お庭でレモンを育てる爽やかな暮らし
3年前、私の小さなお庭に仲間入りした1本のレモンの木。
そのレモンの木の名前は「マイヤーレモン」。
1年を通して変化が楽しめるレモンの木を植えてから、私達のお庭に爽やかな風が吹くようになりました。
これは、「家庭菜園」初心者の私達がレモンの木を育て始めてからの1年の記録です。
🍋レモンの木との出会い
その頃、私はお菓子作りを本格的に始めた時期でもあります。
そして、お菓子作りを始めてから、レモンを使う機会が意外にあることに気づき始めます。
「レモンの果汁を絞る」「レモンの皮を削る」「レモンの輪切りを添える」
レモンの皮を削ったり、レモンの輪切りを使ったりするときは、なるべく農薬のないものを選びたいのでその度に買ってきます。
でも、最近私の近くのマーケットには、無農薬のレモンが売られていることの方が珍しく、見かけることが少なくなりました。
そこで、主人が
「レモンを自分で育てて収穫した方がいいんじゃない?」
と提案してくれました。
それからは、ホームセンターでレモンの木を見に行くことが増えました。
でも、いざレモンの木を選ぼうと思ってもその種類はたくさん。
私達は、それからレモンの情報を調べました。
そして迷いに迷った結果、あまり酸味が強くない「マイヤーレモン」に決めたのです。
5月4日
その日から、レモンの木を育てる日々が始まりました。
「たくさんの美味しいレモンが実りますように・・・。」
そう小さくつぶやきながら、私達は苗を土に埋めました。
🍋ようやく2年で初収穫
「レモンなんて、本当にお庭で育つのかな?」
これが私の最大の疑問でした。
それもそのはず、今まで実家でもご近所さんでもレモンを地植えしてるのを見かけたことがなかったのです。
しかも、それまで私は、家庭菜園すらしたことがなかったのですから。
でも、ふと、私は思い出したのです。
2階のベランダで、しかも小さなプランターでレモンを育てていた会社の先輩のことを・・・。
「今年は2個なったよ。」と誇らしげにお写真を見せて頂いたことを。
「もしかしたら、きちんとお世話をしたら、私にもできるかもしれない。」
それから私達は、レモンの育て方を調べて一生懸命お世話をしました。
レモンの木は、春にお花が咲いたものは果実となりやすく、夏に咲いたお花は育ちにくいようです。
そこで夏に咲いたお花は摘花して、春にお花から実に変わったものを大切に育てることにしました。
「水やり」・「肥料」・「害虫駆除」。
この中でどうしても、私が苦手なものがあります。
それは、害虫駆除。
昔から虫が大の苦手な私にとって、それはとても耐えがたいもの。
初めは、薬を一切使わずに育てようと思っていました。
でも、育ててみて分かったのですが、レモンは全然無農薬というわけにはいかないようです。
本当にびっくりするほど、いろいろな害虫がレモンの木にはたかるのです。
特にひどかった害虫は、アゲハ類の幼虫とコナジラミ、アブラムシ、ルリダマノミハムシです。
そこで、私達は、収穫直前まで使えるという食品成分で作られている安全な害虫スプレーを使うことにしました。
でも、やっぱり今度は少し弱めなスプレーのためか、効果がない害虫もいます。
そんなときは、主人に頼んで、虫がいたら一匹、一匹割りばしでつかんでもらい処分してもらいます。
いろいろ苦戦しながらお世話をして、2年目に初めて2個収穫することができたのです。
待ちに待った「初収穫」です。
そして、このときの嬉しさは今でも忘れることができません。
たとえるなら、愛情いっぱいに大切な子供を育てあげ、やっと成人になったような感じでしょうか。
また、レモンは緑色から黄色に色を変えることにも時間がかかります。
でも、この色が変わる時期は、私達にとってとても幸せな時間なのです。
ここまで生長すれば、あとは色が変わるのを待つだけなのですから・・・。
そして、私達にはちょっとした自信と安心感が生まれてきます。
そして、いよいよ「初収穫」の日を迎えます。
「なんて、綺麗な色のレモンなんでしょう。」
