【ショートショート】アニメ・アイ
ヨシオは夏休みと冬休みにアルバイトをして、アニメ・アイを買った。見た目はふつうのメガネだけど、レンズを通して見た世界はすべてアニメ調になる。
ついでに音声変換装置もついていて、指定した人物の声は声優の声に変換される。まるでアニメーションのなかで暮らしているような気分になれるのだ。
新作アニメは高いので、ヨシオはちょっと古いけど、大好きなルパン三世カリオストロの城のアニメ・アイを選んだ。
友だちを次元大介と石川五ェ門に、担任を銭形警部、校長先生をカリオストロ伯爵に設定した。校長先生は高圧的で保護者からも嫌われていたので、敵役としてちょうどよかった。
ヨシオは本来陰気な性格だったが、アニメ・アイをつけると陽気なキャラとして振る舞うことができた。
「おまえ、最近、明るいな」
「これのせいだよ」
「なになに」
「ルパン三世のアニメ・アイ」
「あ、そのメガネ、アニメ・アイだったのか。いいなあ」
と次元大介がいう。
「おまえも買えよー」
「楽しいか」
「決まってるじゃん」
次元大介と石川五ェ門もアニメ・アイを買った。
ヨシオたちが毎日を楽しく送っていると、サッカー部の連中がなんだかヨシオに強めに当たってくるようになった。いじめというほどではないにせよ、なにか対決しようという雰囲気がひしひしとする。
ヨシオとしてはスポーツ部とことを構えたりしたくない。
ひそかにさぐりを入れ、ヨシオは自分がカリオストロ伯爵に設定されていると知った。
「なんでオレが」
メガネ・アイをはずした次元大介が、
「おまえ、ガタイがいいもんなあ。言われてみれば伯爵っぽい」
と言った。
ヨシオは傷つき、元の陰気なヨシオに戻った。
(了)
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