法令遵守に配慮します
自室のベッド上。
寝転びながら、
スマホを眺めてる女性。
「何かネットも飽きたなあ…。
最新映画もほとんど見たし…。
昔の映画かあ…
画像が古いんだよねえ。
あの色合いが好きって言う人いるけど、
私って生まれた時から4K映像だし。
映像が汚いって思っちゃうんだよね…。
リマスター版…探してみよう…。
あっ、これいい!
ラブコメで面白そう!
よし!
これ見てみよう!」
【テロップ】
一部、不適切な表現がございますが、
原作者の意図を尊重します。
ご了承下さい。
(ああ~コンプラね~。
昔の作品には必ずこれ出るよね)
【タイトル】
【恋愛サブマリン】
眩しい日差し。
穏やかな青い海。
海辺で釣りをする男子二人。
【テロップ】
ここは漁業規制区域ですが、
二人の両親が漁師ということもあり、
特別に見逃してもらっています。
ですが二人とも、
幼魚はリリースし乱獲はしないよう
ルールを守って釣りを楽しんでいます。
(………)
釣り糸を引き上げる男子。
「ちっ!
エサだけ取られた。
今日の奴らは賢いな」
「この分だとボウズだね」
「お前…
坊主が屏風に上手に坊主の絵を書いた
って、言える?」
「坊主が………言えない」
「挑戦しろよ!
そんなんだから、
ミキとの仲が進展しないんだぞ!」
「それは関係ないよ」
「関係あるよ!
お前ら何年、幼馴染みやってんだよ。
高校3年なんてあっという間だぞ!
思い出作りもしないまま、
東京へ行くつもりか!?」
「言われなくても…分かってるよ」
「いいや、お前は分かってない。
お前は俺の言葉と母ちゃんの言葉は、
ほとんど聞いてないからな」
「そんなことないよ…」
「お~い!」
「ほら、噂をすれば来たぞ!
ほれほれ!」
「何だよ、茶化すなよ」
「二人とも釣れた?」
「ぜ~んぜん。
魚にとっては平和な1日だよ」
「あれ?
今日は用事あるって、言ってなかった?」
「それは今から。
ちょっと買い物してきて、
荷物が重いから、
自転車に乗せてってもらおうかと思って」
「ミキはそういうところが、
昔から変わんねえな。
ずうずうしいのな」
「失礼ね!
困ってるから頼りにしてるんじゃない!」
「ものは言いようだな。
でも俺は何としても、
1匹は釣りたいからパスな。
だからサトルに乗せてもらえ」
「僕?!」
「サトルいいの?!
ありがとう!」
「いや、僕はまだ何も言って…」
「じゃあ、カゴに荷物入れるね!
助かる~!」
「あ、あ、あ…うん」
「じゃあね~!
魚釣れたら教えてよ~!」
「わかった~!
二人とも頑張れよ~!」
サトルはペダルに足をかける。
ミキは荷台に座り…
サトルのシャツの裾を…指でつまむ。
サトルはミキの気配を背に感じながら、
力強くペダルを踏み出した。
【テロップ】
自転車の二人乗りは道路交通法違反です。
ですがここはサトルの祖父の土地であり、
私有地です。
ここはあくまでプライベートビーチであり、
何の問題もありません。
問題があるとすれば、
釣りに来た親友カズヤと、
ミキはある意味では不法侵入ですが、
サトルが許している以上、
咎められることはありません。
補足としてミキは高校卒業後は、
アクションスターを目指しており、
特殊な訓練を受けてますのでご安心下さい。
「サトル!」
「な~に!?」
「もっと飛ばして!
この自転車って、
フェラーリー製なんでしょ?!
もっとスピードでるよね!?」
「分かったよ!
落ちないように掴まって!」
ミキはサトルの腰に手を回した。
サトルはうつ向き…
全力でペダルを漕いだ。
【テロップ】
ここで自転車のスピードが、
40Kmを超えましたが問題ありません。
道路交通法では速度違反に該当しますが、
この島には取り締まる警察官が、
ひとりしか駐在しておりません。
その駐在さんも現在、
交通安全指導で島の反対側の、
小学校へ行ってます。
そして駐在さんは、
島のマドンナ アキコ先生にベタ惚れです。
恐らくあと3時間は戻ってこないでしょう。
よって…
この違反を取り締まる人は誰もいません。
「速い!速い!
もっとスピード出して!」
「もっと?!」
自転車はグングンスピードを上げます。
【テロップ】
時速60Kmですが問題ありません。
「ちょっと止めて!
サトル、ストップ!」
キキッーー!!!
「ミキちゃん、急にどうしたの?」
「おかげで早く着きすぎたから、
ちょっと冷たいもの飲んでいこう!
サトル汗だくだし」
二人は喫茶店に入る。
【テロップ】
二人の学校の規則では、
学生だけの喫茶店入店は禁じられてますが、
この店はサトルの叔母のお店なので、
全く問題ありません。
ちなみにこの喫茶店。
島内に20店舗チェーン展開してます。
サトルの叔母ミドリは独身で、
町役場の環境保全課の鈴木課長と、
農林漁業団体代表の高橋さんとの、
三角関係継続中。
ミドリは年内決着を模索中である。
「ねえ、サトル。
クリスマスってどうするの?」
「クリスマスか…
たぶん、今年もじいちゃんが、
業界人を大勢呼んで、
盛大にパーティーするんじゃないかな…」
「それはあなたの家のでしょ?
サトルはどうするの?!」
「僕?
僕は……どうしよう…
じいちゃんの手伝いかな…」
パシーン!
ミキはサトルの左頬をぶった。
「もういい!
サトルなんか知らない!!」
「…ミキちゃん」
【テロップ】
サトルは厳格な両親により、
朝起きれば挨拶代わりの平手打ち。
いただきますで平手打ち。
いってらっしゃいの平手打ち。
ご乗車ありがとうございますの平手打ちと、
日々、頬の鍛錬を積み重ねてきました。
特殊な躾を受けてますのでご安心下さい。
「説明が面白すぎて、
全然内容が入ってこない!」
お疲れ様でした。