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僕の好きな詩について 現代詩 日本編

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僕の好きな詩について、言いたいことを言うnoteです。日本人の近現代詩に絞ってます。画像はネットから。問題があったらすぐ消しますので教えてください。
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2018年9月の記事一覧

僕の好きな詩について 第二十六回 宗左近

僕の好きな詩についてお話しするnote、第二十六回目は、宗 左近 氏です。

谷川俊太郎さんが若い頃好きだったと仰っていたので読んでみたら、なるほどなるほど、となりました。

では詩をどうぞ。
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「ひかり」宗左近

おぼえていておくれ坊や
あなたのお父さんが見つめている
ご近所のおばさんがそのおばさんのお子さんが
そして知らないおねえさんがかけよって
そしてみんな吸いこま

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僕の好きな詩について 第二十五回 大手拓次

僕の好きな詩について 第二十五回 大手拓次

僕の好きな詩について語るnote、第二十五回は大手拓次です。

ハードな雰囲気の詩がかっこよい詩人なのですが、あまり知られていないように思います。

ではまず詩をどうぞ。

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「黄金の闇」大手拓次

南がふいて

鳩の胸が光りにふるへ、

わたしの頭は醸された酒のやうに黴の花をはねのける。

赤い護謨のやうにおびえる唇が

力なげに、けれど親しげに内輪な歩みぶりをほのめか

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僕の好きな詩について 第二十四回 金子光晴

僕の好きな詩について 第二十四回 金子光晴

僕の好きな詩についておはなしするnote、第二十四回は金子光晴氏です。以前紹介した山之口貘さんと親交が深く、貘さんの葬儀では喪主をつとめたほど。

それでは、まずは今回の詩をどうぞ。

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「若葉よ来年は海にゆこう」金子光晴

絵本をひらくと、海がひらける。若葉にはまだ、海がわからない。

若葉よ。来年になったら海へゆこう。海はおもちゃでいっぱいだ。

うつくしくてこわ

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僕の好きな詩について 第二十三回 高階杞一

僕の好きな詩について語るノート第二十三回は、高階杞一(たかしなきいち)氏です。

恐らく、詩を書いたり読んだりしないかたにはあまり知られてないんじゃないかと思うのですが、素晴らしい詩がいっぱいある詩人さんです。

では今回の詩をどうぞ。

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「サイの川原」高階杞一

賽の河原
というと
サイのいる河原だと思ってた
なんてことはないけれど
ほんとうに
その川の川べりにサイ

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僕の好きな詩について 第二十二回 さくらももこ

僕の好きな詩について語るノート、第二十二回はさくらももこさんです。さくらももこさんは文章も個性的でエッセイを数冊出版されていますが、詩集も一冊出されています。

ところで、今年はビッグネームが次々と亡くなり切ないですね。昭和最後の年もそうでした。時代と才能は関係あるのかも知れません。

ともあれ、まずは詩をどうぞ。今回は特別に3つ掲載します。
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「変化」 さくらもも

