シェア
目が覚めたとき、ぼくは細かい粒子として空中に浮遊している。 歳を取るとともに、だんだ…
緑色の髪をした魔女がてのひらを突き出した。 「いい、見てて」 海。日本列島。 その上…
顔が崩れてしまうのは、病気のせいではない。 立体レイヤーが40度以上の高温に耐えられな…
AI冷蔵庫を買った。 適当に買った食材をしまっておくと、レシピを提案してくれる。 「麻…
私は鍵を使って玄関を開け、 「ただいまー」 と奥に声をかけた。 「おかえりなさいー」 …
なにをしても、頭痛が消えないのである。私はMRI検査を受けた。 写真を手にした医者は…
金持ちはなにを考えるか、わからない。 ニセコの高層マンションに住み始めた大富豪は、 「北海道に富士山を作ってみたいな」 と呟いた。 「ふつうの富士山じゃ元祖に負ける。どうしようかな。お菓子で作ろうか」 取り巻きの一人が、 「四〇度の気温でも溶けないチョコレートがありますよ」 と言った。 「それだ!」 富士山といえば、南北三十七キロ、東西三十九キロの長大な楕円形だ。面積は約千二百キロメートル。土地の買い上げだけでも大変な作業である。 必要なチョコレートの体積は千四
「表へ出ろ」 と酒場で相手が叫んだ。 「おーい」 私は後ろを振り向いた。 「へーい」 …
惚れた弱みがある。 何度もプロポーズしてようやく結婚してもらえたとき、オレは体内にレ…
ぼくは電話アプリを起動し、「恋人」をタップした。 彼女はなかなか出ない。 「どちらさま…
大学に入って、ぼくはヒマを持て余していた。 「おーい、いるか?」 サトウの声だ。サーク…
縁側をさわやかな風が通りすぎる。 父は勤めていた会社を定年退職すると、とくに新しい仕…
私は化粧台の前で顧客の顔を赤く塗った。 その上に大きな髭をつける。 腕や足下には剛毛…
残業で遅くなってしまった。 私は鞄から鍵を取り出し、しずかにドアを開ける。 リビングルームにはいって、目の前の光景に凍りついた。 妻が男にビールを注いでいる。男は私にうり二つだ。 これはいったいどういう状況だろう。 彼らも私に気づいて、妙なものを見たという顔をする。 そのとき、 「おそくなってごめんー」 と言いながら、女が入ってきた。 「はい、おみや。えっ」 女は妻に似ている。いや、妻なのかもしれない。 「これはどうしたことだ」 「あなたなの?」 と隣の女