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「じっそーや、じっそー」 外からのどかな声が聞こえる。 「あ、ちょうどいいや」 オレは…
「あなた、野崎砂男さん?」 オレは驚いた。若い女性、しかもクールビューティーと称してい…
鄙びた高原に旅したときのことである。 町に一軒しかない雑貨屋に立ち寄ったところ、妙な…
田舎に移住した。 借りたのは田んぼのなかの一軒家。 ある程度の貯金はあるが、収入は確…
自分がモテないのは身長のせいであるとコバヤシは思っていた。 身長一六〇センチは、男性…
神様は老人ホームにいた。 もぢろん、ホーム側は気づかない。本来は空き部屋のはずだが、何年も前からそこに神様(仮称タナカ)が入居していると思い込んでいる。 「タナカさーん、ご飯ですよー」 介護士のイマムラがドアを開けて、タナカに声をかけた。 タナカは大きな食堂に行った。 長机にずらりと並べられたプレート飯と味噌汁。 大音量の大型テレビ。 「うわあ。すっごいおいしいです、このシフォンケーキ!」 とタレントが甲高い声で叫ぶが、食堂は静けさに包まれている。 タナカは目
昼休み、オレたちはビルの食堂に行った。 昔はいろいろな店が並び、さらに各店にはメニュ…
定年退職して一戸建てにひとりで住んでいると、あっと言う間にひとりぼっちだ。 予想して…
ぼくは頭にスチールの輪っかを装着した。 自動的に電源が入って、頭上、数十センチの高さ…
自分はミミズである。 前世は人であった。 息子の様子がおかしいとおもったら、上司がパ…
火曜日は定休日。 私はゆっくり眠って、好きな時間に起きる。 朝食をとってシャワーを浴…
まっ暗で、温かい。土の匂いがする。 っていうか、これ、土なのでは? 不意に記憶が戻っ…
朝刊を取りに出て、ちらと庭を見た。金木犀が一本生えているだけの細長い空間だ。 「あっ」 端のほうに見慣れぬ木枠があった。 「井戸だ」 私は思わず呟いた。 移動する井戸はSNSで拡散された都市伝説である。 失踪した人は、井戸のなかにいる。だが、井戸はすぐに移動してしまうので、二度と地上に戻ってくることはない。 ならば、それを言っているおまえは誰だと思い、いままで信じないできたが、本物の井戸を目にしたからには嫌も応もない。 私はすぐにホームセンターに走り、縄梯子を買