エッセイ:リサイクル布回収屋のおっちゃん
ある日の朝のこと。
その日は、月に一度のリサイクル品の回収日。
たまってた不要な服を出したかったのだけど、寝坊してしまい、起きてすぐに家の窓からごみ収集場を覗いた。
すると、ちょうどボロ布の回収業者さんが来ていて、業者のおっちゃん達が回収作業をしている最中だった。
あわてて飛び起き、10kg近くはあるかと思われるでっかいビニール袋をかかえ、寝ぼけ眼のまま5階から駆け降りた。
間に合うか、どうか。
ごみ収集場に行くと、ちょうど作業を終えたおっちゃん達がぶらぶらとトラックの周りを歩いているところだった。
「これ… 布なんですけど...」
と重いかたまりをそろそろと差し出した。
すると、作業員のおっちゃんが
「ボロ?」
といいながら受け取ってくれ、次の瞬間、
「おもしになってちょうどいいや」
と言いながら、ぶるんと大きく振り回した反動で、高く積み上がった荷台の段ボールの上に、かたまりを放り投げた。
さすがに、力持ちだ。
ありがとうございます! と言うと、
「はーい」
と言って、その後もすぐにはトラックに乗り込まずに、作業仲間と話をしながら、おっちゃんはトラックの周りを歩いていた。
作業以外の部分の、余白を感じながら仕事しているような感覚を、その男性から感じた。
回収作業中の作業員に慌ててごみを手渡すことはしばしばあるのだが、「はい。」とだけ言ってゴミを受け取り、淡々と作業をする方がほとんど。それが普通だと思うし、別に悪いことでもない。
でも今日出会ったその男性は、違った。
なんかカッコいいおっちゃんだな。と思いながら私は5階に上がっていき、おっちゃん達のいるごみ収集場を、なんとなく窓からもう一度覗いてみた。
なんか気になるおっちゃんだった。
その時はもうトラックに乗り込んでいて、運転席に座ったさっきのおっちゃんが、見下ろす形で見えた。
運転席に座ったおっちゃんは、カッコいいサングラスをかけていた。タバコに火をつけ、軽く微笑みながら、すぐに運転を始めずに、作業の余韻を嗜んでいるようだった。
なんだろう。やたらとカッコよく見えた。
細めのサングラスもうるさくなく、似合っていてちょうどいい。自分の仕事を程よく楽しみながら、軽快に日々を運んでいるように見えた。
「おもしになってちょうどいいや」
ギリギリで回収品を持ってきたこちらに、バツの悪さを感じさせないその一言。
優しさと、頼もしさと、軽やかさを感じた。
あんなふうに人に優しく、仕事を楽しめる人にならないとな、と思った。
今日もリモートワークでパソコンに1日中向かう仕事がはじまる。
パソコンの向こうの同僚達を、大切に感じたいと思った。