これはすべて夢かもしれない。由宇はそう思った。本当はすべて夢の中の出来事で、現実ではないのかもしれない。土曜の午後、病院の帰り道のことだった。 昔そんな小説があったな。蝶の夢を見て、今が現実か蝶であったのが現実か、わからなくなるやつだ。 由宇が今を現実じゃないと思ったのは、今日が素晴らしく晴れた日で、気持ちのよい気候で、そして病院に寄ったという、いつもと違う出来事のせいだ。お腹をさする。 ───妊娠おめでとうございます。 その瞬間の心持ちと言ったら。由宇は笑ってしま
「別れよう。」 そう達吉から言われたとき、貴子は静かに頷いた。訳を尋ねることもしなかった。聞いてもしょうがないと思ったのだ。 達吉が別れたいのだ。理由など自分が聞いても、別れることには変わりがないし別れるならばもうこうして親しく口を聞くこともあるまい。 なら、さっぱり別れた方が己のためだ。 貴子は「分かったわ」と微笑んだ。 「別れたぁ?達吉と?」 まず驚いたのは妹の亮子だった。なんでまた、とぼやけぎみに言う。 「亮ちゃんには報告しとこうと思って。」 まぁ、お姉ち
アイスが冷凍庫にあったら、とりあえず幸せだと思う。 わたしがそういうと彼は変な顔をした。 変わってるね。 わたしは頷いた。 そう、わたし変わってるのね。 それがバーで交わした彼との話だった。そこから何をどうやって話しついたのか、彼には中学生の息子がいて手を焼いてて、わたしは独身だけど恋人もいない身分であることをつまびらやかにした。 「今日君の部屋に行ってもいいかな。」 彼が申し訳なさそうにいうと、わたしは「ええ、もちろん。」と答えた。 朝日が上ると肌寒い。
【伊東歌詞太郎】ライカ【歌ってみた】 (0:04:37) #sm27506361 https://t.co/5xBoitSzJc (要訳) それでもクドリャフカは死んでしまったのだ。その5kgの躯で宇宙で燃え尽きてしまったのだ。彼女は死んでしまう可能性を知らずに宇宙船に乗せられ、旅をした。ほんの瞬きの旅だった。 たった一匹の犬に、自分の使命が理解できただろうか。なにも知らずクドリャフカは宇宙船へ乗せられ、打ち上げられた。恐怖と緊張にひきつっただろう。助けてくれ、と鳴いた
「誰だ。」 勘太郎は小さな声で探るように尋ねた。 「あたし。」 幼馴染みのちいの声に安堵したように引き戸を開ける。 「誰にもあとをつけられなかったか?」 ちいは小さく頷く。「これ。」と差し出した握り飯に勘太郎が今度は頷く。 二人で握り飯を頬張る。小さな塩結びは不格好で、きっとちいがこっそり握ってきてくれたものだろう。 「あたし奉公になんか出たくない。」 ちいは膝を抱えて呟いた。 「俺なんか畑本んちででっちだぞ。仮にも城で働けるんだから贅沢をいってはいけない。」
その人の視界に入りたくて、今日もわたしは背伸びをする。日に焼けた肌、豪快に笑う顔。二年先輩の彼はわたしの憧れだった。 「翡翠は夢を見すぎなんだよ」 瑪瑙はそういう。 「男なんてみんなオナニーしてやりたいだけの猿なんだから。」 キレイな瑪瑙の口からとんでもなく卑猥な言葉が出てきて、わたしはからから笑った。 「大丈夫。ちゃんと分かってるから。」 瑪瑙は目を細めてわたしをみた。 「本当にわかってるの?致すってどういうことか。」 わたしは曖昧に笑う。たった14歳で分かるわ
「君の膵臓を食べたい」を一日で読んでしまった。ただ好きな子が病気の末死んでしまうのではなく、恋愛小説としても『好き』の意味合いが今までと違って画期的だった。こういう関係の成り立ち方をなんと呼ぶか、わたしには分からない。新しい形の恋愛なのだろうか。ついに恋も論理的に話される時代が来たのか。 ただ好きというだけじゃなく、お互い側にいる理由。うまく噛み合って築いた上の関係。いつ人が死ぬかなんて分からないから、余命なんて関係ないこと。死ぬのが怖くて、日常がほしかった彼女。
引っ越しでバタバタである。病院からと自宅からなので荷物をあっちこっちから引き取って整理して、新しい住居に持ち運ぶさまはさながら働き蟻だ。ちまちまうごうごしてる。来月中にはパソコンも修理に出さねば。スケジュール日程がキリキリ舞いだ。 パソコンの接続不良を、中身のデータを消さずに修理してくれる会社を見つけて沸き上がった。無念に消えたテキストデータがまた手に入る。刀剣乱舞の続きですらできるかもしれないし、ニコ動の歌ってみたをスマホで頑張ってみなくてよくなる。一石二鳥だ。 再
