見出し画像

私は私を生きることにした。②

ある日の朝、夫の「行ってきます」の言葉に、「いってらっしゃい」と返事することができなかった。

仕事が忙しくなり、睡眠時間を削って夜遅くまでパソコンに向かう日も多くなっていた。
生理の前でもあり、いつもよりイライラしやすくなっているのだと思っていた。

今までもそういうふうに、生理の前は感情がぐらぐらしてしまうことはあった。

だが、その日は、あきらかにおかしかった。

1歳の娘が泣いてる。

「泣かないでよ…」

「私を責めないで。」

「泣き止んでーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

頭を抱えて、キッチンにしゃがみこんだ。

誰と何の会話もできない。

以前から月経前の不調で受診しようと思ってしらべておいた内科・婦人科の医院に、一人で行くことにした。

なんとか電車をのりついでたどり着いた。

名前を呼ばれて診察室に入ると、医師の前で泣き崩れた。

医師の診断は「月経前不快気分障害」と「うつ状態」

月経前不快気分障害はわかっていた。でも、うつ状態とは思ってもみなかった。

自分を責めた。

「子どもの送迎とか、もっと周りに協力してもらえばよかった。」

「もっと効率よく仕事すればこんなふうにはならなかった。」

「たった2か月で仕事を辞めることになって、周りに迷惑をかけた。」

そして、今までのように生活ができなくなった。

日中、子どもは幼稚園か保育園。夫の両親にもあずかってもらったりして、時間はたっぷりあるのに、趣味を楽しもうとは思えない。

何もする気が起きない。

ただ、ベッドに横たわって、天井を眺めているだけ。

「私は生きている意味ある?」

そんな感情が湧いて、他のことに思考が回らない。

真っ暗なトンネルに入ったみたいだった。

「うつ病」ではなく「うつ状態」、いったい何が違うの?

「うつ病」の治療に使われる「抗うつ剤」を処方されて、服用しているけど。

「うつ病」より軽いから「うつ状態」?

「うつ病」ではないから早く治るの?

体は元気なのに、心がこんなにコントロールできなくなったのは初めてだった。

うつ病にしろうつ状態にしろ、誰にでもなり得ることは聞いてはいたけど。

そこに自分は含まれているとは思わなかった。

原因は、仕事復帰によって、生活環境が大きく変わったことと、育児ストレス、仕事への責任感だと、思っていた。

でも、それはただ発病のきっかけではあるけど、原因ではなかった。

私がうつになった原因、またあとからわかるが、月経前不快気分障害の原因も同じだった。



35年間、私は私を、生きていなかった。



それが、すべての原因だった。

 
そのことに気付いたのは、しばらく経ってからだった。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?