【ショートショート】頭痛のタネ
なにをしても、頭痛が消えないのである。私はMRI検査を受けた。
写真を手にした医者は、
「これ」
と言って、脳の断面を指差した。黒い影がある。
「なんでしょう?」
「丸いのはタネ。そこから芽らしきものが出ています」
私は絶句した。
「頭のなかで植物が育っていると」
「周囲の痛覚感受組織が圧迫されています。痛いのは当たり前ですね」
「除去できますか」
「場所からいって、難しいですね」
「では、どうすれば」
「頭蓋骨の一部を切り取って、圧力を抜いてやれば、痛みは軽減されるはずです」
私はおそるおそるたずねた。
「植物はどうなるんでしょう」
「どんどん育つでしょうね」
「そんなバカな!」
「そのタネはたぶん桜の木で、あなたは立派な桜の花を咲かせるでしょう。それを観に人々が集まってきて、花見の宴会をするかもしれません」
「落語じゃありませんか!」
「その通り」
無茶苦茶だ。
「この話、どうやって終わるつもりですか」
「現実は落語じゃないので、サゲはありません」
私は病院を出た。フラフラ歩いていると、頭にチューリップの花を咲かせた男性とすれ違った。
(了)
ここから先は
0字
このマガジンに含まれているショートショートは無料で読めます。
朗読用ショートショート
¥500 / 月
初月無料
平日にショートショートを1編ずつ追加していきます。無料です。ご支援いただける場合はご購読いただけると励みになります。 朗読会や音声配信サー…
新作旧作まとめて、毎日1編ずつ「朗読用ショートショート」マガジンに追加しています。朗読に使いたい方、どうぞよろしくお願いします。