むっちむちでもサ
生まれてからずっと自分の身体が大嫌いだった。
中途半端な身長のせいで既製服はツンツルテン。
「背が高いから運動出来そう〜」と言われて、
何度ガッカリされたことか。
逆に、150くらい小柄で華奢だったら。
もっとラブリーな服も、着こなせるんだろうな。
「届かないよ〜」なんて甘えられたら、どれだけ楽しいのでしょうか。
身長だけじゃない。このムチついた身体も。
「痩せたらもっと可愛いくなるのにね」
幼い頃からずっとかけられてきた呪いの言葉。
今でも帰省すると、祖母はグチグチ、チクチクと
私の心と身体を蝕んでくる。
他人の身体について言及するのは、ナンセンス。
けれど、家族だったら、許されてしまう風潮、
もう、いい加減にしてほしいよね。ほんと。
そんな時、すっごくスレンダーで可愛い同期が
私に言ってくれた。
「本当は、はがちゃんみたいなグラマラスな身体に憧れてたんだよね」
そうか。
私が「もっと痩せたら…」と言われるのと同様に
彼女は「もっと肉付きが良ければ…」なんて、
何度も言われてきたのかもしれない。
「今まで、ずっと鍛えないでくれてありがとう」
自分の身体が嫌いだと言う私に対して、出会った
ばかりの恋人がニッコリ微笑んでくれた。
「俺は、そのフワフワな所が大好きなんだから」
そうか。
私が、痩せている男の子がたまらなく好きなのと
同じくらい、彼はこの身体が本気で愛おしいと、
思っているのかもしれない。
これは、巷で話題の“ボディポジティブ”とか、
“セルフラブ”みたいな気持ち悪い事象ではない。
私は、相変わらずこの身体を許せないままだし、
きっとこれからも、大好きにはなれないだろう。
けれど、あの子が、君が、心から羨むから。
その一瞬だけは、優しく抱きしめてあげたいな。
「ふわふわで、むちむちで、可愛いね」って。