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摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~元摂食障害当事者からのメッセージ~340


「全然そんなことないって。ただ私は、幸せを感じられるのも生きづらさを感じてしまうのも、自分の『考え方次第』ってところはある気がするんだよね」

『考え方次第』……確かに、陽子の言う通りなのかもしれない。だけど、その『考え方』にがんじがらめに縛られて、身動きがとれなくて、どうにもならなくて、行き詰ってしまっているのだけれど。

勇気を出して連絡を取って、何年かぶりに陽子に会ったことが、確実に私の中の何かへ『化学反応』をもたらしていた。

陽子の気さくで、さっぱりとした人柄や、押し付けがましいところがなく、飾らない言葉の数々が、忘れられなかった。家に帰ってからも、陽子の笑顔や、言われた言葉の一つ一つを頭の中で何度も思い出していた。

「そっか。ってことは、お店で誰かと一緒ならパフェが食べられるんだね!良かったじゃん、全然『普通に』食べられるんだから」
「そうだよ。家でのことは家でのこと。出来ないことはとりあえず置いといて、出来ることをすればいいんじゃない?」

摂食障害である私のことを特別扱いするでもなく、かといって否定するでもなく、昔と変わらず『友達』として接してくれたことがすごく嬉しかった。それから、陽子の陽子らしい考え方も新鮮だった。

「紗希、私もね、自分の出来ないところとか、気にならない訳じゃないし、むしろ気になって仕方がないの。でもね、気にしたって出来ないものは出来ないし……そんな時は、こう考えることにしてるの。『どんだけ自分が出来る人間だと思ってるの!どんだけ自分に期待してるの!そんなに期待したって、私はどこにでもいる「普通の」「普通にもなれない」人間なんだから仕方がないよ。出来た時に「出来たじゃん!」って褒めてあげよう』って。そう思って、悔しい思いをやり過ごすことにしてるの」

『自分に期待してる』なんて、考えてもみなかった。だけど、無意識のうちに自分に期待していたり、出来るはずだと思っていたりするからこそ、出来なくて落ち込んだり、イライラしたりする、と言うことも出来る。摂食障害になってしまったのだから、普通の人が普通に出来ることが出来なくて、むしろ当然、と考えればいいのかもしれない。


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