#5.心と身体のつながる仕組み その③
3.身体は、私という存在を「分かち合う」ための器官
前回の、#4.心と身体のつながる仕組み その②の記事から来られた方々は、引き続きこの記事をご覧くださり、ありがとうございます。
初めてご覧になる方は、もしよろしければ、前回記事もご参考くださると幸いです。
この記事を読んでくださる皆さまに、本日も多くの学びとご成長と、幸があらんことを!
さて、それでは今回は、よりボトムアップ的な視点から、「感覚調統合」について、皆さんと一緒に学んでいければ、と思います。
人間の「無意識」もとい、人が自身のおかれている生活環境で、最適な「感覚統合」を達成するためには、
大まかに分けると、下記3つの要素が、いずれも過不足なく、バランスよく機能するのが、大切であると言われています。
要は「私」と「それ以外」を分けるためのもの、です。
Ⅰ.身体機能(Bodliy function)…内臓・骨格・筋肉・関節包・etc...
Ⅱ.中枢神経(CNS)…大脳・小脳・脳幹(中脳・橋・脊髄・延髄)・etc...
Ⅲ.末梢神経(PN)…体性神経(運動神経)・自立神経(体内プロセス調整器官)・etc...
あ、ちょっと待ってください、、、どうか読むのを止めないでください!(汗)
違います。決して小むずかしい、解剖の授業をしたいという訳ではないんです。
ここでは、上記に挙げた、私たち身体の器官たちを、誰でも簡単で分かりやすいように、よりカジュアルに、ドラマチックな視点で解説していこうと思います。
だから解剖学の話はまた、そのずーっと後で。(結局やるんかい)
まずは皆さまに、ご自身の身体の役割りについて、興味を持ってもらう所から、始めてみたいと思います。
1.身体機能(Bodliy function)の主な役割って何?
身体は一言でいうと、私という存在を「分かち合う」ための器官です。
補足するなら、
私たちの「内部で生産したものを、外部と分かち合う」ための器官です。
そして更に補足するなら、
私たちの中に湧きおこる「意志」や「反射」といった「内部活動」を、外の世界へ「言語・非言語コミュニケーション」などを通して「熱放散(表現)」し、
他者、または周囲の環境と「繋がること」で、「自分という存在」の影響を外へ広げ、浸透させていくための器官です。
静かな湖に、石をポーンと放つと、キレイな水の波紋ができて、周囲の流れが変わりますよね。
そんなイメージでOKです。
石が「身体」で、波紋が「内部活動」のイメージ。
さて、
ここからは詳細に解説して行きましょう。
2.コミュニケーションから考える、私たちの身体の仕組み
近代では立派な和製英語でもある、コミュニケーション「Communication」は、ラテン語のコミュニズム「communis」が語源からきているそうです。
そして、そのコミュニズムを日本語に訳すると、「共有する」「分かち合う」という意味になります。
突然ですが、「分かち合う」って、何だかとってもエモくないですか?
つまり、コミュニケーションとは、単なる「情報(言語)通信」手段ではなく、
相手からの、何らかのノンバーバル(非言語的)な「リアクション=Feedback」を得て、はじめて成立する、
外界との秒速交換日記、または魂のキャッチボールなのです。
それでもって、人はなぜ、外の世界と「私を分かち合う」必要があるのか。
そこは、ざっくりと言うと、
「身体の構造上、そのような仕組みになっているから」ということで、大体の説明が付くかと思っています。
(オイ、また適当なことを)
どんな仕組みかというと、
それは皆さまご存知の、日常生活そのものです。
「外の世界にあるもの(水、空気、食べ物)を摂り入れて、出(排泄)して、熱放散する(成長・活動エネルギーを生み出す)」体循環サイクルのことです。
そうです、
私たちは日々、「外の世界の一部」を取り入れながら、自己の体組成組織を作り替え、成長し、子孫を繫栄させ、生命を巡らせているのです。
これは「コミュニケーション」においても、似たような仕組みで成り立っている、といえます。
つまり、
①外からの刺激(対人交流や物事の事象)を⇒
②身体の各種感覚器官(肌、目や耳)が、キャッチして⇒
③リアクションする(反射や思考意志による随意・不随意運動、学習や情動による自律神経反応など)ことによって⇒
④相手からのリアクション(新たな外からの刺激)を得られ⇒
⑤そのフィードバックによって、人はまた新たなリアクション①〜④を積み重ね、
自分という存在を「認識・成長させていく」ことができるのです。
例えば、暑さと喉の渇きを感じる時に、冷蔵庫にある冷たい麦茶を飲むと、
『あ、自分って、暑い時に冷たいお茶を飲むと心地いいんだな』
と、感じることができます。
