ごにん地蔵
むかしのことじゃった。
とある農村へのあぜ道に、
5体のお地蔵様が並んでおった。
そこを通る村人は、
前に差し掛かると両手を合わせ、
家内安全や無病息災を願うのでした。
このお地蔵様、
どこででもお見かけするお姿ですが、
ひとつだけ変わったところがありました。
「番号 いち!」
「に!」
「さぁ~ん!」
「にぃたすにぃ!」
「ご!」
「良し!以上5体…っておい!
また参、ふざけたな!」
「すいませ~ん。
どうしても言いたくなっちゃって」
「気をつけろ」
「はい」
「いつもですけど、
僕すごく言いにくいんですけど」
「何だ、にぃたすにぃ。
お前の数字は縁起が悪い、
不吉だと嫌われてるから仕方ないんだ。
そんなに大変なら、
数字さえ合っていれば、
他の言い方でもいいんだぞ。
いちたすさんでも良いし、
にのにじょうでも良いんだぞ。
1000割る250でも構わない。
お前さえ良ければな」
「もういいです。
ちょっと慣れてきましたし」
「ならば、よし!
さて今日も道行く人の安全と、
村に疫病が入ってこないよう、
見守りを怠るないように。
みんないいな~!」
「おー!」 「おー!」
「おー!」 「おー!」
「と、その前に…
身だしなみ確認をしようと思うが、
何だかひとりだけ、
乱している者がおるなぁ」
「ん?」 「ん?」
「ん?
あっ!お前!
何やってんだよ、伍!」
「何のこと?」
「いや、自分…
ひとりだけトレードマークの、
前掛けの色が違うじゃないか!」
「あっほんとだ!
みんな赤なのに、
ひとりだけ白だ!」
「どうしたんだ伍?
洗濯して乾かなかったのか?」
「いやそうじゃなくて、
ちょっと思うところがあって、
今日から白にしてみたんだ」
「急にどうした?
理由を教えてくれ」
「それはまだ言えない。
あとでわかるよ」
「何だよ勿体ぶって。
あっ!わかった!
紅白にして縁起物アピールとか?」
「そうじゃないんだ」
「白の前掛けで、
自分だけモテようって魂胆か?」
「それもちょっと違うんだ。
もうすぐわかるよ…ほら!」
すると向こうから、
村長がやってくるのが見えた。
そしてお地蔵様の前で止まると、
手に持った大きな荷物を下ろし、
両手を合わせた。
「いつも村を守って頂き、
ありがとうございます。
今日もお供物を持ってきましたので、
お供えさせてもらいますよ」
そう言うと村長は荷を解いて、
供物の準備をし始めた。
「はいはい。
まずは壱のお地蔵様。
ここに団子とお茶を置いておきますよ。
次、弐のお地蔵様にも同じものを。
今日も赤い前掛けお似合いですね。
おや、参のお地蔵様には団子が
なくなりましたので代わりにお餅を。
よんたすよんひくよんのお地蔵様にも、
同じお餅とお茶をここに。
おや?伍のお地蔵様…
今日は白の前掛けですか?
こちらもよくお似合いですよ。
それでしたら伍のお地蔵様には…
このハンバーグと、
コンソメスープのセットですね」
「ハンバーグ?!」
「ハンヴァーグゥゥ!!」
「コンソメ?!」
「ス、ス、スゥ~プゥゥ!!」
「では今日もよろしくお願いしますよ」
そして翌日……
……
めでたしめでたし。