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僕の好きな詩について 第二十一回 三好達治

僕の好きな詩について語るノート、第二十一回目は「三好達治」です。三好達治と言えば「雪」、と言うくらい太郎と次郎の屋根に雪が降りつんでますが、今回は別の詩です。

では。
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「憩ひ」三好達治

ふつくらとした雪の面の 疎林の影の美しさ

ここに私は彳(た)ちどまる 聖なる正午

この丘のほとりにあつて 歩み去る時を感ずる

旅人の 年老いて疲れた心の 沈默(し

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僕の好きな詩について 第二十回 宮尾節子さん

僕の好きな詩について 第二十回 宮尾節子さん

おはようございます。僕の好きな詩について書くノート、第二十回は宮尾節子さんです。

これから紹介する詩を昨日、上野(ウエノポエトリカンジャム6)で生でご本人の朗読を聞いてきました。その熱い厚い朗読で涙が滲んできました。

まずは詩をどうぞ。

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「女に聞け」宮尾節子

わたしが
恥ずかしい、格好をしなければ
こんなにも
恥ずかしい格好をして、一人で踏ん張

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僕の好きな詩について 第十九回 吉増剛造

僕の好きな詩についてお話しするノート、第十九回は、「詩の巨人」吉増剛造氏です。

正直僕には理解できないものも多いのですが、でも「なんか凄い」とはいつも思わされます。

ひたすら長い詩が多い印象ですが、今回は短めの詩を。

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「燃える」吉増剛造

黄金の太刀が太陽を直視する
ああ
恒星面を通過する梨の花!

風吹く
アジアの一地帯
魂は車輪となって、雲の上を走ってい

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僕の好きな詩について 第十八回 田口ランディ

こんにちは。今日は涼しく過ごしやすいです。皆様急な気温の変化でお風邪など召されませんよう。

第十八回は小説家、田口ランディさんの散文詩です。彼女の小説は遥か昔に「コンセント」と「アンテナ」を読んだ程度ですが、こんなことをこんな風に書けるんだ!と感動した記憶があります。

それでは詩をどうぞ。
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「虫の息」田口ランディ

家に一匹の秋の虫が住み着いたらしかった。

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僕の好きな詩について 第十七回 平田俊子

僕の好きな詩を紹介したりするノート、第十七回は平田俊子さんです。
不思議な詩や怖い詩を書く方ですが、これから紹介する詩はその感じはありません。

ではどうぞ。
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「宝物」平田俊子

世界で一番美しい言葉はコンセルトヘボウです

四年前のアムステルダム
午後のトラムにゆられていると
大きな建て物が前方に見えた
あれは何? と尋ねると
コンセルトヘボウとあなたは答えた

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僕の好きな詩について 第十六回 金子みすゞ

僕の好きな詩を紹介しながらお話しするnote、第十六回目は金子みすゞです。

すっごく悩んだんですけど(なんなら違う詩人と詩で途中まで書いたのですが)、金子みすゞです。まずは詩をどうぞ。

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「不思議」金子みすゞ

私は不思議でたまらない、黒い雲からふる雨が、銀に光っていることが。

私は不思議でたまらない、青い桑の葉食べている、蚕(カイコ)が白くなることが。

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僕の好きな詩について 第十五回 寺山修司

僕の好きな詩について語らせていただくnote、第十五回は寺山修司です。この詩ひとつで三度堪能できる素晴らしい一篇です。

ではどうぞ。
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「幸福が遠すぎたら」寺山修司

さよならだけが 人生ならば
また来る春は 何だろう
はるかなはるかな 地の果てに
咲いている 野の百合 何だろう

さよならだけが 人生ならば
めぐり会う日は 何だろう
やさしいやさしい 夕焼と
ふた

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僕の好きな詩について 第十四回 吉岡実

僕の好きな詩について 第十四回 吉岡実

僕の好きな詩について云々するnote、第十四回は吉岡実氏です。
シュールレアリズムです。モダニズムです。

では。
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「僧侶」吉岡 実



四人の僧侶
庭園をそぞろ歩き
ときに黒い布を巻きあげる
棒の形
憎しみもなしに
若い女を叩く
こうもりが叫ぶまで
一人は食事をつくる
一人は罪人を探しにゆく
一人は自潰
一人は女に殺される



四人の僧侶
めいめいの務めに

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僕の好きな詩について 第十三回 石垣りん

こんにちは。瞬く間に9月ですね。近頃 認識が時の流れの早さについていきません。

さてはて、好きな詩について言いたいことを言うnote、第十三回は石垣りんさんです。

いざ。
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「表札」石垣りん    

自分の住むところには
自分で表札を出すにかぎる。
 
自分の寝泊りする場所に
他人がかけてくれる表札は
いつもろくなことはない。
 
病院へ入院したら
病室の名札には石垣りん

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