【小説】イミテーションパール
耳を引きちぎるようにしてイヤリングをかなぐり捨てた。灰色のゴミ箱にイミテーションパールがふたつ、吸い込まれるように落ちていく。一度だけぴかりと光った。それきりだった。私の1994円、あんまりにあっけなくて気づけばぼろりと涙が溢れていた。やすっぽい。何もかも、私の涙さえ。
これが例えば二万円のパールだったら、何か変わっていた? 答えは決まっている。まさか。何円だって一緒だ。千円だって、十万円だって。武装に意味はなかった、初めから。はたちになったって私は出来損ないのまま、子ど