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映画館ブラックアウト
映画を観てるカップル。
(彼は…
ポップコーンが大好きみたい。
いつもはLサイズ。
そしてあればメガサイズを注文する。
そして本編が始まる前に、
猛烈なスピードで食べ終わる。
飲みものぐらいの勢いで。
いつも私は、
そんな必死な横顔を見ながら、
そっと手を伸ばし、
ポップコーンをひとつまみもらう。
すると彼の手が…
私の指に触れ…
そして私は…
突然、視界を失う…)
(彼女は可愛い。
彼女は僕のファンだった。
僕は学生時代ボクシングをしていて、
その試合をよく観に来てくれていた。
話をすると、
昔からボクシングが大好きらしかった。
彼女はどんなに傷だらけでも、
ボコボコに腫れた顔でも、
カッコいいよと言ってくれた。
そんな彼女を、
いつの間にか好きになってた。
彼女は映画も大好きで、
映画館で観るのがお気に入りらしい。
好きなジャンルは、
アクションとホラー。
正直言うと、
僕は避けたいジャンルだった。
でも彼女が喜ぶ顔が見たいので、
今日も流れでここに来た。
そして僕は大好物のポップコーンを、
猛スピードでかき込む。
そもそも食べ物は、
ゆっくり味わった方が美味しいのは、
当然知っている。
でもこれは僕にとって、
死活問題なのだ。
本編が始まるまでには…
すると予告映像の人物が、
こちらに向かって、
思いっきりボールを投げてきた。
僕の身体は…
自分の意志とは関係なく…
実際には飛んでこないボールを、
反射的に回避する。
ここからはコマ送りだった。
僕の身体は大きく後ろへ仰け反る。
持ってたポップコーンの容器は、
僕の手を離れ…上空へ。
容器から開放され、
空中に弾け飛ぶポップコーン。
星屑のように、
一面に散りばめられるポップコーン。
床に落ちてさらに弾けるポップコーン。
そして最後に…
メガサイズの容器が…
ゆっくりと静かに…
彼女の頭に覆いかぶさった。
そして次の瞬間。
驚いた彼女の右手が、
僕のアゴをかすめた…。
そして僕は…
視界を失った…)
このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。
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