【短歌集】春の夜は永いから
こんばんは。作家の春乃夜永です。
(自己紹介)
22年5月に幻冬舎グループ主催の「あの日の秘密コンテスト」にて「飛燕日記」で大賞を受賞。翌年2月に電子書籍化される。
ゴールドライフオンラインにて連載中。
24年4月、かがみよかがみに衝撃のエッセイが掲載される。
今回の記事は、Xに火木土で投稿している短歌や俳句や都都逸、自由律俳句の総まとめになります。(スキをするとお礼の短歌が表示されます)
(春)
黒髪に残る跡をやわらげる我の指先祝福せよ花
両腕に桜花を抱いた花盗人束ねて結び「春」とする
春の雨煙草の煙を散らしては夢と現の境を溶かし
明日なんて見えなくていい今日だけは小さく輝く屑星でいたい
この街のどこかであなたが眠る夜星屑くず集めて暁を待つ
貝がらのように並んだ白い爪うすく透けたる血の色が恋
そりたてのうなじさりさりここちよく指の腹さす毛先愛しき
愛してるうそぶく頬に恋の色
幾千夜言葉と身体を重ねても愛しているかと聞く君に
葉煙草のにおいがしない君なんて桜の咲かない春のようだぜ
花の名を一つも知らずとも分かる花束おくれば君笑うこと
バターとかはちみつみたいな味がして君にとても似てると思った
「もう来るな」ぶっきらぼうに言う君のその顔見たさにまた会いにいく
愛≠誠実正解は飢えと欲の裏側にアリ
君たしなむ酒の味を知るために唇触れればあめ色の夜
爪切って香水ふってメイクしてあなたのための身体になって
ため息も約束破りも睦言も忘れたと言う君にぞっこん
カニの身をすするくちびる色赤しほぐれる繊維と広がる甘み
美しい恋愛映画にきみ誘いつまらなかったと罵られたい
明るくて人が死なない密室で退屈になり服脱ぐ探偵
手錠もいやおもちゃもいやだと言う君に甘くなあれとはちみつかける
「はい、あーん」手からアメを食べさせて少しずらして指を嚙ませる
編み上げのブーツを君に買い与え脱着のたびひざまずきたい
防犯のブザーは君の護身用やめろ僕見て鳴らすんじゃない
悪かったもうやらないよ金輪際弾けて飛んだボタン横目に
なんこうをのせた指に白い痕左利きだと知った夜には
耳ふさぐ指の硬さに肩すくむ鳴る水音に立つ鳥肌よ
くやしげにキスマークなんてつけるから錯覚しそう愛かななんて
笑うとき君は頬を染めるんだ知らなかった?なら教えよう
唇もうなじもえくぼも指先も見つめすぎてゲシュタルト崩壊
誰がために伸ばす髪か知らずとも口づけねだるくらいには恋
太陽も月も浮かばぬ午前五時願いごとなど三つ数えて
うつつより夢を愛する君だから私が何を言っても寝言
徒夢になればいいさと毒づいて眠る君に口づけた朝
君の手を握ることだけ考えてカンフー映画のチケットを取る
喧騒と酔いに紛らわせなければ「はじめて」と言えない人を愛して
「このままの勢いなんてどうですか」酔っても許可を求める君は
書面にて動かぬ言質をとるために君の言葉に「」をつける
犬と猫どちらがいっそうかわいいか聞かれて迷わず君と答える
ぬるい湯で溶け落ちるような恋でいい何も残さず何も奪わず
どうしよう抜けなくなったね百均の指輪でこのまま結婚しようか
本当の愛など俺には分からぬがお前の一部でありたいい。いいか。
セブンスター禁煙三日でやめたっけ愛など知らぬ君でいてくれ
ポケットにじかで卵焼をいれ白熊探しに森へ駆け出し
赤いボタン何度でも押せ五億年君には刹那我には永遠
AIは愛のことだろすごいよなもうすぐKIもできるんだろな
また会えるだからお前は先に行け百番線のホームで会おう
完璧でコンプリートな夜だからまあるい猫を抱いて眠ろう
