今週の読書録
季の花は散っても
深沢潮さんの『李の花は散っても』は、韓国王室に嫁ぐことになった皇族女性のお話です。
主人公の方子女王と梨本宮家と縁のある女性・マサ、二人の女性の戦前から戦後を描いた長編は、350ページを超えるボリュームながら飽きのこない展開。
林真理子さんの『李王家の縁談』読了者ならば二倍楽しめるかもしれません。
近年はニュースが多い、高貴な方々の結婚問題。
最近でこそ一般人との結婚も増えてきたものの、当時は対象となる母集団が現代よりもごくごく狭い。
果たして良縁とは何なのか?
国のために習慣も言語も異なる相手と結婚し、歩み寄りながらも苦悩に満ちた関係。
歴史好きの方にもおすすめの作品です。
神楽坂スパイス・ボックス
明日のランチはバインミー!
読むと翌日の食事が楽しみになる一冊です。
長月天音さんの「神楽坂スパイス・ボックス」シリーズは今春2巻目が刊行になったタイミングでまとめて読了。
長月さんの作品は、身内を亡くした主人公が定番ですが、今作では故人との思い出がスパイスのように散りばめられています。
訳あり姉妹が開店させた神楽坂の路地の奥の奥にある木造家屋のスパイス料理専門店「スパイス・ボックス」。
人脈と料理、姉妹の得意分野を活かした店舗は、開店間もなく売上自体はなかなか好調。
路地裏にたたずむ異国の香りが漂ってくる古民家。
来店する人たちの大小様々な悩みが、料理を通じてほぐれていく。
世界各国のスパイスをきかせた料理はいずれも魅力的。
あまりにも作中のチャイが美味しそうなので、ついついチャイを数種類注文してしまいました。
あなたはここにいなくとも
町田そのこさんの短編集は、終活を意識する方にもおすすめの作品です。
人間関係リセット症候群の看護師、引っ越しを控えた幼馴染との関係に悩む女子高生など、主人公の周囲の人物の死に直面もしくは死を前にしたときの思い出整理がいずれの作品でも登場します。
第三者が高齢者の人生をたどりながら、自身の生き方を考える側面も描かれており、時代に合った作品のように感じました。
汝、星のごとく
凪良ゆうさんの本屋大賞受賞作『汝、星のごとく』は、読了後の余韻がしばらく続く作品でした。
2022年、数多くの賞にノミネートや受賞した注目作品。
登場する人物たちの恋愛観は多様。
主人公二人のたどる路も平坦ではありません。
それでも人生最後の恋ならばこんな結末も悪くない…
映像化が想像できる作品でした。
忘らるる物語
高殿円さんのファンタジー作品は学生以来です。
最近はお仕事小説を中心に拝読していましたが、独特の世界観は一気読みしてしまいます。
ジェンダー問題がニュースでも多く耳にする昨今、ご時世柄考えるものがありました。
かすがい食堂 夢のゆくさき
伽古屋圭市さんの「かすがい食堂」シリーズも3冊目。
今作では、料理系の人気ユーチューバー、ヤングケアラーなどの最近話題のテーマも取り上げられています。
今回も主人公と祖母、前作から引き続き登場するレギュラーメンバーを中心に日常でもありそうな事件が起こります。
前作までのようにすっきり解決ではないエピソードもありますが、その分リアリティが増した気がします。