今週の読書録
今週の4冊は、世間の価値観との差や生きづらさを感じる瞬間に手に取りたくなる作品。
星を編む
凪良ゆうさんの『星を編む』は、発売を心待ちにしていた一冊。
今年本屋大賞を受賞した『汝、星のごとく』の続編ということであるが、時系列としては「春に翔ぶ」→「汝、星のごとく」→「星を編む」、「波を渡る」の順。
前作の主人公の一人である櫂は、回想の中で登場するのみ。
人の思いが次の世代に受け継がれていく様子、生きた証。
選ばなかった選択肢を振り返る瞬間は誰しも経験するもの。
大切な人を失った際にも続く人生。
スピンオフ作品としても単独でも読み応えのある作品。
誾
赤神諒さんの『誾』は、立花誾千代が主人公。
悪妻ともいわれる女城主・誾千代。
しかし、長生きした立花宗茂視点で語られる後年の振り返りでは、誾千代の美しさや気高さを思い出されることが多い。
一体、誾千代とはどのような人物だったのか?
関ヶ原の敗将のうち、唯一旧領を回復した立花宗茂。
東の本多、西の立花と並び評されるほどの武芸に優れ、後年は、徳川家光の御伽衆として側近に取り立てられた稀有な存在。
再婚することなく、子も残さず、若くして亡くなった誾千代以外の妻をもたなかったといわれている。
戸次(立花)道雪の後年に生まれた一人娘にして、武芸に秀でた美女と伝わる誾千代。
不仲であったというのは真実か?
豊後の戦国大名・大友一族をテーマにした作品を複数手がける赤神諒さんが描く誾千代と宗茂の関係が興味深い。
普通になれないことに悩み、親の期待通りにできぬことに苦しむ。
いつの世にも変わらぬ一人の人間としての姿、愛の形。
不仲説を新たな解釈で描いた『誾』は、歴史小説好き以外にも楽しめる作品。
歌われなかった海賊へ
『同志少女を敵を打て』で本屋大賞を受賞した逢坂冬馬さんの『歌われなかった海賊へ』。
今回の舞台は大戦下のドイツ。
型にはまった正しさが求められる時代、同性愛は犯罪で治療が必要な病気。
一見するとエリート、犯罪者の子、生きにくさを感じる少年少女の選択の行方は。
人との出会いで人生が変わる。
選べなかった時代に、心の赴くままに生きた人たちの物語です。
あの光
ごみ屋敷、汚部屋。
ハウスクリーニングサービスで働く主人公は日々、片づけらえれない部屋をきれいにすることに向き合っていた。
やりがいを感じていた仕事だったはずが、経営者が変わり、経営方針も変わったことで、徐々に精彩を欠いていく。
「起業すればよいのに」
ある程度仕事ができる人であれば、一度は言われたことがあるかもしれないセリフ。
自分でも「このままでよいのかな…」というときには、考えてしまう瞬間がある。
香月夕花さんの『あの光』で描かれるのは、そんな主人公。
途中まで順調であったはずが、小さなひずみが生じた瞬間崩れていく。
地位も名誉も人もあっけなく失った先に何が残るのか?