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「200字の書評」(332) 2022.12.10



こんにちは。

随分寒くなりました、カレンダーは1枚を残すのみ。過ぎ去る時の逃げ足の速さには、ただただ嘆息です。散歩の道すがら、木々の葉は落ち、庭の花の彩は薄れつつあります。その中で目を惹かれるのは赤、桃色、白色の山茶花です。満天星の錆朱とは違う赤色。赤を表す言葉は紅色、茜色、朱、浅蘇芳、鴇色など様々です。和風の呼び方には趣があり、風情と言うかその景色が浮かびます。

さて、今回の書評は不可解な国アメリカに迫ってみます。




渡辺靖「アメリカとは何か」岩波新書 2022年

超大国アメリカは何処へ向かうのか。民主主義の総本山を自認しながら、国内の分断は拡大。人権外交を展開するものの、国内では露骨な人種差別が横行し、経済格差は目を覆うばかり。平和の担い手ぶっても建国以来戦争を継続し、各地に軍事介入し、国民は銃を手放さず大量殺人のニュースが駆け巡る。アメリカは完結した一つの帝国を自負する、古典的帝国と親和性があると著者は指摘する。アメリカ流の自由とは何かが問われる。




【師走雑感】


▼ 12月8日は太平洋戦争開戦の日です。真珠湾攻撃によって日米戦争が始まりました。結果はご存じの通り、沖縄は荒廃し本土も焦土と化しました。その反省の上に戦争放棄、主権在民の日本国憲法が制定され、平和国家に生まれ変わったはずでした。キシダ政権は防衛費を5年間で43兆円にする方針を示しました。敵基地攻撃を可能にするミサイルを導入する計画もあります。問題点を2つだけ考えます。
一つ目は敵国を攻撃する能力を持つことは、仮想敵国からすると日本に狙われたと感じます。中国や北朝鮮は膨大な数の核ミサイルを持っています。1発打つと数倍になって戻ってきます。原発などが狙われたらどうなるか、考えただけでぞっとします。
二つ目に、もしこれが実現すると、防衛費のレベルでは世界第3位の軍事大国になります。もはや防衛費ではなく、軍事費と称するべきです。専守防衛、自衛にための必要最小限の防衛力と言った国是はどうするのでしょう。明らかに憲法の精神を否定しています。これを賄う財源には増税が見込まれます。国民にこれ以上の負担を強いるには無理があります。子育て、教育研究、福祉、保育などの予算の不十分さはかねてより指摘されています。軍事費より生活基盤の確保が先ではありませんか。すでにGDPの2倍を超える借金を抱えているのです。将来の国民に負債を負わせるのでしょうか。キシダは国民に1兆円の増税をすると明言しました。


▼ 静岡県裾野市の保育園での事件、開いた口がふさがりません。幼い子供を預かる保育士がここまで低劣なのか、職業倫理は弁えているのか、大人としての自覚は無いのか。園の管理体制や職員同士の関係は如何に。疑問が限りなくわいてきます。
観点を変えると、保育士の待遇と職場環境の冷静な判断も求められそうです。低賃金、長時間労働、ストレスなどへの切り込みも必要です。子ども本位の保育を実現するためにも労働環境の改善は急務です。
いずれにしても、親は保育士と言う専門職への信頼を基礎に、我が子を預けます。その期待に応え得る理念と環境を整えることを、改めて求めたいものです。


▼ 一昨夜は十五夜でした。満月に火星が寄り添い、絵になる冬空でした。歳末には惑星がそろい踏みする瞬間があるとか。宇宙の御仕組みに感謝です。


▼ 寒気が増す中での電気、ガス、灯油などの値上がりが予想されます。懐を寒風が吹き抜けますね。もっともっと北のウクライナではロシアが意図的にインフラ攻撃を繰り返し、電気、暖房が切れているとか。子供の頃氷点下20℃の北国、通学は学生服の上にアノラック、足元は長靴でした。寒いというより痛い感じです。戦火の中での冬を乗り越えることの困難さがしのばれます。卑劣な攻撃は許せません。




<今週の本棚>


小川洋子「掌に眠る舞台」集英社 2022年

なんとも不穏な気持ちにさせる短編集。小川の術中にはまってしまう、一種のファンタジーです。思わぬことで現金を手にした中年女性は、帝国劇場の前で引き込まれるように「レ・ミゼラブル」の公演切符全回分を買い毎回通っている。そこで出会った同年代の女性、親し気に話しかけてくるその人は劇場に住んでいるという。その部屋に招かれ、食事を共にするが、千穐楽には姿はみえず。もしかすると劇場の精?その後の展開は?


本間龍「東京五輪の大罪―政府・電通・メディア」ちくま新書 2021年

アスリートたちの精進のすべてをかけた躍動に感動はある。その陰での利権と名誉、五輪貴族の強欲さ、政治的駆け引きが渦巻き醜悪この上ない。近代オリンピックが金まみれのスポーツイベントに成り下がっているのに、日本では有難がって別格の存在のような演出がなされている。いまや東京五輪が検察捜査の対象となっていることは周知のとおり。それもアベの退場によって可能になったともいわれる。博報堂出身の著者の目は鋭い。




★徘徊老人日誌★


11月某日 I石さんより赤いレターパックが届く。学生寮時代の一期上、今は本のやり取りをする読書仲間。お互いに興味を惹かれた本、読んだ本の感想を交換しレターパックが行き来している。今回届いた4冊中3冊は彼の問題意識を刺激したテーマで、私への問題提起の書。読み解かなくては。報告は次回の書評で。


12月某日 鶴ヶ島図書館時代の同僚が来訪。20冊ほど自分の本を持参し店開き、見計らいの如くどれでもお貸しします、とのこと。早速7冊ほど借用。自分で買った本や図書館の借用本など多数抱え込んでしまった。懲りないジィチャンだ。


12月某日 久しく利用していなかった東上線にて鶴瀬駅へ。太極拳教室の仲間(リーダーや先達ばかり、私は不肖の弟子)との昼食会。コロナに振り回され、3年ぶりの会合。以前なら季節ごとに夜の鶴瀬で盛り上がっていたのに。20数年来のお付き合いなので、3年と言う空白は無かったのように近況を語り話が弾む。活発だった当時の仲間たちはどうしているのか。病気をしたり、施設に入ったり、連れ合いをなくしたりと人生模様が交錯。


12月某日 ゴミ置き場の掃除当番終了、週2回の燃やせるゴミ(生ごみ)の日が難物。きちんとネットに入れておかないと、賢いカラスに引っ張りだされて散乱する。箒と塵取り、火バサミで片付ける。だらしない人はいつも同じかも。




二十四節気の大雪たいせつを過ぎました。北の各地では文字通り大雪おおゆきになって、交通の不都合も報じられています。雪下ろし、雪かきの苦労は体験したものでなければ分かりません。過疎地域で高齢者だけの家庭では、屋根の雪下ろしに難儀することでしょう。交通事情も心配です。車で出かける方は、早めにタイヤ交換をしておきましょう。

14日は赤穂浪士討ち入りの日。その前日両国橋の上での宝井其角と大高源吾のやり取り、「年の瀬や水の流れと人の身は」すると「あした待たるるその宝船」と返す。昔はこの時期、講談や映画は忠臣蔵が定番でした。私達はどんな年の瀬を待つのでしょう?
年末年始、どうぞご健康でありますよう願っています。


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