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風何(ふうか)
2023年2月28日 19:09
敷かれた砂粒みたいだ好き、という言葉でさえ、口に出すごとにざらついて透明な涙が、静かにあなたの頬を伝うとき、流れている歌は当然のようにわたしの声じゃなかったあなたがわたしを好きと言ってもヘッドフォンが創り出す宇宙に、わたしなんていないことわたしの声はあなたに響かないことずっと前から知ってたよ誰も救わない愛を求めながら、生きるしかないのだあなたを感動させることなんてきっとできなくて、
2023年2月26日 20:03
流れているだけの冷たい空気にさえ、清潔さを見いださなければいけなくて、そんな風に、世界を感じるしかなかった、これからもずっと、この世界のすべてに綺麗と言って、どれだけ、自分を嫌いにならなければいけないんだろう、と、そういう嘆くみたいな藍色の心象だけが綺麗で、わたしはただそれによりかかるしかない、優しそうな顔で、自分を好きになれ、と言ってくるあなたが、わたしを好きになる必要がないこと、本当は、わたし
2023年2月22日 20:40
軽薄に、ずっとわらっていたかったんだ、きみのことも、その他のひとたちのことも、みんなみんな。なのに、鏡に映る自分の顔を想像しては、勝手に苦しくなるような、そんな小さな心象だった、自分で浮かべる表情に自身で嫌悪してしまうような、そんな下らない心象だった、けれど、それでも、何でもないようなありきたりな風景でさえ、それを世紀末と願っていいのなら、僕は、夕暮れをただ眺めているだけの鉄塔になるよ。夕焼けが
2023年2月21日 18:54
温い涙、凍てつく風が吹いて、なかったことになった、1月冷えた右手を伸ばして、ずっと、あなたの残像をなぞっているのだ、ひとり、水色の空を眺めながら。白い空気に交じって、飛ばされてゆく涙は、もうあなたのものじゃないよ、冬の風だけがあなたの涙を連れ去ってくれる、とそんな風に言ってしまえば、もうあなたを二度と泣かせないで済むんじゃないかと思った、二度とあなたを悲しませなくて済むんじゃないかと思って、だ
2023年2月17日 17:32
死ねは、群青色星空みたいに綺麗な殺意で、きみを殺したいのだ、さながら流星みたいに。名前も知らない星たち、誰にも定義づけられなかった言葉たち、見えないふりをされた殺意たち。ぜんぶがぜんぶ意味のあるものであってほしいなんて詭弁で、みんな本当は願ってすらいないのだ、そんなこと。白骨化しても、綺麗な白色だから許されるのかもしれないな、とわたしだけが気休めに笑っていた。みんな、わたしが笑っている理由すら
2023年2月16日 17:40
感性は、日だまりのなかにある淡い緑色をしている、と知らないうちに誰かが決めたのだと思う、見ず知らずの草原を、原風景と見紛って、運命とこじつけて、懐かしむように思い浮かべながら、綺麗な情景ばかりを思い返し、そうしてきみは、人に優しくする。優しさが豊かさだと勘違いして、思いやりが光の色をしていると勘違いして、だから、「他人に攻撃的になるのは、現状のあなたが満たされていないからですよ」ときみが言った瞬間
2023年2月15日 19:00
ベランダの冷たさが足を伝う、肌色の裸足で、流れる血液がこわばっていくのが分かって、たぶん、これが生きてるってことだ。頬を赤く染める体温が暗い宙に吸い込まれていって、じりじり凍りついていく身体、手足、そう、きっと、これが生きてるってことだ。と、そんな風に自分で実感しようとしているのだ、わたしは。周りを取り巻いているなにもかも、周囲を形成しているすべての温度、それらを借りて、わたしは、わたしは。存在証
2023年2月14日 22:51
きみが、きみが、と口癖のように言い始めたあのときから、きっとぼくは気がついていたのだ、心臓から徐々に溶解してゆくように、ほかならぬ自分が腐り始めていること、自分でも知らないうちに、きみに、自分のすべてを託そうとしていたこと、けれどそれは純粋な身勝手から来るもの、実際のぼくはただ、透き通る眼球だけを愛おしく思っている、星も太陽も月も、この地球上にあるすべての繊細なふりをした光線も、きみも、たぶん本当
2023年2月10日 22:56
誰もいない海で岸辺の石段を、ただ裸足で歩いていたそうしていれば、痛いと感じるすべてのこと、その理由を誰にも説明しなくていいような気がしたから真っ当に、ただ擦ったような傷口を見せつければ、みんな、痛いと言うことを赦してくれるような気がしたからそして、その痛みさえも、なにかの拍子に、いつの間にか水平線のなかに吸い込まれてしまうような気がしたから いつだったか、砂浜で、日の差した海を背に、
2023年2月2日 19:52
まるで物語みたいだ、なんて、物語が必要ない人たちが言っているそれは、ふたりの空間を埋めるためそれは、空間の無機的な冷たさを、温度で溢れた甘言で埋めるためわたしは、ずっと胸に分厚い本を抱えていたページみたいには破れない彼らは、目の前に広がる風景を、繊細な指でやさしくなぞっていて、なぞらえていて、それは、あたかも、思い出すみたいだ、日向を。ああ。どこかで見聞きした物語が、今この瞬間、