テーブルの上にこぼしたため息が白銀となり一生(ひとよ)輝く
寒明けて花の便りを受け取らば目抜き通りの三越へ行かん
セーターとヒートテックを一息に脱ぎ散らすような一年にしよう
明日からは他人なれども「おめでとう」花束渡してハグをする
カーテンに隠れて頬のにおいかぐ「卒業までは友達でいよう」
十九まで待ったぞいいか第二ボタンよりもお前の身体が欲しい
ありがとう楽しかったよさようなら歌に乗せても涙が出るわ
セブンスター煙はこんなに白くって目に染みたかな俺も歳かな
モルヒネも酒も煙草も悪癖も砂浜に埋め卒業とする
真黒な涙をおそれず白い頬に垂らして泣けるあなたが好きだ
春嵐散らせよ散らせ思い出を惜しむ間もなく明日へ進め
春眠を集めて早し日曜日
春陽に芽吹いて伸びる植物の枕元で眠る人間
春を追い鳴くホトトギス羽ばたいて花を散らして季節巡らせ
幼子が握りしめた百円で文具セットが買われていく春
無防備に頬を濡らす君抱きはかなきものを知る春の夜
荷ほどきの手を止め君が持ってきた引っ越しワッフルひとつかじって
春風に散る花びらよきらめいて人の出会いを刹那彩れ
太陽の色した花よ天を向き土筆追いこし季節巡らせ
一年を何度重ねてめぐっても呼ばれていたいあなたに春と
(夏)
切符買い乗り換えもせず終点へ「海を見てから会社に行きます」
りんごあめぱりつとやぶる白い歯の丸さ甘さを八月と知る
わがままで自分勝手なふるまいを愛しく思う僕は八月
月明かりくゆる紫煙が溶けていく眠る燕は夢を見るのか
「きれいだ」と夜空を見上げた横顔を思い出してはまた恋をする
そそがれどあふれてこぼれてしまう惜しい月の沈まぬ海になりたい
うにまぐろえびたこはまちよーく聞け俺よりあの子を笑顔にするな
焼き鳥を串から口ではずすんだそんできれいに笑うんだよな
玄関で噛みつくようなキスをした僕たちこれでもプラトニックだ
喉元に汗が描いた曲線と空の青さとシーツの白さ
よーいどん、黄金糖の肌をした荒ぶる風に恋せよ八月
降りやまぬ長雨が石うがつ夜に誰がために泣く髪をほどいて
水道水チェイサーにして金魚飲む
水滴の浮かぶ秘密の箱庭は塩で溶けない男女の六月
できるだけ長く降れよと願うよな六月みたいな恋もあってさ
雪溶けて異国の空に飛び立てば夏
滑走路またたく光を夢と呼び展望デッキで夜を明かして
あの人の笑顔を思いつ土産買い搭乗口に駆けこめば夏
ぺちゃんこのボストンバッグひとつ持ち片道切符で空に飛び立つ
東京のネオンと酒を楽しみに佐賀空港でうどんをすする
木苺にさくりとたてる白い歯に甘さじゃすまない恋をする
透けるような夏空わたる夏燕
甘いとか冷たいだとか言ってるとああ溶けちゃうよアイスクリーム
鮮やかなハイビスカスのアロハシャツ今来たところと君はほほえむ
炎天下さらさらくずれる蟻地獄
珍しい君がサイダー飲むなんていつもは辛口ジンジャーエール
水色の開襟シャツの襟口にのぞく傷口今日は赤いね
「暑いね」とシャツで頬をぐいとぬぐうぶしき逆光これが八月
ひらひらと毒のような熱帯魚
甘酒で酔うほど弱くはないんだよ嘘でいいから夢を見させて
「似合うかな」つぶやく頬に紅の花
鼻梁から滴る汗は砂糖水
コンクリ塀ぬぬるる進むカタツムリ
水たまり踏んだ数だけ傘を手向けて
透明のフィルムをほどけば黄金のタイムマシンは夏に還って
「知ってるよ」カラッと言うねん「八回目、八月八日をまたすごしてる」
「あんみつ」と答えた君の横顔をただ記憶したハタチの合コン
渋滞はやだねと笑う横顔をカルピス飲みつつ眺めては帰省
