見出し画像

【ショートショート】文化祭の後

 秋の文化祭だ。
 三年B組の出し物はお化け屋敷。
 私は口裂け女だった。
 親兄弟や近くの学校からも見物人が来て、お化け屋敷は大盛況だ。
 五時に文化祭が終わると、私たちは撤収に追われた。六時から河原で打ち上げのバーベキューをする予定なのだ。
 はやくお肉を食べたい。
 私たちは先発隊としてスーパーに買い物に行く。口裂け女や河童やのっぺらぼうや皿屋敷のお菊さんなどが大挙して押しかけ、籠にお肉や野菜やソーセージなどを投げ込むため、スーパーは大騒ぎである。子どもたちは驚いて私たちの周りを右往左往する。
 まるで文化祭の二次会のようだ。
 私たちはそのまま河原に向かって走った。
 すでに唐傘お化けたちがバーベキューの火を興していた。
 提灯火があたりを照らしている。
「おつかれさまー」
 私たちがジュースで盛り上がっていると、あとから担任の先生もやってきた。
「今日はがんばったな。ウケてたぞ」
「おーっ」
 私たちはハイタッチをして盛り上がった。
 河童は川に飛びこみ、烏天狗は空を飛ぶ。
 やっぱり本物は迫力がある。手伝ってもらってよかった。妖怪は妖怪を呼び、河原はお化けの運動会のようになった。
 私たちらしい打ち上げである。
 しかし、ちょっと騒ぎすぎたかもしれない。
 近所の住人から苦情が行ったらしく、何人か警官がやってきた。
「ヤバい」
「逃げろ」
 みんなで逃走した。
「さようならー」
 と叫び交わす。もし、機会があったら、また来年。楽しく遊ぼうね。

(了)

目次

ここから先は

0字
このマガジンに含まれているショートショートは無料で読めます。

朗読用ショートショート

¥500 / 月 初月無料

平日にショートショートを1編ずつ追加していきます。無料です。ご支援いただける場合はご購読いただけると励みになります。 朗読会や音声配信サー…

この記事が参加している募集

新作旧作まとめて、毎日1編ずつ「朗読用ショートショート」マガジンに追加しています。朗読に使いたい方、どうぞよろしくお願いします。