マガジンのカバー画像

朗読用ショートショート

平日にショートショートを1編ずつ追加していきます。無料です。ご支援いただける場合はご購読いただけると励みになります。 朗読会や音声配信サービスなどで自由にご利用ください。その際に…
このマガジンに含まれているショートショートは無料で読めます。
¥500 / 月 初月無料
運営しているクリエイター

2022年8月の記事一覧

【ショートショート】海岸にて

 白い砂浜がどこまでも続く美しい海岸である。  こんなに絶景なのに、誰も観光客がいないの…

深川岳志
2年前
6

【ショートショート】作者不在

 ある日、海岸で浜口綸太郞という人からの手紙を拾った。  広口のガラス瓶に詰められた手紙…

深川岳志
2年前
4

【ショートショート】地球人図鑑

 玄関のチャイムが鳴った。  執事が顔色を変えて、主人のもとへとすっ飛んできた。 「ご主人…

深川岳志
2年前
8

【ショートショート】打ち上げ

「ふうん。ロケットかい」  団扇で胸元に風を送り込みながら、親父さんは言った。 「そう。ロ…

深川岳志
2年前
7

【ショートショート】文化祭の後

 秋の文化祭だ。  三年B組の出し物はお化け屋敷。  私は口裂け女だった。  親兄弟や近く…

深川岳志
2年前
4

【ショートショート】提灯行列

 日中外を歩いていると、しばしば目が痛くなり、顔を伏せることが多くなった。  目が乾燥し…

深川岳志
2年前
10

【ショートショート】遺品

 実家は郊外にある。東京から二時間。そう簡単には往復できない。  母が老人ホームに入居し、実家は無人となった。  ちょっと時間が空いたので、私は三年ぶりに実家を訪ねた。  人の住んでいない家は荒れるというがほんとうだ。鍵を使って玄関をあけ、私はまずリビングに入った。外からの光が舞い上がる埃を照らしている。  二階を確認し、折り畳みの階段をおろして三階にも上がってみた。  三階はごく小さな物置である。  ものでいっぱいかなと心配したが、そんなことはなかった。分厚い絨毯が一枚置い

【ショートショート】すきま計

 一生は短い。たった四千週しかない。  そんなことを考えたのは、腕にはめているスマートバ…

深川岳志
2年前
12

【ショートショート】パートナー

 暇つぶしにドン・キホーテの棚を見て歩いるときに「喋るやかん」を発見した。三千五百八十円…

深川岳志
2年前
10

【ショートショート】アニメ・アイ

 ヨシオは夏休みと冬休みにアルバイトをして、アニメ・アイを買った。見た目はふつうのメガネ…

深川岳志
2年前
11

【ショートショート】内と外

 駅から下ってきた道にお屋敷がある。長く続くブロック塀には、ところどころに菱形の穴が空い…

深川岳志
2年前
8

【ショートショート】ぶつかる

 朝、なかなか息子が起きてこないので、二階に見に行った。  ベッドの中の息子が蒼白な顔を…

深川岳志
2年前
16

【ショートショート】塚

 土を盛ったものを塚という。  佐藤家の庭に大きな塚が出現した。  塚の土はやわらかい。掘…

深川岳志
2年前
7

【ショートショート】認証

 朝九時。リモートワークを始めようとした。  本人確認のため、アカウントとパスワードを入力する。  それだけでは済まない。  画面に九人の男の写真が表示される。小太りの男をチェックせよ。  小太りってなんだ。写真のなかには明らかに肥満な男も含まれている。肥満は小太りなのか、そうではないのか。  私は最初三人をチェックしてハズレと言われ、肥満も含めて五人をチェックしてまたハズれ、あとは適当に人数を入力していった。失敗が続いたせいか、ログイン画面がロックアウトされた。 「出社して