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価格変動が消費者に与える「疲れ」|週刊小売業界ニュース|2024/6/3週

2024年6月3日~6月9日のアメリカの最新ニュースから、
最近の小売り業界について紐解いていきましょう。

今週のおさらいに、ぜひどうぞ!


企業は、消費者が値上げに抵抗感を示すことに対処するため、プロモーション施策を活用 - The New York Times

<記事の要約>
インフレにおいて、しばしば企業はどこまで値上げ可能かを試したがる。しかし現在のアメリカにおいて、特に低所得者や中所得者を主な顧客とする一部の企業は、値上げが利益率の低下につながっている。そのため値下げをする企業の動きが目立ち始めており、ここ数週間、マクドナルドやバーガーキングはお得なメニューを発表し、またターゲットやウォルマートは数千品目も値下げしたことを発表した。

ここ2年ほど、円安による原材料費の高騰や、
人件費アップが商品価格に転嫁されるようになり、

日用品や生活サービスの相次ぐ値上げに対して、
節約疲れを感じている人も多いかと思います。


私たちが日常で消費する商品・サービスについて
値上げは一巡した感覚があるかもしれませんが、

為替チャートを見るにつけ、
円安の終息を予想するのは難しいです。

Google Finance(2024年6月4日時点)


原材料費の高騰がそのまま価格転嫁される場合、
物価高の二巡目が来るのか!?と構えてしまいますが、

値上げムードは下火になってきているとの見方もあります。

みずほ証券チーフマーケットエコノミストの
上野泰也氏が調査したところによると
2023年後半以降、値上げムードは下降基調とのこと。

全国紙5紙に掲載された「値上げ」という言葉を含む記事数と、
「値下げ」という言葉を含むそれをカウントした上で、
前者から後者を差し引いたDI(上野氏)


企業が値上げする要因は残っているにも関わらず
節約疲れを感じる消費者から注目を得るため、

特集記事のような値下げ戦略が
アメリカの企業だけでなく、
日本でも見られ始めています。


消費者にとって値下げは歓迎したい話ですが、

しかし値上げに値下げに…と振り舞わされるのも、
節約と同様「疲れ」をもよおすのではないでしょうか。

我々が価格変動に疲れてしまう感覚は正常です。

価格変動が私たちに与える印象について、
行動経済学を研究する京都大学の依田高典教授は

価格は価値を示す物差しの役割がある。安易な変動価格制の導入で乱高下すれば、価値判断の基準がゆらぎ公平感や納得感を損なう

「飲みたい時に高くなる」 価格変動、消費者の納得感は』(日経新聞)

と述べています。


価格戦略は、利益の最大化を目指す財務的側面だけでなく

消費者とのコミュニケーションという側面において、
マーケティング戦略や商品戦略とも密接に関係しています。

短期的な財務成績(売上等)に走ってしまい、
中長期でブランドイメージを棄損するといった
プライシングの失敗事例は枚挙にいとまがありません。

有名どころでは、1991年にコカ・コーラ社が、
自販機でダイナミックプライシングを導入した結果、
「飲みたい時に高い」と顧客から猛反発を受け、
同プライシングを中止することになりました。


円安や賃上げといった値上げへのプレッシャーを常に受けつつも
長期目線で価格戦略が顧客に与える影響を予見する必要があり、
プライシングの舵取りがかなり難しい局面だと言えます。


<担当者からの一言>
一昨年死去された京セラ元会長の稲森氏は「値決めは経営」という金言を残されています。
ーーー以下引用ーーー
経営の死命を制するのは値決めです。値決めにあたっては、利幅を少なくして大量に売るのか、それとも少量であっても利幅を多く取るのか、その価格設定は無段階でいくらでもあると言えます。(中略)自分の製品の価値を正確に認識した上で、量と利幅との積が極大値になる一点を求めることです。その点はまた、お客様にとっても京セラにとっても、共にハッピーである値でなければなりません。
この一点を求めて値決めは熟慮を重ねて行われなければならないのです。
ーーー引用終ーーー

この短い文章の中で、プライシングは商品戦略に紐づくものであること、顧客とのコミュニケーションを担っていること、そしてもちろん企業にとって財務的な最適を目指すべきものであることを、平易な表現で語っておられます。
事業家のなかでも財務的感覚が抜群だった稲盛氏の発する言葉だけに、プライシングが持つ意味合いを再確認させられます。


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