〈心の傷を癒す答え〉を捜す旅路
次は何をやれるのか?
私は、もともとは、大学院で野生動物を専門に研究していましたが、児童虐待の後遺症で、複雑性PTSDという深い〈心的外傷〉に長い年月、苦しんできました。
3年前に、拙著「わたし、虐待サバイバー(ブックマン社 2019)」で、虐待の後遺症(複雑性PTSD等)について、自身の体験からできる限り、他の虐待サバイバーにも汎用性がある形で、症例報告としての手記を商業出版しました。
あれから3年が経ち、この問題について、私は、次は何をやれるのか?をずっと考えてきました。
1つ大きな問題として、私自身が精神医学の中での「トラウマ治療」への疑問を抱くようになっていました。「トラウマ治療」という言葉がひとり歩きしてしまっているように見えて、幻想を追いかけているように見えて、人の心の傷が癒されるとは、本当に治療者による治療だけなのだろうか?と。
「人の心は、人の中でしか癒されない」という専門家の意見に私はちょっと違うのでは?と思うようになっていたのです。
例えば、私は自然や生き物に日々、癒されて生きています。絵を描くことで癒される人もいるでしょう。つまり、心の癒しとは、「個別性」がとても大きく、医療でのトラウマ治療とは、非日常であり、あった方がよりベストだけれど、それよりも、もっと大切なものは、その人の「暮らしの中での癒し」が在ることなのではないか?という結論に至ったのです。
トラウマの癒しは必ずしも「人」ではなく、医療の治療だけが唯一の答えではない、と近頃は、思うのです。
また、コロナ禍の3年で、日本という国というか、自分も含めた日本民族というか、そういうものが消えていく、終わっていくという感覚に漠然とずっと私も襲われるようになって、何か日本人として生きてきた証を残さなければならない。そんな焦燥感に駆られる感覚を持つようにもなっていました。
そういうことを、この3年、ずっと考えてきた結果、私が次にやれることの1つの答えがでたように思います。それは、〈心の傷を癒す〉とはどういうことか?を私なりに捜し求める旅をし、それを記録して、皆さんに報告することです。
その結果、〈心の傷を癒す答え〉の1つは、日本人が失ってきたものの中にあるのではないか?と思うようになりました。失ってきたものとは、科学の発展とともに、人間が便利さと引き換えに文化や自然という「無駄(心の栄養)」を暮らしの中から、とことん排除してきたことではないか?という結論に至っています。以下の記事にもそう思うようになったきっかけを書いています。この記事はまだ以下に続きます。
そのため、私の中で、自然や野生動物の世界と〈虐待の後遺症〉は、深く関連したテーマです。
また、人間の「心」とはどういう世界か?ということを深く考えることも、〈心の傷を癒す答え〉を捜す旅路で、とても大事にしているテーマです。
人間の「心」とは、どういう世界か?
心はどこに在るのか?また、心とはどういう世界なのか?は、まだ科学で解明されておらず、非常に難しいテーマだと思います。しかし、完全には解明できなくても、〈心の世界〉の欠片を私たちは、垣間見ることはできるのではないかと思っています。
例えば、人間は、必ず、以下の法則があります。
「善い心」のときは「善い行い」をする。「悪い心」のときは「悪い行い」をする。
つまり、時間的にも順番的にも、必ず、「心」が先にあって、「現象」が後から起きます。必ず、この順番です。
この順番を考えると、私たちが現実世界(物質世界)で遭遇するすべての現象は、私たちの「心」が創り出しているようにも見えます。だから、人間の本体は「心」だと私は思います。現実は、「心の産物」に過ぎないのではないかと思います。
そして、人間が現実世界(物質世界)ですべてが繋がっているように、「心」の世界でも、人間は「全体」でも繋がっているのではないでしょうか?
例えば、政治家が「悪い心」であれば、国民は不幸になります。つまり、「心の世界」でも、「他者の心」と密接に絡み合って生きているのが、私たち人間だと思います。
だから、自分の心だけ改善しても駄目で、人間は「全体としての心」が改善されないと亡びると感じています。私たち人間は、「個」であって、「全体」として生きている存在だと思うのです。人間は、現実世界(物質世界)でも、心の世界でも、「群れ」で生きている生き物だと思うのです。
「個」の自由は保障されるべきものであっても、人類は〈全体〉として生きている存在であることも、意識して暮らすことは、とても大事ではないかと思うのです。
※〈虐待の後遺症〉の「複雑性PTSD」について、典型的な症例を精神医学的な観点からまとめた書籍です。精神科医の和田秀樹先生の監修・対談付き。ご興味があれば、読んでみて下さい。
虐待の被害当事者として、社会に虐待問題がなぜ起きるのか?また、大人になって虐待の後遺症(複雑性PTSD、解離性同一性障害、愛着障害など多数の精神障害)に苦しむ当事者が多い実態を世の中に啓発していきます!活動資金として、サポートして頂ければありがたいです!!