これも立派な「自己認識」のひとつですよね。
そして、人は心地よさを常に求める生き物ですから、次回また同じシチュエーションになる時があれば、無意識にまた冷蔵庫の扉を開くこともあるでしょう。
これは「自動化された思考⇒条件反射」で、そのなかでも、
「学習することによって獲得した自動思考」は、「オペラント条件反射」と呼ばれています。
3.三つの条件反射と『感覚統合理論』のコンセプト
ちなみに、条件反射(厳密には、反射・反応・行動等の、とてもややこしい細分定義があるみたいなのですが、ここでは一旦端折ります)には、現在下記の3種類が発見されていて、
大きくは①意志の力でコントロールできるもの、②できないもの、③その中間といった分け方で大別されています。
①オペラント条件反射…意志の力でコントロールできる反射。
例:箸を使って食事をする、靴を履いたり、着替えたり、運転をしたり、、と、私たちが誕生してから獲得したほとんどの日常動作は、このオペラント条件反射によって、その人にとって最適なパターンで自動化されています。
経験や学習によって獲得した一連の動作が、意志のスイッチひとつで、全て無意識にできるようになっている事象がオペラント条件反射です。
②レスポンデント条件反射…意志の力でコントロールできない反射。
例:レモンや酸っぱいものを見る⇒唾液が出る、高いところでの作業⇒落ちるイメージが頭をよぎり、ドキドキする、といった、主に、自律神経の大部分が支配している、内臓からの反応がこれに当たります。
そして、このフィードバック機構、実は結構複雑で、時間軸の概念を越えているんです。
え?どういうこと?、、と言うと、
過去・現在・未来のオペラント条件行動の行動結果(未来へは予測される結果)によっても、このレスポンデントは大きな影響を受けるのです。
例えば、子どもの頃、犬に噛まれて大けがを負ったことがあった。そして、現在、大人になった今でも子犬を見ただけでも血の気が引いて、心臓がバクバクする…といったようなことがあったり、(過去の出来事が絡むレスポンデント)
毎日残業続きで、お仕事が大変だけど、明日はお休みを貰えたから、いつもより業務ストレスが少なくて、頭も冴えて、身体が軽やかに動く。(過去からの経験による、未来を予期することで生じるレスポンデント)
といった感じです。
あれ?、、ちょっとまってよ。
一見すると、これも学習経験による、オペラント条件付けとセットの反射ではないのか?と思われる方もいるかもしれませんが、
これは、オペラント条件反射の、行動の結果による、身体からの「生理的フィードバック」と考えてもらうと、より、分かりやすいかもしれません。
一応、意志の力でコントロールはできないけど、「意志の力と深い関りを持つ」反射なのです。
イメージしにくいかもしれませんが、「私(意志)は、私のよく知らない、もう一人の私(身体)と、常に非言語的なコミュニケーションを交わしている」のだと、思ってください。
(決して、中二病を推奨している訳ではありません。)
前回お話しした、「無意識」とは何か?で、いう所の「潜在意識」のレイヤーの、割と浅~中層部にあるのが、このレスポンデント条件反射といって良いでしょう。
で、ここでのレスポンデント条件反射に、限りなく無意識の階層も含めて、生来の感受性のアンバランスさによる、生きづらさを抱えている方々を、
Well-being(ウェルビーイング)「そのひとらしく、健やかに」していこうと構築されたのが、今回の大テーマである、『感覚統合理論』なのです。
感覚統合は、ABA、SST、コーチング、自己啓発 (これらはまたいつかご紹介しますね) といった類の、前段階に位置するものをアプローチしていく作業療法です。
例えるなら、ソフトウェアを開発するのではなく、サーバーシステムの構築・メンテナンスをしていくための『解説書』と言っていいのかもしれません。
③レスぺラント条件反射…意志の力と無意識の力、両方の影響を受ける反射。
こちらは「心身医学」「身体心理学」という分野を研究されている、大学や医療現場で活躍されている先生方のサイトを情報収集する中で、見つけた、比較的新しい言葉になります。
例を挙げると、呼吸や、発声、視線や顔の表情、姿勢、歩行などの筋活動、パーソナルスペース(快・不快感情)、がそれに当たるそうです。
確かに、呼吸は意識しなくても無意識でも行われる運動ですし、顔の表情も泣いたり笑ったりの感情が自然に表出されることもあれば、意図して笑顔や怒り顔を作ることもありますね。
自然体だと猫背でいつもしょんぼりな気分で過ごすことが多いのに、社会的な場ではピンと背筋を伸ばして、笑顔で明るい人格で振る舞ったり
(あ、いえ。私がそうですとは言ってませんよ?)
