【詩】月
ベランダの冷たさが足を伝う、肌色の裸足で、流れる血液がこわばっていくのが分かって、たぶん、これが生きてるってことだ。頬を赤く染める体温が暗い宙に吸い込まれていって、じりじり凍りついていく身体、手足、そう、きっと、これが生きてるってことだ。と、そんな風に自分で実感しようとしているのだ、わたしは。周りを取り巻いているなにもかも、周囲を形成しているすべての温度、それらを借りて、わたしは、わたしは。存在証明、わたしだけでは、わたしを証明できないからこそ、どこでもないどこかを無意味に見つめてしまう。無条件に、自分は、確かにここにいるのだと、そう言えなくなったのは、いったいいつからなんだろう。思い出せないけれど、そんな風にはっきりと言えたときも、もしかしたらあったのかもしれないな、と思い返してみて、でも、きっと夜が明けて、朝になれば、自然と消えてゆくから。月光に吸い込まれてゆくように姿かたちもない、それは、さながら月に向かっていくようなのに、本当はどこにも行き場がない、幽霊のわたしにどうか、かぐや姫と名づけてください、せめて、せめて。