風呂に浮く塩化ビニールの鳥捕まえ白鳥雪江と名づけて愛でる
金平糖噛まずに百粒いっぺんに飲みこむような痛みが恋か
透明な蜜が滴る宝石が口に運ばれ白玉になる
蟻のように並んだ文字に目を落とし微笑む君の八重歯は砂糖
ホテル街リア充どもが夢のあと
イケメンはなにをやっても許される
コウモリのような翼を広げては青空に浮く君は何者
打ちあがる閃光弾が号令だ見とれてないで走れよ前へ
息吸った弾みにカラスが鳴いたっけ死ねと鳴く蝉我は正常
シスターは紫煙くゆらせ微笑んだ「元天使だけど質問はある?」
ねむたいなあ青い錠剤飲み下す今日も会ったね昏倒先生
洗い髪ふわりと香るライムグリーン図鑑に載らぬ君はプランツ
折れそうな三角グラスに浮かぶ星ひっくり返して異変に気づく
重力に反する君と壁歩き冥王星で猫をひろった
水晶のように鋭い君の指思い出しては徒恋募らせ
幾千の星々の中きらめかぬ惑星二つ並べば地球
海底の砂地に背中が触れるとき見上げた月は白きあきらめ
近所の犬が庭に埋めた宝物を僕にだけ見せてくれる
たたまれて置かれたままのバスタオルそろいっぱなしの角よ乱れろ
永遠を誓えば明日には嘘になる「それでもいいさ」と微笑む君は
(学校)
ここ大事テストに出るから覚えろよ織田信長は両刀使い
ひみつきちはいりたければ黄金糖ひとつぶもってでなおしてきな
暮れていく夕日が僕らの背を越して最後のチャイムを鳴らす六時に
夏空に響く笛の音追い越して一等賞で君に会いたい
ゆらゆらと水面にゆれる白線につまさきのせてゆるしあっては
風鈴も揺れぬ秘密の箱庭で氷のように溶けあって夏
ガラスの牢屋に人魚を探し見つからないねと笑いあう
祈るように本のページをめくる指信心深い君は毒薬
カーテンに潜って無邪気に口を寄せ好きな子の名を教えてくれた
透明でもどらぬ時間といつまでも背中あわせの青春心中
ていねいに並ぶボタンをはずしてくいじらしいほどやさしい悪魔
背を丸めスケッチブックにかじりつくその横顔に恋はするまじ
ドアの外行きかう生徒たちの声空き教室はパンドラの箱
ネクタイを解く指の鋭角を求める式を教えて実技で
くるくると回るペン先目で追って「プロペラみたい」と笑う放課後
親とした約束一つとひきかえに君の居場所を心につくる
「火ィ貸して」「タバコ吸うって」「吸わないよ」使用用途は聞かずに貸し
た
赤点のテストと出席日数に経験人数足してもいいか
制服でパチンコ打ちに行かなけりゃ優等生と呼ばれた高校
撃たれてもナイフで腹を刺されても僕は君より生きるつもりだ
愛でもない恋でもないと思えども一人の時ほど浮かぶ横顔
屁理屈を語る君の横顔に夢中になんてならない少しも
爆死でも笑い死にでもかまわないあなたと遂げたいリア充心中
(秋)
雷鳴に砕けて散った秋の星夜よ巡れ巡れよ夜よ
世界でいちばんやさしい言葉もあなたが言うと残酷だ
ポットを見つめて微笑むだけの三分間のなかった人生
君が食むアイスクリーム白すぎて忘れていたよ君が悪魔と
さよならを言わなくていい関係にあこがれてみたい夜永し
秋霖(しゅうりん)を降らし降らされ凍えきり夕轟きに心憧れ
さよならはブルーブラックの色をして血液になり身体を巡る
男って馬鹿なもんだよ特に君
好きな本好きな食べ物好きな人ああ知ってるよ腹立つくらいに
問えば返事はあるのだろうがその瞬間に嘘になる
死んだように眠るあなたの横顔にやさしさ愛しさ未練後悔
旅先で使わないものナンバーワン「本」だけを持ち船に乗る
オレンジの光が瞼をあたためるこの優しさは日暮れか夜明けか
