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とんとん

手でとん、とん、とん、とし続けるあれ、
小さい子どもや親しい人が、近くで寝そうにしているとき、やってあげる。安心して眠れよ、とかではないな、正直。こちらが愛でる行為の一貫。でも近ごろ思い出したのだ、そういえばぼくは、あの「とんとん」が嫌いだった。

眠らない子どもだった。夜に眠らないのだから、昼間なんて尚更だ。何故大人たちが、こぞって昼寝をさせようとするのか、さっぱり分からなかった。それ以上になぜ

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夢(一夜)

夢(一夜)

こんな夢をみた。

年上の恋人はさわやかで、なかなかに聡明だった。ぼくたちはデートをし、街の小さなビジネスホテルに行きついた。部屋のベッドに腰かけて話していると、突然全館に放送が響いた。

「これにて大会は終了します。大会は終了します。大会は…」

恋人はぼくのスマホを手にとり、ホーム画面のゲームアプリを指さした。

「これ、やった?」

ぼくは黙って首をふる。気が向いていれたものの、ほとんど放置

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生活の主張

生活の主張

 僕の恋人は完璧だ。

 完璧というのは,もともと傷の全くない宝玉を表していたらしい。すべらかでなめらかで,ほんのり琥珀色をした完璧な玉。恋人を完璧,と思うたび,僕はその玉に思いを馳せる。

 国王はビロウドの椅子に座って,手の中に収めたその玉をうっとりと眺める。戦国の時代 ――― 争いに,人に,時代に疲れた王を唯一癒すのは,手の中で冷ややかに眠るその玉であった。力こそ全ての時代において,案外国王

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夜の子どもと窓

夜の子どもと窓

一番古い記憶は,窓から見る雨の景色だ。

すりガラスの向こうにぼやけて見えるのは,湿った夜の空と窓に当たる雨粒,そして,等間隔で妙にきれいに揺らめく街灯の光だった。

分厚いえんじ色のカーテンと,かび臭いレースのカーテンを順番にくぐり,僕は窓の前に立つ。雨の匂いに惹かれて顔を寄せると,鼻がガラスにくっついて,ひやり,とする。

とても悪いことをしているような,それでいて誇らしいような気持ちで,僕は

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