マガジンのカバー画像

記事の収納

220
色々書いてこまめに入れていきたいです 書けた順番でそのまま入れてます
運営しているクリエイター

#SF

人新世を知るSF傑作選『シリコンバレーのドローン海賊』感想

人新世を知るSF傑作選『シリコンバレーのドローン海賊』感想

人新世、人類の活動が地球環境に顕著な影響を及ぼす時代のこと―

人新世という言葉はこの本で初めて見聞きしましたが、その概念はうっすらと感じていたテーマだったので、取っつきやすくて良かったです
このテーマとして上がりそうな内容というと、まずは環境の保護活動などを想像していましたが、地球環境の変化から発生する災害が深刻化している話だったり、経済格差の問題を扱う話もあったりして、なにより“その中で人はど

もっとみる
『血を分けた子ども』 オクテイヴィア・E・バトラー 感想

『血を分けた子ども』 オクテイヴィア・E・バトラー 感想


序文

noteとは別媒体の読書アカウントで、おすすめを受けて読んでみた初読みの作家さんの作品です
とても好ましく感じる話揃いの短編集でした

ジャンルとしてはややSF、という加減のSFで、その濃度はそれほど高くありませんが、書かれている内容はかなり濃厚で骨太です
各短編ごとの終わりにあとがきが付いていて、その作品を書くに至った逸話なども解説してくれるし、エッセイも併せて収録されている、ちょっと

もっとみる
『渚にて』  ネヴィル・シュート 作 佐藤龍雄  訳 感想

『渚にて』 ネヴィル・シュート 作 佐藤龍雄 訳 感想

1960年代の、オーストラリアのメルボルンを主な舞台とした群像劇
些細な軍事的な小競り合いから始まってしまった、核保有国同士の止まらない報復行為の果てに、北半球の大半の都市も国家も高濃度の放射能に汚染された死の区域と化してしまい、またその汚染は刻一刻と南半球の地にも迫っている
メルボルンも北半球の都市と同じく、生命の生存が不可能になる、まさに“その日”までの出来事を、様々な人物の視点から克明に描い

もっとみる
『アステリズムに花束を』 百合SFアンソロジー 感想文

『アステリズムに花束を』 百合SFアンソロジー 感想文

SFマガジンの百合SF特集号に掲載された作品に、書き下ろしも含まれた、百合への期待と思い入れが満ちみちた作品集です

百合SF特集のSFマガジンは三刷の増刷を果たしたことや、伊藤計劃氏の『ハーモニー』の十周年記念で開催された特集であったことなどを語る序文から熱い短編集でしたが…『ハーモニー』は百合認知されてるんですね
それはそれで嬉しいような、むずがゆいような、百合って枠組みに入れるのは適切なのか

もっとみる
豪速球のSF短編集『なめらかな世界と、その敵』  伴名練  感想

豪速球のSF短編集『なめらかな世界と、その敵』 伴名練 感想

あまりにも面白い、すごい短編集だった
こういうSF好きだなあとか
情緒の揺さぶり方が容赦ねえなあとか
萌えこころを的確に満たしてくれるし、むしろこの作品きっかけで(何かに)覚醒する人もいるよなあとか! ムズムズバタバタしてしまう短編集でした
読んでいて興奮で動悸が上がったり、面白さが過ぎる場面で発情期のどうぶつのようにウロウロ歩き回ったりするくらい、身体に訴えかける剛力な面白さが凄い短編集でした

もっとみる
『法治の獣』  春暮康一  感想

『法治の獣』 春暮康一 感想

初読みの作家さんでしたが、なかなかのハードSFぶりにときめきつつ、わりと情緒も攻めてくる物語におののきながら読みました
三編の中短編集なのですが、いま「鬱展開の小説で何かいいものある?」って聞かれたら(誰に)
この小説を上げます そのくらい打ちのめされる辛い展開のある話でした そういうのがいい

『主観者』

いわゆる地球外生命体とのファーストコンタクトもので、地球からの探索者チームとコンタクトを

もっとみる
猫SF傑作選『猫は宇宙で丸くなる』感想

猫SF傑作選『猫は宇宙で丸くなる』感想

猫が登場する名作のSFと言えば、ハインラインの『夏への扉』が挙げられる事が多いですが、決してこの作品が嫌いなわけではないけど、本編の内容で猫がきちんと活躍するわけではないことと、執筆時の時代がなにぶん古いので、今の時代の飼育のモラルからタブーの役満をやらかしていることにモヤモヤしてしまう(避妊去勢手術を行わない、人の飲食物を与える、屋外への出入りを自由にする)ことがどうしてもあり、ずっと、じんわり

もっとみる
『自生の夢』 飛 浩隆・著 感想

『自生の夢』 飛 浩隆・著 感想

飛 浩隆氏の著作は、恥ずかしながら初めて読んだのですが
すごく面白く、ページを繰る指が止まらなくて、紙面から溢れる言葉から恐ろしいことに、鮮やかな絵画、雅やかな音楽、墨の香り、密な砂浜を踏む時のぎぎゅっとした質感が伝わるように感じたのです
物語の中に引用される、小説や音楽に映画が、ことごとく好きなものばかりで、でもすべてが分かるわけではないので、早急に調べなければと慌てています

そして、この作品

もっとみる
『盤上の夜』 宮内悠介・著 感想

『盤上の夜』 宮内悠介・著 感想

創元SF文庫『盤上の夜』
著・宮内悠介さん を読みました
囲碁、チェッカー、麻雀、チャトランガ、将棋、そしてまた囲碁…と、盤上遊戯、卓上遊戯をめぐる6つの短編集です
それらの盤上遊戯に挑み、闘い、研鑽を重ねて高みに昇る人々の話…なのですが、各話にそれには留まらない、凄みのある仕掛けとSFとしての奇想が、盤上遊戯という舞台を通じて語られています

盤上遊戯、あるいはカードゲーム等のプレイヤーをモチー

もっとみる
パワードスーツSF傑作選『この地獄の片隅に』感想

パワードスーツSF傑作選『この地獄の片隅に』感想

こちらの記事は、J・J・アダムス編 中原尚哉訳の創元SF文庫『この地獄の片隅に』の感想です
パワードスーツあるいはシンプルにアーマーなどと呼ばれるガジェットが登場する短編が集められた書籍です
ここに登場するのは、個人用の身体強化機能のある兵器である鎧や、あるいは高機能の宇宙服であったり、医療用の救命ポットであったりと、シンプルにアーマーものと言っても、すごく多彩に色々と書かれているジャンルなのだな

もっとみる