑感】


▼ 郷里釧路が先日33℃を超えたという。あの冷涼の地での30℃超えはさぞ辛かっただろう。電話から流れる友人の声は息も絶え絶え、「もう死にそうだ」。これが実感だと思う。暖房は完備なれどエアコンとは無縁、近い将来エアコンが必要になるのだろうか。こちらでも35℃を超えると息苦しく、汗みどろで動くのが辛くなる。一昔前までは30℃で暑かったのが、今では予報がそれくらいだとホッとする始末。この感覚は一体何なんだろうか。
この時期の釧路は港まつり。北大通り(国道38号線)を通行止めにしての大パレード、各漁協や港湾業者が大型トラックを本物そっくりの漁船に仕立て山車にして、それに綺麗どころを乗せてはやし立て、その後には企業団体役所各組織の踊り隊列がお揃いの浴衣姿で続く、岸壁の漁船も停泊中の貨物船も満艦飾。ヘリコプターを搭載した巡視船による体験航海は大人気。夜は花火が川面と港を照らし出し、そぞろ歩きの人込みでにぎわい、屋台は並び飲み屋は満席。港町ならではの華やかさ。今は昔の物語。


▼ 8月は平和と鎮魂の月。メディアは一斉に特集を組み、特別番組を流す。それは8月だけでよいのだろうか。戦争に至る歴史の検証、政治家軍人の責任、批判精神を失い戦争熱を煽ったメディアの責任、それに踊り時には熱狂した民衆。私達はそれらと向き合い、今を見つめるべきではなかろうか。


▼ ウクライナ戦争の先行きが見えない中で、台湾問題が過熱している。ペロシ下院議長なるアメリカの要人が、周囲の懸念を押し切って台湾訪問を強行し、それを問題視する北京政府は実戦紛いの大規模演習で応えている。どうもキナ臭い。日本にも矛先は向けられているのは自明であり、キシダ政権は賢い選択をすべきだと思う。ウクライナでの米ロ代理戦争のアジア版を演じるのだろうか。民衆の命と暮らしを机上に賭けての、危ういパワーゲームはやめてほしい。平和が失われるのは至極簡単、傷口が塞がるには数世代を要するはず。


▼ 早朝に散歩をしている。6時ではもう暑すぎるので、30分ほど早めているけれど、それでも汗だくになる。水田の稲は風にそよぎ、稲穂の先は稔り始めています。黄金色に輝くのはもう少し先かな。カエルの鳴き声はいろいろ、ゲーゲー、ガーガー、ゲロゲロ、数種類響く大合唱。足先を小さな小さな緑色がはねていく、ハッとして見つめる。虫と見間違うばかりの1センチほどのカエルだった。田圃に消えて行った。鳴き声の違いと言い、種類の豊富さを知る朝の出来事。




<今週の本棚>


倉本聰「破れ星、流れた」幻冬舎 2022年

八方破れのバンカラ風自伝。庶民の生活感と心理に通じ、考えさせられる脚本の書き手は、実は波乱に満ちた人生を送っていた。ニッポン放送に務める傍ら筆名で書く脚本が注目され、上司から会って来いと指示される。自分が自分に会う?その結末は?大雪山を仰ぐ雪深い富良野で何を思うのか。最後の無頼派作家と言えそう。面白い。


姜尚中「朝鮮半島と日本の未来」集英社新書 2020年

低音で穏やかな語り口に魅せられる政治学者であり、半島出自の著者は日本と南北朝鮮との関係をどう見ているのか。一方の主役米国の朝鮮政策が揺れ動き、一貫性が無くご都合主義であることに批判の目を向ける。北の自己存在をかけた、特異な体制下でのしたたかさの意味にも注目し、歴史的な否定しがたい責任がある日本の主体的な行動にも論及する。


播田安弘「日本史サイエンス〈弐〉 邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦の謎を解く」講談社ブルーバックス 2022年

前作に続いて手に取ってしまった。邪馬台国は何処か、何故秀吉は朝鮮に出兵したのか、日本海海戦で日本は完勝したのかを、例によって理系の視点から検証している。前作が衝撃的だっただけに、2作目は凡庸感があった。ただし、実証するための探索には感服する。




コロナ第7波の行く先は見えません。効果的な対策は示されず、専門家と称する輩の迷走ぶりも際立ちます。身近での感染もありますが、何とか生き延びましょう。いつの日か楽しくグラスを傾けましょう。どうぞお元気で!


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