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「残像に口紅を」音が失われる世界でどう生きるか?

こんばんは、フカドク!です。
本日は毎週土曜日担当のロムよりお送りさせていただきたいですが、
なんと今日が年内最終土曜日、これが2020年のラスト投稿となります。
そんな最終回に何を投稿しようかな〜と考えたのですが、
自己啓発やビジネス書も月並みだし・・・とか思いこの本を紹介しようと思います!

こちらは小説ですが、いつもやっている読書会で紹介された本で、
本の内容を聞いてすぐポチり、購入した本です。

なかなかテーマが秀逸かつ、よくこの本を書けたな、と素直にすごいと思える本になっています。
それではいざフカドク!

あらすじ

この本はあらすじを話した方が本のすごさなどが伝わるかと思います。
主人公は佐治勝夫、何冊も本を書いている有名作家です。
その佐治が次のテーマとして考えているのが超虚構という概念。
虚構が現実となる時どうなるか?ということを自ら体験していくという内容です。

その虚構とは何か、でいくと、文字が失われていく世界。
具体的には、たとえば「あ」が失われたら、「あ」がつくものが全てなくなります。
例えば「アリストテレス」「赤穂浪士」「アンガス牛」「安定」「ミーアキャット」など、「あ」がつく人やもの、概念などが全て世の中から無くなります。

そしてその失われていく音は徐々に増えていきます。

という世界観なのですが何がすごいなと思ったかでいくと、
主人公の佐治勝夫が生きている世界(虚構であり現実の世界)でその言葉が徐々に失われていること。

つまり、この本そのものから消えた言葉存在しないのです。

最初は先ほどの例と同じ「あ」が消えているのですが、つまりこの残像に口紅をには一度も「あ」が含まれる言葉が出てきていないのです。

もちろん後半にしたがって音がどんどん失われていくので限られた音で表現をしなければならず、回りくどい表現であったり、「なんとか」で表現されていたりします(もちろん、「あ」がないので「アレ」は使えません)

最後の方はもうほとんど文章が成り立っていない狂気の世界となっていますが、驚愕すべきは途中までおや?とは思うもの問題なく読めること。

果たしてどうやってこの本を書いたのか、おそらく一旦書き終わってから表現を変えに変えて作っていたのだと思いますが、作者のものすごい狂気(褒め言葉)を感じました

音が消える世界ではどうなるのか?

そんな音が消える世界の具体的な内容はぜひ本を読んでいただきたいのですが、個人的に感じたポイントをいくつかあげたいと思います。

・意外と音が少しぐらい消えてもなんとかなる
これは、いざその世界に落ち入ったらちょっと違うかもしれないし、自分は無理だと思いますが、文章としては意外と成り立っているのが印象的でした。
一方でやはり半分ぐらい音が消えるとかなり読みにくい文章となってます。

実際、後半の方では主人公である作家である佐治は普通に言いたいことを喋れていますが、他の人は普段使っている言葉以外の言い換えの言葉を知らないのでとても話しづらそうにしている描写があります。
逆に前半の方は他の人も普通に喋れているので、意外と多少の音が減っても大丈夫なんだなぁという印象でした。

・無個性の人の方が残る
これは、この本のルール的にもそうなのですが、言い方に変えが効くものは片方の言い方の音が消えても他の言い方をすればOKとなっています。
すると、自分にとってあまり興味のない人の方が様々な言い方ができるという現象が起こっていました。
例えば、女の子とか女性とか言い方は色々あり片方の音が消える度に別の言い方で消えずに残っています。
一方で、関わりの深い人は名前や苗字で読んでいるので、その中のどれかの音が消えた瞬間いなくなります。

おわりに

改めて、この本はよく書けたな、、と思います。
構成を考えて、実際書いてみて、禁止ワードが入っていたら言い方を変えたり構成を変えたりしながら少しずつ改変していったのでしょうか・・・?

このクリエイティブな本に脱帽しつつ、来年もこのような素直にすごいな!と思えるような本を読んでいこうと思いました。

さて、自分の更新で今年分はこちらが最後になります!
7月ごろから始めたこのフカドク!ですが、これをやることで強制的に1習慣に1冊以上本を読むことができました!

いいこととしては、自分が読みたいなと思う本がたまにない時があって、その時は読書会とかで知った、自分では手に取らないような本を読むことが(強制的に)できること。
その分自分の趣味や興味の範囲が広がっていくので一定強制力をもってやると、セレンディピティに巡り会えるなと思います。

来年も1週間に1冊、元気に読んでフカドク!していくのでどうぞよろしくお願いいたします!
それではよいお年を!また来年!

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