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生命の喜びとカネのかかる俗世・その3
歌って踊って生命の喜びを謳歌する。もそろそろ充分やり尽くした私が、10数年ぶりの「じゃあ何する?」な自由時間を迎えて、新たに発見した遊びは
「運動すること」
だった。何せ金はないけどヒマはある。今まで避け続けてきた苦手分野の「運動」に手を出してみるにはもってこいの機会だった。
心拍数が上がること、筋肉に負荷がかかること、肺にめいっぱい空気を取り込むこと、どれもこれも恐怖感があった。
何せ元々生きるのしんどい系の人なので、省エネ方向は得意だけども、ガンガン動く方向は恐怖でしかなかったのだ。歌う、踊る、である程度「動く方面の喜び」を知ったつもりではあったけど、ある一定以上の負荷を体にかけることには、ずっと強い抵抗があった。
いやー、これがね、怖くてもとにかくやってみる、怖いままやってみたらどうなるか見てみよう?の先が、最高に楽しい世界だった。
何十キロも走って汗ダラダラでニコニコしてるような変態の人たちとは絶対に分かり合えない、と頑なに思っていたのに、すっかり私もその楽しさが分かる人になってしまっていた。
さて、金はないけどヒマはある、の日々が過ぎ、そのうち申請していた給付金が下りると、今度は「金もあるけど、じゃあ何する?」の日々が始まった。
やってみたいけどお金かかるからな、、、と今まで優先順位の下の方にあり続けた願いを、叶えるチャンスが来たのだ。
とことん省エネして掴んだ10数年前のピュアな願いとは真逆に、俗世のカネのかかる願いを、今度は精査していくキャンペーンだった。
久しぶりにネイルサロンにも行った。美容外科にも行ってみたし、お金かかるから続けられなかったマツエクにもガンガン通った。たまーにしか行けなかった脱毛にも足繁く通った。日焼けマシーンに似た美白マッシーンなるものにも入りに行ったな。
そう、お金さえあればやってみたかった!が炸裂したのは主に美容方面だった。そしてやってみて、やっぱり続けたい!となるものはほとんどなかった。脱毛ぐらいだろうか。
もう一つ炸裂したのは旅行方面で、お金と時間さえあればいくらでもいろんなところに行きたかった私は、大いに喜んであちこち出かけた。これはやってみると美容方面と違って、たとえお金の余裕がなくても、捻り出してでも優先的に叶えるべき願いだという結論に至った。
そうして給付金も尽き、体一つ方面からカネかかる方面までありとあらゆる願望をひととおり精査し尽くして、私の非日常が終わった。また元通り、生きるために毎日働く日々が始まった。
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