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【孤読、すなわち孤高の読書】我が孤読編愛録

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孤島に持っていく本を問われた時、 自分の余命が分かった時、 人はどんな本を選び読むのだろう? 本棚はその人の思考の露呈である。 となると、私の本棚は偏屈な愛情に満ちている。 つ…
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#読書の秋

【孤読、すなわち孤高の読書】ヴィクトール・E・フランクル「夜と霧」

【孤読、すなわち孤高の読書】ヴィクトール・E・フランクル「夜と霧」

著者:ヴィクトール・E・フランクル(1905〜1997)
著書名:「夜と霧」
刊行年:1946年刊行(オーストリア)

極限の絶望下で生の意味を問い続けた、魂を揺さぶる必読書

人間が極限に追い込まれた時、その魂はいかに生き抜こうとするのか?
本書はまさにその究極の問いに対する著者自身の血と肉と涙が滲む回答である。
アウシュヴィッツ強制収容所において、彼は一切の希望を踏みにじられ、すべての自由を剥

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孤読、すなわち孤高の読書】斎藤幸平「人新世の『資本論』」

孤読、すなわち孤高の読書】斎藤幸平「人新世の『資本論』」

著者:斎藤幸平(1987〜)
著書名:「人新世の『資本論』」
刊行年:2020年刊行(日本)

脱成長という概念によって環境問題に切り込む、新マルクス主義の急先鋒。

【読後の印象】
斎藤幸平の著した『人新世の「資本論」』は、あたかも新たなる革命のマニフェストかのように我々の前に突きつけられている。
単なるマルクス思想の解説を越え、著者の手によって『資本論』は21世紀の環境破壊という最終審判の舞台

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【孤読、すなわち孤高の読書】谷崎潤一郎「秘密」

【孤読、すなわち孤高の読書】谷崎潤一郎「秘密」

作者:谷崎潤一郎(1886〜1965)
作品名:「秘密」
刊行年:1911年刊行(日本)

谷崎美学が凝縮した、闇に潜む欲望と退廃の誘惑。

[あらすじ]
夜の闇を纏った街を舞台に、人間の愛と欲望、そして自己の本質に迫る物語である。
主人公は誰にも知られぬ秘密を抱え、自己の性を超えた扮装に身を委ね、夜毎、化粧と女装を纏い彷徨う。
ある夜、ふいに現れた過去の恋人であり妖艶なT女との再会によって、主人

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【孤読、すなわち孤高の読書】杉本貴司「ユニクロ」

【孤読、すなわち孤高の読書】杉本貴司「ユニクロ」

作者:杉本貴司(1975〜)
著書名:「ユニクロ」
刊行年:2024年刊行(日本)

山口県から日本、そして世界の頂点を目指すユニクロの変遷と精神の軌跡。

【読後の印象】
おそらく日本人のほぼ誰もが「ユニクロ」と名の付いた服を持っているだろう。
それほどまでにこのブランドは深く根ざしたと言って良い。
そして今や、日本を代表する世界屈指のトップブランドとして成長を遂げた。
しかしながら、その軌跡の

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【孤読、すなわち孤高の読書】太宰治「人間失格」

【孤読、すなわち孤高の読書】太宰治「人間失格」

作者:太宰治(1909〜1948)
作品名:「人間失格」
刊行年:1948年刊行(日本)

ニヒリズムと自己憐憫に終始した感傷的な告白。

[あらすじ]
ひとりの男が己の存在そのものを否定し、破滅へと向かう生の悲劇を冷徹に描いた作品である。
大庭葉蔵という人物は、他者との交わりにおいて自らを欺き、仮面をかぶり続けることでしか生きられぬ卑小な存在である。
彼の心には社会との隔絶と自己嫌悪が絶えず巣食

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【孤読、すなわち孤高の読書】アーネスト・ヘミングウェイ「老人と海」

【孤読、すなわち孤高の読書】アーネスト・ヘミングウェイ「老人と海」

作者:アーネスト・ヘミングウェイ(1899〜1961)
作品名:「老人と海」
刊行年:1952年刊行(アメリカ合衆国)

老人の孤独と少年との友情、そして生きる尊厳を問う。

[あらすじ]
ハバナ近郊の小さな町に身を寄せる老漁師、サンチャゴ。彼は歳を重ねた肉体に宿る意志の強さを誇りとして生きているが、その日々は容赦なく彼を試す。魚が全く釣れない日が84日続き、同業者からは嘲笑を浴びる。しかし、彼は

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【孤読、すなわち孤高の読書】夏目漱石「こころ」

【孤読、すなわち孤高の読書】夏目漱石「こころ」

作者:夏目漱石(1867〜1916)
作品名:「こころ」
刊行年:1914年刊行(日本)

明治から大正へと移り変わる激動の時代に描いた、恋という原罪。

[あらすじ]
明治時代末期の日本を舞台に、人間関係、恋という罪の意識、そして孤独といった根源的なテーマを描いた作品である。
「先生」と呼ばれる謎めいた男性と、その先生に惹かれる「私」(語り手)との関係を中心に物語は進んでゆく。
三部構成の物語は

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