摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~元摂食障害当事者からのメッセージ~272
今までの習慣や今までの自分を変えること、新しい一歩を踏み出すことは、不安だし、怖くもあるし、躊躇ってしまう。
だけど、そこに向き合うことを避けるための『痩せたい』だとしたら、いつまでたっても『痩せたい』からは逃れられない。私は、本当は『痩せたい』のではなくて『痩せたい』に守られて、安心したいだけなのかもしれない……
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アイスがすっかり溶けてしまったパフェは、いつの間にか『芸術品』ではなくなってしまったけれど、いくつか残っている綺麗にカットされたフルーツを見ていると、少しずつ息苦しさが和らいでいくような感覚があった。
スマホで時間を確認する。私は、パフェ一つ完食することも出来ずに2時間も一人で過ごしていたことになる。今から残ったフルーツを食べる気には、とてもじゃないけどなれそうにないので、会計を済ませてホテルを出ることにした。
「あんなにきれいにカットされたフルーツを残すなんて、何だか申し訳なかったな。あれを作るのに、どれだけの時間がかかるのだろう」
そんなことをぼんやりと考えながらも、私にとっての『痩せること』とは一体何なのか、ということが頭の中をぐるぐると駆け巡っていた。
私は、今はもう、本当は何が何でも『痩せたい』訳ではなくて
私は、本当は『痩せたい』のではなくて『痩せたい』に守られて、安心したいだけなのかもしれない……
長い間、
『痩せている』ことで自分を保ってきた。
『痩せている』ことが自分の全てだった。
『痩せている』ことで自分を守ってきた。
『痩せている』ことが自分を支えていた。
『痩せている』ことで何もかもが許せた。
『痩せている』ことが心の拠り所だった。
だけどそれは『痩せたい』とはちょっと違うのかもしれない。
『痩せている』ことと『痩せたい』気持ちは、同じではないのかもしれない。
今の私は、以前のような『とにかく痩せたい』と全く同じ気持ちではなくて、痩せていれば『安心』だったり、痩せていればこの先考えなくてはならない『難しい何か』に向き合わなくて済んだり、痩せることだけを考えていればいいと思っていたり、何かそんな感覚があるような気がした。
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