濡れた声熱い体に染まる頬あなたの身体はマタタビの花
いつまでもいっしょだよといったのに僕より先に君は旅立つ
終電を逃がして希望に火を点ける朝までもたぬ短き夢よ
さくらんぼバナナを添えたら下ネタだ
砂糖水食パンひたせば菓子パンに
さよならを言えなかっただけなのに腐った別れがついてくる夜
ほほ笑んで「はじめまして」と差し出した厚い手のひらぼくより大人
「そのタバコ」言いかけやめた声は泡今だけ少し妬いていいかな
愛でもない恋でもないと悩みおり、そうかこれは食欲なのか
触れる手もかわす視線も約束も本当になる満月の夜
蜜蝋で固めた翼が溶け落ちるどうせ死ぬなら月まで行こう
「放課後」が「定時後」になり早一年帰る場所も「家」から「部屋」に
肩に乗る栗色の毛は伸びかけの背丈とともに色もうつろい
夜明けまで熟読しても読み解けず君という書にしおりを挟む
終わりなき命を額に閉じこめて無声の詩と名づけて飾る
「好きかも」とチキンナゲットほおばった「僕も好きだよ」フライドポテト
終末のニュースに耳をかたむけてファストフードをゆっくり食べる
幸せの色をした鳥羽ばたきて残されたるは平和か破滅か
百年間私が耐えても得ぬ羽を君は手にして昨日生まれて
あれからも君に似た人探してた似れば似るほど悲しいもんだね
これきりだもううんざりだ金輪際、幸せなんかにはめられるのは
信じそう髪を解いてピアス取り本気の顔した君の言葉を
「痛いとき言ってねすぐにやめるから」痛くないからたちが悪い
「つぎはいつ?」ごめんね今日で最後なの
「愛してる」「もう戻れない」「君だけだ」嘘の数だけ人を愛して
さよならとまた会おうねとまぜあわせようやく言った「行けたら行くよ」
あと先を考えられない君のためシュークリームをまた用意する
パスタ巻くフォークが輝く午後二時の記憶だけ持ち生きていきたい
忘れたかチーズのピザをほおばって僕の胸ぐら掴んだことを
「もう飽きたこんなの甘くて食えんわ」と残したパフェと向かいの私
伊達メガネ皮手袋に黒い手帳にっこり笑って偽名を名乗る
ピーピーとバッテリー切れ訴えるスマホに怒鳴る「鳴くばかりか」と
「他人丼、二つください。同じもの」私はあなたと家族になりたい
鏡台の傍のしとねに横座り何の罪を償うつもりか
契約書読まずにサイン交わすほど甘い言葉につられては夜
週末の夜を金で割るときに「部屋代」と言う君の清さよ
衣食住足りて余暇にジム通い公務員の副業せどり
五秒前描いたハートに「萌え萌えきゅん」毒に変わって殺せよ君を
好奇心猫をも殺すと言いますが人間風情も殺せそうです
一度だけやりなおせるなら枝を持ち叩きに行きたい森永先生
(中秋の名月)
満月を映す瞳は宝石で明日は俺の飴玉になる(オオカミ)
宙に浮く球よひときわ輝いて我の毛並みを彩れ金に(猫)
母さんはすすきの丘で僕を産み今は月で餅をついてる(うさぎ)
(冬)
一万円稼ぐことのむずかしさ
愛想笑い青信号もお世辞もテイクアウトで戦え今日も
写真見た君があとで笑えるように少し派手なセーターを着る
会長が愛人さんとやってくる年の終わりの仕事納めに
凍りつく季節に身体を重ねれば芽吹きの時期に花咲く愛よ
ふはほほほはははひはへへほーはほふ(グラコロと戦い負けてコーラ飲む)
買いすぎたみかんをやるから家に来いこたつもあるしジャンプもあるぞ(増刊
号)
コーヒーに砂糖三つは甘すぎだカフェイン不足のお前が好きだ
五年後の冬に期限が切れるカレー明日死ぬかもしれぬと食す
アルフォード死体を載せてどこへ行く
眠るように死ぬんだねと言い間違え夜にしずむ君は灰色