もちろん、レモンは黄色なのですから、とても目立つことは当たり前のこと。
でも、この時の私達には、太陽の光に当たったレモンが、まるで金色に輝いているようにとても眩しく見えたのです。
🍋寒い冬越しの準備へ
栃木県の冬。
2月になると一番寒い時期に入ります。
レモンの木は寒さに弱いため、寒さと風を防ぐため「寒冷紗」が大活躍。
レモンを収穫し終わった12月頃。
レモンの木をすっぽりと覆うように寒冷紗を掛け寒い冬に備えます。
私は心の中で声をかけながら、寒冷紗をレモンの木に優しく掛けます。
「少しの間寒いけど、来年にまた綺麗な花を咲かせてね。」
🍋厳しい冬が終わり、穏やかな春へ
お庭には色とりどりの鮮やかなパンジーとビオラ。
そして、寒さに耐えたチューリップも力強く顔を出し始めます。
待ちに待った穏やかな春。
少しだけ葉の色が黄色くなってしまったレモンの木。
そろそろ、お目覚めのとき。
私は、そっと寒冷紗を外します。
「おはよう。よく、頑張ったね。」
厳しい冬を越したレモンの木に優しい光が差しました。
そして、5月。
淡い紫がかったつぼみから可愛い白い花が咲き始めました。
レモンの木は、春に咲いたお花から果実がたくさんできます。
もちろん、レモンの木はそのままでも受粉できます。
でも私達は、少しだけ受粉のお手伝いもしています。
耳かきについているふわふわした羽の方を使って、花粉をポンポンとつけてあげるのです。
「たくさんのレモンが育ちますように。」
そんなささやかな願いを込めて・・・。
🍋実りの季節・・・暑い夏がやってきました
蝉が泣き始める暑い夏。
お庭では、色鮮やかなペチュニアが綺麗に咲いています。
7月は春に咲いた花が果実となる季節。
レモンの木も3年目にもなると、たくさんの実をつけ始めます。
そして、レモンの木自ら、いらない実を落とし始めるのです。
そして、8月。
今度は、落ちなかった実を切り落とす「摘果」という作業をしていきます。
少し、もったいない気もしますが、摘果をしないと重くて枝が折れてしまったり、実が大きく育たなかったりするのでとても大切な作業なのです。
レモンは葉が25枚につき、1個と決まっています。
今回は、42個摘果して、20個残しました。
そして、また12月になると、
待ちに待った・・・収穫の時期がやってきます。
🍋マイヤーレモンのスモーキーな香りと風味
収穫したマイヤーレモン。
私は、さわやかなレモンらしい香りを想像して、鼻をレモンにそっと近づけました。
「えっ、これってレモンだよね?」
それは、レモンらしいさわやかな香りとは全く違う神秘的な香り。
私はびっくりしてしまいました。
マイヤーレモンは、オレンジの交配種だけあって、切った瞬間からオレンジの香りを少しスモーキーにしたような香りがします。
そのまま食べてみると、第一印象は、グレープフルーツのような風味。
こちらは私が想像していた通り、酸味がとてもやわらかでフルーティーな感じです。
早速、レモンティーにしてみました。
このマイヤーレモンは、酸味が少ないのでまろやか。
今までで一番美味しく感じられました。
また、お菓子作りに風味づけに使ってみましたが、酸味よりも甘みが感じられてとても使いやすいと思いました。
いろいろな可能性を秘めた「マイヤーレモン」。
私にとっては、とても魅力的なレモンです。
🍋レモンを育てるさわやかな暮らし
初めてレモンの木を育ててみて、私達はたくさんの経験をしました。
♦1つの実を育てることの大変さ。
♦まるで、子育てをしているような愛情のめばえ。
♦初めて収穫したときの喜び
♦自分で育てたものを食材として使える楽しみ。
私達は、レモンの木を1本お庭に植えただけ。
それだけで、こんなにも素敵な経験ができました。
今は、8月。
12月の収穫時期に向かって、緑色のレモンが大きくなってきました。
レモンの果汁たっぷりのパウンドケーキに、レモンのアイシングをかけた「ウイークエンド・シトロン」。
もう、レシピは決まっています。
さあ、今年も緑色から黄色に移り変わる贅沢な時間がやってきます。
それまで、夏のお花のお世話でもしておきましょうか・・・。