レスぺラント反応は、無意識の自分に働きかけて、意志の力でコントロールできる反射です。
「マインドフルネス」って、言葉をお聞きになったことはありませんか?
「いま、ここ」「あるがまま」に意識を集中させ、「無心」となる。それが幸福である状態を目指す、Well-being(ウェルビーイング)へ至るための、メソッド的な位置づけにある、認知行動療法のひとつと言われています。
古くからは「禅」「ヨガ」「氣功」「太極拳」などといった、呼吸や姿勢や身体の動かし方を整えることで、
「自然との調和」や「心と身体の結合」、または「涅槃・悟り」の境地に至るための修行・訓練です。
これらは、このレスぺラント条件反射をコントロールするために、先人たちが築いて来た「人類叡智の結晶」人が絶対的な幸福を得るための、「究極奥義」とも言えるのかもしれませんね。。
4.まとめ・コミュニケーションにおける理想形は、ゆっくりと溶けて無くなってゆく「半固体」
色々と小難しいことを考えずに、シンプルに普通のコミュニケーションにおいても、
私たちは日々相手の反応いかんで、自分自身の人となりを判断する瞬間があるでしょう。
例えば、満員電車で小さなお子さんや、ご年配の方に席を譲ると、
「すみません。ありがとう、あなたは優しい人ね。」
という言葉が返ってきた。
すると『あ、自分って、優しいと言われることもあるんだな』
と、自己発見することができますよね。
そうやって、
私たちは小さな自己認識を積み重ねて、自身のアイデンティティを獲得していくのです。
ハイ、少し長くなってしまいましたが、、
今回の解説で、私たちは、肉体的にも精神的にも全くの「個体=独りであろうとする試み」では、存在できないような仕組みになっている生き物である、ということが分かりましたね。
それは現に、私たちの身体自身が物語っていて、
私たちは常時、汗も良くかき排泄もしますから、物理的にも揮発性が高い上に、新陳代謝も必要なので、外から色々な栄養を取り入れなければならない。
細胞同士の流動性も非常に激しい生き物なのですね。
ですので、割と中二病でも大袈裟でも何でもなく、、
私の目の前にいる誰か(何か)は、私の延長線上にある、「もう一人の私(あるいはその一部)」です。
とは言え、じゃあ「最初からみんなと全部一緒」が良いかというと、
これはこれでお互いに「侵襲性」が高すぎて、自我を保てなくなる危機が生じますよね。
例えば、相手の痛みや辛い経験が自分事の様に分かるとかがあると、結構しんどいと思います。
「私としての意思=何らかの形」をもって、
ある程度の「高さ=位置エネルギー」から、
「時間=重力加速度」を付けて湖を打たなければ、
そこから「波紋=新たな生命の活動エネルギー」は生まれない。
でも、自我を保つために「波紋」まで、石のような「硬い性質」をもつ必要は無い、という訳です。
また実は私たち自身も、わざわざ石の様に硬くて重い物質でなくても、いいんです。
「石」は結局、すぐに水中に沈みますからね。長く水面に留まることはできません。
そして同じ液体(水滴)だと、波紋は生じますが、周囲の水と混ざり合って、あっという間に溶けて消えて行ってしまいます。
どちらも極端に振れると、エネルギーの生産効率が下がるのです。
そして相手もまた、その身にその人自身の「波紋」を、常に生じていますから、私たちはどんな人でも双方向に影響し合いながら、生きることを定められているのですね。
だから、身体とは「私という存在を分かち合う」ための器官なのです。
皆さまはどんな「私」を、他者や外の世界と、そして何より自分自身と「分かち合い」たいでしょうか?
もちろん、できればいつでも「心地よい」「これで良いんだ」と感じられる、自己充足感いっぱいに満たされた中で、「分かち合い」を喜んでいきたいですよね。私もそのひとりです。
もしよろしければ、皆さまもこれから私と、その素敵なサイクルを一緒に作って行ければと思います^ ^。
私自身もまだまだ道半ばで、日々模索しております。
次回は、Ⅱ.中枢神経(CNS)の主な役割って何?というお話から進めていこうと思います。
こちらも、まずはカジュアルに分かりやすく解説して行こうと思います。(後から解剖学もやりますよ〜)
今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。