自分宛て心当たりのない手紙封を破りて平静よそおう
あの人は里帰りなどするのかな実家の猫とたわむれるかな
年末も年始も関係なく燃える眠らぬ街の交番の灯よ
獅子のように身体を丸め眠りこむ君ゆりおこし明けたる年は
一年中正月みたいなやつだから今日から君を大吉と呼ぶ
君の吐く息の白さよそのままに綿菓子となれ永遠に
手の甲に頬をつけて呟いた「今度は最期まで愛してね」
終末の夜に怯えつ君を待ついっそどっちも来なければいい
終電で帰る社畜が轢かれぬようニューバランスのロゴは光りて
白線の外を時速百キロで通過する死で通勤をする
風雪で電車が遅れた悪かった俺に優しいお前が好きだ
吹きすさぶ北風色づき春風になってもそばにいてくれますか
三十分かけて不細工な雪だるま作り上げてくお前が好きだ
「お待たせ」とコートを脱げば「今来た」と微笑む君のあたたかい嘘
君のいぬ夜は布団にもぐりこみ歌など詠んで眠ろうか、あ、雪
えっ人を殺した後でも来てくれるサンタがいるの? ああ、なんだ夢
今日だけは髭を剃ってと言ったよねああほら早速子供が見てる
赤白の電飾そのまま持ち越して年の暮れには紅白と呼ぶ
東京で吐いたため息ポケットに隠して故郷で年を越しては
百八の鐘で払えぬ煩悩を君にぶつけつ年を越す
酔いも悪いも笑いも酔いもチャラになるのが年忘れ
凍る朝ふとんにもぶり隣人の身支度の音おぼろに聞きて
「おでんがいい」冷たい右手を引きながら今日はあなたの彼女を演ず
三十分かけて不細工な雪だるま作り上げていくお前が好きだ
溶けていくチョコをゆっくり噛みながら願い事など三つ数えて
板チョコを溶かして早し父のチョコ
「トリュフある?」「ないよ代わりにキッチンにトリスならある」「それハ
イボール」
ブランデー入りのチョコよ喉を過ぎ胃の中にいる貴方に届け
十五日渡しそびれたチョコレート一つかじれば甘くて苦くて
この町で最後の雪よ重なって我の門出を彩れ切に
「お待たせ」とコートを脱げば「今来た」と微笑む君の温かい嘘
両手で吊皮つかむあなたのカバンの角が腕に食いこむ
泣いてない笑ってんだよ馬鹿なお前を
濡れた目に殺気を忍ばせ微笑んだ骨の髄まで君を愛そう
向けられた蝶のような手のひらに浮かぶ殺意とにじむ劣情
コーヒーでいうなら無糖まだ君は飲めないだろうお子様だから
綿雪のように散りゆく花びらが養分となりまた春がくる
(猫)
飯あたえ頭をなでて甘やかす少しは我をおそれよ人間
キバだとかボスとか呼ばれた縄張りでまさかチビと呼ぶとは人間
我が庭に咲き誇る名も知らぬ花かつての獅子を仰げば季節
我が庭を彩る花の名も人のぬくもりさえも知らなかった野良
老猫になりて眺める我が庭に陽光を浴び浮かぶ若き日
邸宅の主になりて幾星霜、眺める庭に浮かぶ若き日
「いってきます」二回だけ撫で出て行った君の帰りを天国で待つ
(天国)
終点の三つ手前で降車して天国までは歩いて向かう
目を閉じて百年前に見たきりのあの世について語る君たち
君がいない天国なんて意味がない明るいだけのただの地獄だ
金色のまつ毛を伏せて天国について語る君はきれいだ
朝焼けに染まる海に君見つけ天国行きの切符を渡す
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
お気に入りの歌は見つかりましたか?
現在も直筆の短歌を投稿していますので、よろしくお願いします。
それでは、また。
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