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深川岳志
3年前
50

【ショートショート】歌だけ無理

「よおし、二次会はカラオケだあ」  苦手なヨシオカ先輩が叫んだ。  女性ふたり、男性三人。…

深川岳志
11時間前
4

【ショートショート】時差仏

「仏師になりたい」  と息子は言った。  父親は茫然としたが、先生は冷静だった。 「誰かの…

深川岳志
2日前
7

【ショートショート】時よ止まれ

 目の前でトラックが止まっていている。トラックだけでなく、広い環状道路上のクルマがすべて…

深川岳志
3日前
2

【ショートショート】振り返ると廃屋

 隣近所にだんだん廃屋が増えていく。 「高齢者が亡くなるのは仕方ないよな」  とおもう。 …

深川岳志
4日前
4

【ショートショート】断崖絶壁

 バスはみるみる高度を増していく。  私は左側の前から三列目の席に座っていた。  雲海がす…

深川岳志
5日前
6

【ショートショート】雨の日の憂鬱

 雨が降ってきた。まだ霧のような小雨だが、徐々に強くなっていくという予報が出ている。  ぼくはベッドに横たわりながら、もうすぐ皺になってくるはずの黒い天井をみつめた。  家は鬚でできているので、水分にとても弱い。ふだんは銅くらいの強度を持っているが、濡れたとたん、ダリの「柔らかい時計」のようにぐにゃりと曲がってしまう。  天井がどんどん下がり、壁は横倒しになっていくのだ。  建築素材としては最悪ではないかと思うのだが、なぜか鬚建築は多い。剃った鬚が山のように積もるので、無駄に

【ショートショート】モンシロチョウの群れ

 三年生のクラスは校舎の三階にある。  ぼくは窓際の席からぼーっと空を眺めていた。 「あれ…

深川岳志
7日前
6

【ショートショート】くさいのだ

 彼女は無臭の民である。  臭いがない。どこにもだ。  洗いたての髪に鼻をつければ、シャン…

深川岳志
9日前
3

【ショートショート】埴輪のいる家

 家庭教師を雇うことにした。  人間の家庭教師は高いので、もちろんロボットである。  学力…

深川岳志
10日前
4

【ショートショート】ひろがる私

 私の顔は、ひとことでいえば、平凡である。  適当に目、鼻、口がついている。バランスはそ…

深川岳志
11日前
7

【ショートショート】道なきところ

 ピンポーン。  インターホンが鳴り、私は玄関の映像をみた。  リュックを背負った知らない…

深川岳志
12日前
2

【ショートショート】ウルトラ・デブン

「ダン、太ったなあ」  とフルハシが言った。 「近ごろ、運動不足で」 「ダンは甘いものを食…

深川岳志
13日前
6

【ショートショート】雲をつれて

「今日も寒いな」  とお父さんが言いました。  窓から光が射し込んでこないからよけいです。  うちの家の上には小さな灰色の雲がふわふわと浮かんでいるのです。  居間のこたつの上には、みかんを入れたカゴと雲の形をしたカギが乗っています。  雲は、このカギのあとをついてくるのです。 「誰か散歩に行かないか」  テレビの通販番組で、パーソナルクラウドを購入してしまった張本人のおばあちゃんは知らん顔をしています。 「夏は涼しくてちょうどいいなんて言ってたのはどこのどいつかね」 「通販