音楽史1『音楽と言語の起源』
1. 音楽とは
音楽とは簡単に言うと聴覚、音による芸術で、言語による芸術である文学、視覚による芸術である美術、そして、総合的な芸術である舞台や映像作品などと組み合わされて発展してきた凡ゆる地域の人間に広く見られる文化であり、新石器時代に文字による記録が始まるより遥か以前から存在していたと思われている。
近代楽器学の父と呼ばれ楽器の分類を確立した事で知られるクルト・ザックスは音楽の研究の結果、音楽の始まりについて、抑揚をつけて何かを唱えた事など言語起源と絶叫や笑いなど感情表現起源が混ざり合って音楽に発展したのではないかと言う説を唱えており、少なくとも音楽の起源は複雑な言語や感情など人間の特性に由来する可能性が高いようである。
2. 音楽の誕生について
また、世界最古の楽器はギターやヴァイオリンなど弦楽器や笛やトランペットなどの管楽器に比べて、鍋や切り株を叩いたり、石ころを振ったりするだけでも楽器になる手軽な打楽器であったと思われる。
つまり、まずリズムの概念が生まれた後にメロディーやハーモニーを奏でる楽器の概念が生まれたと推察され、現在、ハーモニーを奏でる楽器の最古の証拠はドイツ南部で発見された約3万6千年前の骨で作られた笛で、弦楽器よりも早く管楽器が生まれたのでは無いだろうか。
打楽器や管楽器は古代の人々が熊などの猛獣や鷹などの猛禽類、蜂や蚊などの害虫を追い払い、自身の身を守るため、そして地震や旱魃、氾濫、噴火などの自然災害などを防ぐため、神に祈ったりする宗教的な儀式や祭りのために考案されたと思われる。
現在でも祭りや祈りなどではお囃子や合唱が行われ、卒業式など特別な儀式の際にも合唱が行われている。
3. 人間と動物の音楽
音楽は凡ゆる地域の人間に見られる文化である、と最初に言ったが、生まれたばかりで言葉も喋れない赤ちゃんでも、歌の鳴るオモチャや、歌を歌う子供番組など、音楽に対して大きな関心を示す事から人間と言う生物種自体が音楽に関する何らかの遺伝的要素を持っており、だからこそ音楽は言語を理解したり発したりする能力などと同じ様な人間という種に普遍的なものになっていると言える。
その一方で、人間以外の動物達には音楽という概念はほぼ無く、人間以外のゴリラ、日本猿、チンパンジーなど別系統のサルには一切見られず、人間の祖先のサルの種類が昔から持っていた特徴ではないようである。
また、シジュウカラなど一部の鳥類の種群や、鯨やイルカなどの鯨類など一部の生物群には歌や言語の概念が見られるため、音楽が人間以外に全くないととは断言できない。
4. 音楽誕生の諸説
しかし、先述の通り人間の祖先に近いサル類は音楽や言語を持たず、クジラ・イルカの祖先に近いカバや、鳥類と共通の祖先を持つトカゲなどにもないため、人間、クジラ類、一部の鳥類はそれぞれ独自に音楽・言語を獲得したのであろう。
ただ、人間の音楽や言語の能力はクジラ類や鳥類よりもずば抜けて高く、その理由は多くの人物が考えており、生物は時代が進むにつれて環境に適した感じに変化するという理論を唱えたダーウィンは求愛の時の鳴き声がうまい奴がモテて多くの子孫を残すという事を繰り返した結果、鳴き声が発展していき最終的に音楽となったという説を唱えている。
その一方で、人々が国家と契約する事で社会は成り立つという社会契約を提唱し現代世界の多くの国の政治の基礎を作った哲学者ルソー、社会は段階的に変えるやり方を唱え、社会の動向を分析する社会学の祖でもあり、進化の仕組みを説明する自然淘汰を唱えた生物学者スペンサー、歴史学や自然学から独自の哲学を展開した学者で感情と独創性を重視した文学の運動を主導した思想家ヘルダーなどは言語が持っている音から派生した歌が誕生したと説明している。
他にも労働の際の声を起源とする説などがあるがどれもなんの証拠もなく、一般人による議論自体無駄であると言っても良いのではないだろうか。
5. 言語の起源
ただ、近年では、人類が複雑な言語を獲得していくにつれて副産物として自然に音楽が生まれたという説が最もありそうな説であるとされており、これであれば人間が生まれた時から音楽に対する関心を持ち、覚えて歌ったり出来ることの理由が説明できる。
ではその言語能力はどう生まれたのかというと、これも多くの学者が支持している鳴き声などから段階的に言語を獲得してきた「連続性説」、大巨匠言語学者チョムスキーが支持する一度の突然変異で生まれた「不連続性説」、社会の変化の中で獲得せざるを得なかった説などがある。
ただ、無理やりに抽象的に纏めてしまえば頭が良くなったから言語が生まれ音楽も生まれたと言えるだろう。
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