潮彩香るレモンプリン
早いもので、もう9月。
遅い夏休みが近づいている。
今年は所用もあり、仙台に行く予定だ。
いろいろ名所を調べているが、Google Maps上で保存しているのは仙台のフルーツパーラー、洋菓子店、和菓子屋ばかり。
旅の醍醐味、風景より味覚。
そういえば、一般的な夏休みの終わりとともに、これはもう一回食べたいと思っていた季節限定プリンも去ってしまった。
その日は蒸し暑かったので、MARLOWEで《湘南ゴールドのジュレ》を買うぞ、と息巻いていた。
湘南ゴールドは、温州みかんとゴールデンオレンジをかけあわせた、黄色い小ぶりな柑橘。
見た目ほどの酸味はなく、酸味がマイルドな文旦、という感じで、とにかく香りがよい。
生産・出荷基準や、一定の品質確保などの要件を満たす農林水産物や加工品が認定される、かながわブランドにも登録されている。
湘南・西湘エリアでは、これを使った商品が数多く見られるし、春先は青果コーナーに果実がうやうやしくならぶ。
その輝く黄色のジュレに手を伸ばしかけて、となりのプライスカードの文字面に目を奪われてしまう。
「湘南潮彩レモンとはちみつのブリュレプリン」
潮騒だのはちみつだの、ロックバンドのスピッツ好きは反応してしまう単語がちらほら。
ただ、潮騒、ではなく潮彩。
さんずいが多くて海を感じるし、サ行が多くてさわやかだし、字面から青と黄色を感じる。
湘南どこからどこまでだ問題は根が深いのでさておき、そういう品種のレモンが存在するのか?と思い調べてみる。
湘南潮彩レモンとは、神奈川県西部で栽培されたレモンの総称として、2020年2月にうまれた新ブランドだという。
ロゴも見事に青と黄色だし、レモンの中に波がたっていたり、サーファーやカモメが飛んでいたり、とかわいらしい。
これは、神奈川県民たるものいただかなくては。
長い商品名を略すことなく全部言ったが
店員さんはにこやかに、そしてさわやかに「レモンプリンですね!」と復唱した。
MARLOWEといえばガラスのビーカープリンが名刺代わりだが、このプリンはビーカーの半分くらいの高さの美濃焼に入っている。
ダンディマーロウおじさんのかわりに、海のいきものが描かれていて夏らしいし、まさに潮騒。
ビーカープリンは正味二人分くらいの大容量なので、正直このくらいがちょうどよい。
見た目はカスタードプリンのようにシンプルだが、スプーンを入れると、その構造があらわに。
天面にたっぷりかかった黄色はレモンのピューレ、その下はブリュレプリン、そして底には琥珀色のカラメル。
黄色~褐色のグラデーションの彩りがあざやかだ。
とろとろのピューレだけすくって食べてみたところ、ストレート剛速球な酸味と、ほんのりした苦みで強制おちょぼ口に。
レモン風味、とかレモン味、とかではなく、なめらかな舌ざわりのそのまんまレモン。
駆けめぐる酸味に蒸し暑さなどふっとぶし、柑橘の酸味好きにはたまらない。
それもそのはず、湘南潮彩レモンを皮・綿までまるごとペーストにしたピューレだという。
とはいえピューレ単体の酸味がかなり強いので、ここに国産はちみつを加えているのだとか。
ほんのすこし、後味にレモンカードのようなマイルドな風味も感じたのはそのせいかもしれない。
その下のブリュレプリン部分にもレモン果汁が入っているそうだが、こちらはクリーミーでミルキーで、やわらかくホッとする甘さ。
カラメルも甘めなので、全部混ぜて食べるとバランスがちょうどいい。
混ぜて味わうもよし、柑橘の酸味好きならピューレだけ先にすくってその味にテンション爆上がるもよし、なプリンだった。
残念ながら9月1日で今期の販売を終えたとのこと。
潮彩ちゃん、また来年、である。
ところで湘南潮彩レモン、横浜銘菓ありあけのハーバーや、お酒、パン、クッキー、温泉ともコラボしていた。
まだかながわブランドには登録されていないようだが、着々と湘南を背負って立ち、席巻しようとしている。
旅先の名産を探るより前に、地元の名産を知らねば。