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【将棋】竜王戦第1局の感想と現代将棋の面白いところ

【公式完全解説】初手から終局まで<竜王戦 七番勝負 第一局/豊島将之竜王 対 藤井聡太三冠>│ABEMA将棋
チャンネル :ABEMA 将棋チャンネル【公式】

【竜王戦第1局1日目】衝撃の▲6六金

竜王戦第1局は両者の対戦で度々指されている相がかりだった。1日目、藤井三冠は7四歩をかすめ取って歩得を主張したのに対して、豊島竜王は手得を主張した。2筋に飛車を先回りして歩を謝らせ、悪形の歩越し飛車として帰る場所を失わせることに成功する。その結果、実利の差はほぼないものの豊島竜王が体勢有利の展開となった。

驚いたのは1日目の終わりで、藤井三冠が7六歩(横歩)を取らせないために▲7七金と上がり、さらに▲6六金と前線に繰り出したことだ。おそらく五段目に宙ぶらりんになった飛車の救援と豊島竜王の飛車を威張らせないように牽制する2つの意味があったのだろう。本来、金は守りの要であって、自陣からなるべく出ずに玉のそばにいる方が良いとされている。が、相がかりは玉をほぼ囲わない力戦なので、そういった既存の常識はあてにならないことが多い。藤井三冠が指しているのだから尚更だ。

相がかりは中飛車と似ている。金銀を左右に分散させて自陣を守りつつ飛角桂歩で攻める、守備力・攻撃力共に心もとない陣形だ。相がかりなら同じ堅さなので五分五分の勝負なのだが、中飛車は居飛車・相振り飛車関係なく相手の方が堅さが上の場合が多いので、かなり勝ちづらいイメージがある。

唐突ではあるのだが、自分は相がかりの将棋に対して音楽界のイントロを短めにしたり無くしたりする(方が売れる)トレンドに似たようなものを感じている。

2001年頃は対抗形や矢倉など序盤30手程は相手陣を見ず、ひたすら玉を囲い合ってから、本格的に戦いを始めるというのが定番だったように思う。しかし、徐々にAIを使った序盤の研究がなされ始めると、あらゆる定跡が爆速で更新されていった。そして2021年現在、わずか10手を過ぎた序盤早々から互いに利己を主張し合う将棋が多く見られるようになった。

淡々と駒組みをするだけのつまらない序盤は、AIを活用する一部のプロ棋士が対局を有利に運ぶチャンスを続々と掘り起こしたことによって一変した。極端に言えば、長年正しいとされていた定跡が、今日には間違いになっていたり、またその逆も起こり得るということだ。定跡が更新されるサイクルも20年前とは比べ物にならないほど速くなっているはずだ。

このように、対局開始早々に研究のぶつかり合いが起こるため、現代の観衆は退屈せずにプロの将棋を楽しめるようになったとも言える。特に、相がかりは序盤(イントロ)をすっ飛ばしていきなり中盤戦からスタートするような激しい戦形なので、このトレンドにはぴったり合っている。図ってはいないだろうが、現代将棋はそういう意味で面白くなっている。もちろん、その一翼を担っている藤井三冠や豊島竜王の将棋は見ていて飽きない。

【竜王戦第1局2日目】龍馬無力化からの電光石火の寄せ

さて、そろそろ自分の偏見から話を戻そう。2日目も王手飛車を炸裂させるなどして豊島竜王ペースが続いていた。しかし、ずっとリードを保ち続けてノーミスで逃げ切るという戦い方は神経をすり減らすし、体力も激しく消耗する。豊島竜王が藤井三冠より1時間も多く考慮時間を費やしていたのはそのためではないだろうか。

そして持ち時間が残り50分を切った頃、勝負に出たのか、それとも焦りが出てしまったのか、豊島竜王は時間をほとんど使わずに飛車角交換に打って出た。ここが本局のターニングポイントとなって、今まで保っていたリードは一瞬にして吹っ飛んでしまった(そうAIが評価していた)。

飛車を渡さなければ攻略の手がかりさえ掴めなかったであろう難攻不落の豊島陣は▲7一飛と下段に打ち込まれたことによって途端に緊張が走る。その後、攻めの二枚看板であった龍は底歩によって藤井陣の隅っこに閉じ込められ、また藤井玉を睨んでいた馬もあの▲6六金の働きによって豊島陣の奥深くに缶詰めにされてしまった。

気づけば藤井三冠のすべての駒が勝利に向かって全軍躍動している状態となっており、まるでマジックを見ているかのようであった。自玉の脅威を取っ払った藤井三冠は、悠々と▲4五歩~▲3五歩打という2歩の揺さぶりを効かして豊島陣を痺れさせ、あっという間に豊島玉を捕まえてしまった。なんという終盤の組立てだろうか。飛車角交換をしたあの時から、数十手でこんな結末を迎えようとは予想だにしなかった。

龍馬の無力化から寄せに至るまでのこの電光石火の指し回しは、痛快を通り越して恐怖すら感じる。わずかな隙を見せれば惨劇が待っている、そんな今までに見たこともない恐ろしい深淵を藤井将棋は竜王戦第1局で見せてくれたのだった。第2局以降も、このブラックホールのごとき深淵を怖いもの見たさで覗き込ませてもらうことにしよう……。豊島竜王がどう立ち向かうのか、是非とも逆襲に期待したいところだ。

( 'ω' ).。oO( 竜王戦第1局は名局やよ、マジで

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