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世の中に中指を立てながら、生活を愛する|日記(9/21-9/22)
9月21日(土)
休日でも7時までには目が覚めるようになった。入院生活で得た恩恵である。基礎体温を測ると急激に低くなっていた。おそらく今日、生理が来るだろう。寝ている夫をベッドに置いて、身支度をする。久々にコンタクトをつけて化粧をすると、それほど工程が多いわけではないのにこれを毎朝やっていたのかと驚く。起きてきた夫と一緒に朝ごはん。実家で貰ったバームクーヘンを食べる。このバームクーヘン屋さんはもう閉店が決まったらしく、少々切ない気持ちになる。
emiffyさんの動画を観て生産的な朝をイメージしてから、掃除に取り掛かる。9月に入ってから結構家を空けていたので、夫に掃除をしてもらっていた。今日からまた自分でやるから入念に掃除をする。途中、配達が2回来てiwakiのガラスタッパーとT-falの卵焼き器を受け取った。入院中に自炊欲が高まり、弁当のおかずを作り置きしたくなったから取り寄せたのだ。T-falはちょうどフライパンの大きさに収まるサイズ感だったので収納しやすく、取手なしにして正解。
昼頃、夫と一緒にドラッグストアとカルディで買い物をしてから、松屋に立ち寄る。ずっとお粥だったけど流石にもう白米を食べてもいいだろうということで、牛めしのランチセットを注文。二人合わせても1,500円代で安く済んだ。帰宅後は気になっていた『極悪女王』を観ながらご飯。父がプロレス好きなので、結構プロレスラーの名前がわかるのが嬉しい。唐田えりかや剛力彩芽など一時期ネットニュースを賑わせた人をキャスティングしているのもいいし、絶対地上波では放送できないような昭和を忠実に描いたシーンもある点にも世の中に媚びていない感じがして、すごく好印象だった。ちなみに久々の白米は、生卵をかけたらするすると食べられた。
午後は夫が歯医者の予定があったので、私は一人でドトールで過ごすことにした。抹茶ラテを飲みながら、ヨガやジムの調べ物。退院し、体調が落ち着いてきてからやりたいことがたくさん頭の中に浮かび上がり、それを予定として組み込みたくなった。休みの日も美味しいものを食べに行ったり勉強したりとアクティブに過ごす夫と共に暮らしていることも相まって、「何かしなくては」という思いがここ最近強い。
色々調べていくうちに気になったのはホットヨガとセミパーソナルジムだ。どちらも週一回で月12,000〜14,000円くらいするのでお高めである。でも変に安いところに行くより運動が苦手な自分にとっては手厚い所がいい気がした。ネイルサロンに行くことも検討していたのですでに予約も入れていたが、金銭的に運動と同時に始めるのは難しそうだ。健康を手に入れたいという気持ちが第一なので、サロンはキャンセルしてもいいかもしれない。そんなことを考えながらトイレに立つと、生理が始まっていた。
調べ物が一段落ついたので、図書館で借りた『東京都同情塔』を読む。
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家に居るとなかなか集中できず、ついスマホを見てしまうことが多かった。カフェに足を運んで本を開くと最初は流し読みしたり雑念が横切ったりしたものの、段々物語世界にのめり込むことができた。九段理江さんは現代人を書くのが恐ろしくうまい。常に情報過多で頭には校閲者がいて、言葉が入ってくること・制御することを同時に行なっている様は身に覚えがある。多様性や傷つけないことを重んじるばかり、差し障りのない言葉ばかり並べてどんどん自分の発言や思考が陳腐になっていくのは最も恐るべきことだ。九段さんは世の中にずっと中指立ててる感じがすごくいい。思わず一気読みしてしまった。
帰宅して洗濯物を畳んでいると、夫が帰宅。親知らずを近々抜くことになったそうなので、サポートしたい。動いていないと不安なので作り置きや夕飯の支度に取り掛かる。今週末から来週末にかけて、冷蔵庫整理メニューを考えた。入院した分、節約したい所存。料理を終えるとなんだか疲労がぐっと出てきた。「君は今日もよく頑張っているよ。」と夫が寄り添ってくれるも、アクティブなモードに入っているといまいちうまく返せない。彼のことが好きなのに。
夜ご飯の献立は納豆ご飯、焼き鮭、豆腐とわかめの味噌汁、チキンと水菜のサラダ。夫にはもっとボリュームをつけた。二人で静かに夜ご飯を食べていると、実家とえらく違うなと思う。あそこはずっと野球中継がついていて、誰かが話していて賑やかだ。ここは静かで、お味噌汁の出汁が鰹節になったことをしみじみと感じられる。
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食後しばらく休んでいると生理痛がし始めたので、ロキソニンを飲む。シャワーを浴びた後は一人で考えたい気分になり、寝室のデスクでノートを広げた。振り返ってみると、「何者かになりたい欲求」が以前より消えていることがわかった。それよりも簿記の資格を取ろうだとか、運動のために習い事をしようだとか、美術館や映画館へ行く予定を立てていることから「生活のコンテンツ」に興味がシフトしていることがわかる。それはとても健全なことのように思えたし、外から見える職業ばかり見ていた自分は考える順序が違ったのだと思う。
