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#建築
第73話 「働き方改悪」VS鍋元さん
「働き方改革じゃなくて、働き方改悪だろ! 政治家とか官僚とかって馬鹿じゃねえか!」
「ねえ、大丈夫?」
鍋元洋司は、朝起きていきなり、妻の鍋元衣子から心配そうに声を掛けられた。
「寝言で得体の知れない文句を言っていたわよ。政治家とかって何?
変なことに巻き込まれてない?」
衣子は怪訝そうな顔をしている。
「大丈夫だよ。何でもない」
「ねえ、本当のことを言ってよ。この工事はすごいお金が動いて
ゲンバノミライ(仮)第44話 空調設備の岩井さん
美しい空気は美しい配管から流れていく。名言とかではない。本当にそうだと思っている。
岩井美咲は、空調設備工事会社の技術者として、多くの建築物などを手掛けてきた。
空気は、温度や湿度、清浄度などいろいろな要素で管理されている。浄化して適切な温度に調整した空気が部屋に届き、部屋の中の空気を吸い込むことで、コンクリートなどで覆われた室内が快適な状態に保つのだ。そのために、天井裏や屋上、壁の裏側などに
ゲンバノミライ(仮)第43話 ファインの大橋さん
草木が生い茂った中で、リュックを背負ってゆっくりと上がっていく。現地に行くという基本は不変。
だが、肉体労働が待っている訳ではない。刻々と上がってくるデータと、現地に立った時の第一印象を基に、設計者に渡す基礎資料を作成する。これは究極のリモートワークだと思っている。
大橋亮は、建設工事の計画地に行って現地を測量して3Dデータ化し、計画用途を踏まえつつ、大まかなイメージ案を作る会社に勤務している
ゲンバノミライ(仮)第37話 レンタルの豊さん
頼まれたらすぐに持って行く。終わったら回収して、手入れをして、いつでも再出動できるようスタンバイする。シンプルだが、求められているのはそういうこと。ニーズを間違いなく受け止めることが何より大事。
企業向け資機材レンタルサービス会社で働く清水豊は、入社以来、そう教わってきた。伝票形式だった在庫管理を電子化して、稼働履歴を担当者間で容易に共有できるようシステムを構築したのは、顧客対応のスピードと正確
ゲンバノミライ(仮) 第13話 二世の柳本首長
「それはガバ部屋で話しましょう」
あの災害後の選挙で首長になった柳本統義の口癖だ。
柳本の父の昌義は前々首長を務めた地元の名士だ。その長男として育った。都会の大きな自治体で職員として経験を積み、国会議員秘書を経た後、父の引退に合わせて地盤を引き継ぎ地方議員になった。
あの災害が起きたのは、議員2期目の途中だった。街の多くの人とともに行政職員にも犠牲が出て、ただでさえ脆弱だった組織は混乱の中で機