好!優!餃!子!
「美味しそうに包むね。上手だねぇ」
溢れんばかりの肉汁を、ギュッと閉じ込めて。
私のどんな感情も、コンプレックスも、弱点も、
全部まあるく優しく包んでくれるから。
君とだったら、どんな壁も楽しく乗り越えられる
そんな予感が、確信に変わった。
母は仕事でいつも遅く、父の綺麗好きと、私の
大食わず嫌いが重なり、同じ釜の飯を囲んだ
記憶があまりない。
3人家族のカレーは3種類あって、テーブルには、
各々のパソコンとiPad。
好きな時間に、好きな食べ物を食べる日々。
自由で現代的で、すごく好きな生活だったけど、
ほんの少しだけ、ふと、たまに、みんなで作って
一緒においしいねって笑い合ってみたかった。
でも、これは誰のせいでもないから。
そっと心の奥に蓋をした。
「ねぇ、一緒に餃子作らない?」
夜遅く、恋人が、ふと提案してくれた。
好きな人と餃子を作るのが夢だったらしい。
本当は、私もずっと憧れてたの。
シンナリへたった寂しい餃子、肉溢れ破れ餃子、
アレンジし過ぎたどら焼き餃子、モモ風餃子。
早々に遊び始め、オリジナル餃子を作る私の横で
テキパキと均等に美しい餃子を並べていく君。
大きく切ったニラとキャベツのシャキシャキと、
ジュワッと溢れる挽肉に、心許ない薄々の皮。
ずっと蓋をしていた、あの頃の不揃いな気持ち。
誰にも明かしてこなかった私の小さな具材達を、
君は、誰よりも美しく丁寧に包んでくれたから。
不揃いな方がおいしいねって、かわいいねって。
いっぱい、いっぱい褒めてくれたから。
ねぇ、これからも、ずっと、包んでくれる?
約束だよ。