それでもまだ理想の自分とはかけ離れていて、入院生活を機にまたスマホをたくさん触ってしまうようになったことや、夫にイライラをぶつけてばかりなところは改善したい。
「こういう人になりたい!」というのはいつも作家であることが多く、九段理江さんや高瀬隼子さんみたいな人に憧れる。自分の言葉を持って文章を書き続け、世の中をちゃんと気持ち悪がれる人。自分の改善したいところは直せばいいし、なりたい像があるならそれを目指せばいいのに、そんな簡単なことが途方もなく難しく思える。それでも少しずつ内側で変化が起き始めていることを、嬉しく思う。
寝る前、彼と二人でハーブティーを分け合ってからくっついて眠った。いつもイライラしてごめんねと思う。彼の体温を感じていると、せかせかする気持ちが薄れて愛情で満たされていくのがわかった。
9月22日(日)
6:40くらいに目覚める。体内時計が整っている。起床後、生理で体が重だるいのでソファでゆっくりする。ついスマホを1時間半見てしまった。起きてきた彼と一緒に朝ごはんを食べ、台風みたいに荒れた空模様を眺める。少しだけ気温が涼しくなったことが救いだ。
生理中なのでゆったりとした服に着替えた後、彼と寄り添う。一昨日、断捨離をしているときにたまたま彼の研究室時代のアルバムを見つけてしまい、そこに友人から「彼女さんと仲良くね。結婚したら教えて。」というメッセージが添えられているのを発見してしまった。前付き合っていた人だと思うと切ない気持ちになり、なんとなくモヤモヤしてしまっていた。過ぎたことをどうしようもないと分かりながらも彼に伝えると、「それ書いたやつはデリカシーがない人だったから気にしなくていいよ。結婚とか言ってないし。」と答えてくれた。
それに昨日は1時間に1回くらい好きだよって伝えたでしょ、と言われて確かに誇張ではなく昨日は彼がすごい甘えてきたり何度も好きと言ってくれていたなと思い出した。過去ばかり気になっていた自分が情けない。
「今が人生で一番楽しいから、過去に戻りたいなんて思わない。」
そう彼がまっすぐな目をして言った時、ぐっと"今"に引き戻してもらえたような気がした。
気分が落ち着いた後、それぞれの部屋で作業。私はネイルサロンをキャンセルして、気になっていたOSAJIのネイルを買ってセルフでやってみることにした。お昼までの時間ではPCでnoteを開き、久しぶりに日記を書く。なりたい自分像について書こうとも思ったけど、日記の中に組み込みたい気分だった。黙々と書いて、気づいたら正午近くになっていた。文章を好きなように書くことが、この世で一番集中できる。その次は料理を作ること。
お昼頃ファミマまで歩き、彼は千里眼のまぜそばを、私は大盛りの塩焼きそばを購入した。帰る途中で貧血が酷くなったので、やっぱり家でご飯にして良かった。人生で初めて大盛りを買ったが、生理の力も相まって完食。向かいの席に座った夫が驚いていた。食後は急に眠気が襲ってきた。
私に感化されて断捨離を始めた夫を見守り、終わった頃にまた近所のリサイクルショップへ出かけることにした。査定は私が1,110円分、夫が160円分の買取り。ミニマリストすぎて、親から貰ったものも必要なければ売ってしまう薄情な人間ではあるものの、家がすっきりした。
帰宅後は家事を済ませてからお香を焚いて、ベッドで松井玲奈の『私だけの水槽』を読む。
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一般的なアイドルのイメージとしての彼女ではなく、人付き合いが苦手で不器用で、それでも内面世界が深い人の思考がそこにあった。共感する部分も多く、かなり読みやすかった。大人になるにつれて「なにもしない」をするのが難しくなってきたのは彼女も同じだと知って、なんだか安心することができた。夕方には読了。
久々にファッションプレスを開いてイベント情報を見ると、気になる展示や映画が飛び込んできた。見逃してしまわないように、しっかりとメモをする。しかし、今は週末のどちらか1日は外出したいと思っているものの、いまいち未来の自分の気分や体調を信頼しきれていない私もいる。きっとアクティブとインドアの間で、しばらくウロウロするのだろう。
夜ご飯には、先日作ったラタトゥユと冷蔵庫あったサラダチキンを組み合わせてドリアに。水菜サラダも添えた。かなり美味しくできたし、お腹にちょうどいい量で満足。
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食後はソファに座って二人で読書。意識的に本を読み始めたらまた読書の波に乗れて嬉しい。「テレビ観ていいよ」と夫に伝えるも、本を読みたい気分とのこと。私たちは趣味のバランスがよく似ている。