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木田元著(2013)『対訳 技術の正体』株式会社デコ

技術と理性を簡潔に表現

本書はとても薄く、また半分はマイケル・エメリックさんの対訳になっているので、簡単に読めてしまうのと同時に、久々に英語に触れる機会をも与えてくれた。

一度日本語で読み終わり、次に英語でも読んでみると、1冊で二度美味しい体験ができるだろう…

本書の内容は、ずばり最初のページに書かれてあり、「人間が理性によって技術をコントロールできるというのはとんだ思い上がりではないか」ということ。

この文章がでてくる「はじめに」の部分が、東日本大震災を通じて著者が思った、技術と理性にかかわるもので、それがこの本の半分程度の分量を占めている。それだけインパクトが大きかったことが理解できる。

本書の本編でもある「技術の正体」については、科学技術というのは人類にとっての利便性や貢献と同時に両刃の剣としてのデメリットもあることが強調される。とは言え、世の中には不気味なものはさまざまあるが人間ほど不気味なものはないというギリシャの悲劇詩人の言葉を持ち出し、人間社会を諌める。そこで、技術は理性などの手に負えるものではないと考えるべきなのであると著者は主張する。

さて、私個人はエンジニアでもあるため、そうは言っても人間は理性で技術をコントロールしていく必要はますます高くなってきたと考えている。現代は電車などでも過密なスケジュールを技術的に可能にしているわけで、それらのコントロールを技術に頼らなければ、満足な電車の運行すらできない高度な時代になってきているわけで、それでも過信せず愚直に理性をもって技術をコントロールしていくことは重要かと感じる。それは基礎を大切に愚直に努力を積み重ね信頼を得ていく活動であり、単に理性が技術をコントロールできるというのが思い上がりであると言われようが、それでも愚直に理性を磨き技術をコントロール下におけるくらいに洗練したプロを目指す必要があるということなのだろう…

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