第15回読書会報告書
2024年4月29日(月・祝)14:00〜15:00、第15回目の読書会が開催されました。
課題本は 若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」です。 第54回文藝賞、第158回芥川賞受賞作品。本作は2020年に田中裕子さん主演で映画化もされています。
若竹千佐子さん「おらおらでひとりいぐも」
※ネタバレを含みますので未読の方はお気をつけください。
4月下旬、曇が多く涼しい風がほどよく吹いていて、少し歩くと汗ばむ陽気に初夏を思わせるよう日和でした。今回は、新規の参加者さま含めて5人での読書会になりました。図書館に貼られたチラシを見て参加した人や見学のみの方は、このnoteで知って足を運んでいただいたということで、とても嬉しかったです。
人が集まった分だけ共感もあれば違う受け取り方をする部分もあります。感想も十人十色と様々、自ずと意見交換も活発になり、有意義な時間になりました。
たとえば、冒頭の導入部分に独り暮らしゆえの不穏な出だしに不安になったと仰っている人もいましたが、別の方はユーモアがあった、主人公桃子さんの生活部分に自分の実家の姿を垣間見て共感と郷愁を感じたと言う人もいました。宮沢賢治の一文が出てきたことでタイトルにも言及していただき、「永訣の朝」から引用されたものだというのを知りました。また、類似作品として永井みみさんの「ミシンと金魚」を思い出したという人も。
70歳代になった老齢期である桃子さんの語り口は、独り暮らしを前向きに思考したり、ときに自暴自棄になって寂しさを募らせたりとシーソーのように気持ちがいったりきたりしています。この人生100年時代に、桃子さんと同じ立場の人は少なくないはず。そんなとき、この物語は寂しさと不安を抱える人たちを勇気づける一助になったという読み手は少なくなかったようです。
桃子さんは若い頃、あと3日でご祝儀というタイミングで田舎を飛び出しています。東京で住み込みで仕事を続けていた中、出会った周造さんと結婚し、子どにを2児もうけて育て上げ、そして尽くし愛した夫との突然の死別。鼠が這う家、クリーニングから持ち帰ってビニール袋に入ったままのコート、雑然とした室内、特殊詐欺にあい、疎遠になった息子と娘、そして郷愁への思い。1人の一生を転換期を主に振り返り、今現代の桃子さんの想いを柔毛突起となった心の内なるキャラクターたちとおしゃべりしながら語っていく。また、母→娘→孫の血縁としての疑似というか輪廻のような繋がりも垣間見えました。
参加者の皆様がもたれた印象では愉快、寂しい、共感、切ない、などなど意見が散見されて、色んな感情が刺激される物語だったのかもしれませんね。
ここからは私自身の個人の感想。
全編方言で書かれた文学は稀有なんじゃないでしょうか。関西弁じゃなく東北弁というのがまたいい。読み始めは苦戦しましたが、桃子さんの人と成りを知るに連れて悲哀よりもユーモアさと理屈詰めた知性も感じました。
まさに 人の一生は文学になる 、といっているようです。
私は仕事柄、歳上の方々とお話する機会が多いので、次第に本文の方言には慣れていきましたが、後半にあった文中の「まぶる。」が分からなくて辞書を引いたら「守る」という意味だそうで、方言の奥ゆかしさを感じる一語でした。つかってみたいですね。
以上、第15回読書会のご報告でした。
ここからは次回のお知らせです。 第16回読書会は6月16日(日)、午後6時〜7時です。暑い時期での開催になるので夕方以降を設定いたしました。開始時間のお間違えがないようお気をつけください。場所は同じく岩沼西コミニティセンター和室1です。
課題本は 「山椒魚」井伏鱒二 です。短いお話なので、他にお薦めの紹介本タイムを設けます。お好きな本、面白かった本などをご一緒にお持ちください。これは自由参加です。
今回のお申込み受付は、都合によりメールのみとなります。
gennotsukito@gmail.com
また、X(旧twitter)の双子moon( @moon61226676 )のDMでも随時受け付けています。
どうぞお気軽にお問い合わせ、ご参加ください。
当日になって、「急に予定が空いた」「課題本読んでいない」「申込みしていないけど…」でも大丈夫です○。また、お友達を誘ってのご参加も大歓迎です。
本好きのみんなで語り合いましょう!お待ちしております。
いわぬま読書会