「結婚しないか。」 十年来の付き合いがある郷にそういわれたとき、わたしは「は?」と言い返した。 「お互いもういい年だろ。」 郷とわたしはいわゆる悪友で、いろんな遊びに興じてきた。 「なにいってんの?」 「結婚するならさ、」 お前がいいと思って。俯いていう郷にわたしは笑った。 「なにそれ。全然似合わないよ。」 そんなことを郷に言われるなんて思ってもみないことだった。 「よく考えてほしい。」 それで今日いきなり呼び出されて、告白か。わたしは呆れ返った。 「ちゃんとしたお
白い牡丹が咲く季節だった。母がとうとつに亡くなった。齢六十いくつかだった。兄と二人で出した葬式は、父のよりわびしいものとなった。 兄はなにも言わず母の遺体のそばで酒を飲んでいた。 「それお神酒だよ。」 そう注意してもなにも言わず、杯を傾ける。わたしもその横に座り込んだ。 「亡くなっちゃったね。」 また部屋が静まり返る。兄が杯を傾ける音だけが静かに響いた。 母は豪傑な人だった。いわゆる、関西のおかんみたいな人で、笑いかたが口を開いてがはは、と笑う。そうして子供を愛す
九段下駅から出発。千代田区観光協会を見つけてスタンプラリーの台紙を入手。 江戸城北の丸へ行くと、どこ!?スタンプ!?全く見つかりませんでした(汗)。QRコードすらなく何度もスタンプラリーのサイト確認。見つかりませんでした(汗)。 そのまま進んでいき、科学技術館でライブをやるらしい人の列を横目に歩き、引き返しては何度もためつすがめつし、 皇居をお散歩。タダです。 光のどけき、冬隠れ。通りすぎるる人の香、懐かしき匂い見つけてふと立ち止まふ。 庄内藩酒井家江
執着と依存性は、厄介な代物である。恋愛においてこれらは、たぶんに活躍し暗躍する。執着してないものに人は依存していないし、依存のないものに執着はできない。 例えば薬物。この場合、執着は精神的なものと捉えられる。依存が日常的になった場合、執着という形で帰結する。安心がほしい、気持ちよくなりたい、今を忘れたい、理由はなんであれ薬物を欲し、トリップしたがる。アルコール、タバコにおいても同じことがいえる。 人間関係で執着と依存性を人為的に作り出せるか、という実験をした人を知って
うどん屋で讃岐うどん舞茸天付きを食べた。立ち食いだがとても美味しかった。うどんにこしがあり、舞茸の天ぷらの油っぽさと合間って、いい感じだ。うどんは小麦粉と塩と水だけでいいのでどこもリーズナブルのお値段なのは嬉しい。 水がただの国、日本である。四方を海に囲まれ川がいくつも流れ、雪解け水や湧き水がこんこんと流れる。他の国では水にお金を払わなければいけないなんて想像がつかない。たしかに東京などは水道水が汚れて、浄水器がないと飲めないが、それでもお店ではただの水を出してくれる。
風邪を引きました。くしゃみと鼻水がとまらなく、脳汁まで出てる気分。熱はないけど、鼻の奥がヒリヒリして痛い。 昔の人は人間そのものも薬として服薬してました。糞や尿、死んだ人のお骨まで。今では医学的に効かないと証明されていますが、実際、人間の解体図がポーランドから伝わったのは江戸末期です。それまではただ想像としての人体解剖図が、医療に使われてました。 昔の人は、地球を平べったいお皿のようなものだと思ってきました。誰も丸くなってて重力があるなんて分からなかったのです。
悲しさの果てにあるものは、やはり苦しみだと思う。そして忘却。そうやって人は忘れて生きていく。あのとき辛かったことも諦めたことも忘れながら、くるくると回って人生を送ってく。 いきなりだが、わたしはなにかをしている「ふり」が得意だ。傷ついてるふり、笑ってるふり、申し訳なく思っているふり。本当はなんとも思ってない。興味や関心がないのもあるし、ただその場をやり過ごしてるだけというのもある。心からなにかを願ったり、思ったり、やり通そうとすることが希薄な子である。 わたしは小5の
正義を貫こうとしてるひとをみると、苦労してるなと思う。それと同時に夢見がちだな、と。正しいことがいいわけではない。民意ではない、ましてや信じてはいけない。そのことを子供の頃にもっとしっかり親が教えなければいけないのだ。世の中は不条理だよ、と。その方が生き残れる。 一時期、問題になった本当は恐ろしいグリム童話こそ、子供の寝しなに親が読んであげるべき本だ。わたしも幼い頃は兄と共に母に読んでもらった。人間の本質を突いている本だと思う。だからこそ長く受け継がれるのだろう。 残