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「菜食主義者」ハン・ガン 感想

あらすじ
 ごく平凡な女だったはずの妻・ヨンヘが、ある日突然、肉食を拒否し、日に日にやせ細っていく姿を見つめる夫(「菜食主義者」)、妻の妹・ヨンヘを芸術的・性的対象として狂おしいほど求め、あるイメージの虜となってゆく姉の夫(「蒙古斑」)、変わり果てた妹、家を去った夫、幼い息子……脆くも崩れ始めた日常の中で、もがきながら進もうとする姉・インへ(「木の花火」)―――

Amazonより引用
クオン出版社/308頁

  「菜食主義者」ハン・ガン/きむ ふな(訳)

 凄い吸引力。物語、文体、思念が素晴らしい。夢中になって読みました。
 彼女の歪み、夫の歪み、父母の歪み、兄弟姉妹の歪み、日常がどんどん瓦解していく、ズレていく。
 そもそもこちら側な何故歪んでいないといえるのだろうか。
 本当の意味の理解とは真逆に突き進んでいく彼らの一貫した主張に、読み手は知りたくて文字を追うことをやめられなくなる。まるで闇鍋のような物語。
 理解だなんて無理なのだ、だって彼女は『人』であることを放棄しているのだから。

『菜食主義者』では、気になりたがる女性を具現化して、私たちの中でうごめいている動物性と静かに揺れる植物性との葛藤を浮き彫りにしている。

訳者あとがき より

 なるほどなぁ〜と納得してしまった。
 私はよく閉塞的なものや抑圧された作品を読むと(いわゆる鬱小説)、読了後に気持ちが沈んでしまうことがあるんですが、今作は抑圧的で苦しく感じることはあっても読了後はなぜか心が沈むことがなかったです。良作を読んだという満足度が優っていたのかもしれません。ネタバレなしで読んでいただきたいですね。
 知人のオススメで読みましたが、本当によかった。ハン・ガンさんの作品は「すべての、白いものたち」しか読んでいませんでしたが、他の作品も読んでみたいです。
 度々「少年が来る」という作品をSNSや書店の平台でみかけるので読んでみたいんですが、なんだか読了投稿をみると覚悟がいりそうな内容のようですね……。でも必ず読みます。すでにハン・ガン文学の虜なのだから。

2025年1月17日 読了


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