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【えりた書店】

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元書店員で、雑食系活字中毒者のえりたが「おもしろい!」「好きだ!」と思った本をジャンル問わずにご紹介。売れ筋の本も、ひっそり輝く本もステキポイントをずっしり掴んで書いていきます。…
一か月で10本の書評を放り込みます。記事単体では300円ですから、マガジンの方が絶対にお得。また、…
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#読書の秋2022

■「ありたい私」で生きてくこと―『正々堂々』

ちょっとだけかなしい思い出から。 私は三姉妹の長女です。 うちの末っ子さんは 大きな病気をしたこともあり それはそれはかわいがられて育ちました。 毎日のように 「かわいいねぇ」と言われている妹。 歳が離れた長女であり、 しっかり者であることを求められた私は そんな妹が羨ましくて仕方なかったのです。 でも、ある日。 幼かった私は意を決して母に尋ねました。 「えりちゃんもかわいい?」って。 そしたら。 ちょっとした沈黙のあと 「えりちゃんは…まぁ愛嬌はあるよね」 苦笑いし

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■したたかにしなやかに、思うように人生を歩んでいくこと―『いつも異国の空の下』

中学三年生のとき 国語の教科担当だったT先生。 ベテランの先生で、 授業もとても分かりやすかったです。 ちょっとお茶目な、でも、 基本真面目な国語の先生って感じ。 国語が好きだった私は いつも先生の授業を楽しみにしていました。 卒業も間近になった 最後の国語の授業の日。 「今日はちょっとお話しましょうか」 そうおっしゃった先生は 教科書を置き いつもとは違う話を始められました。 それは、T先生というより Tという「ひとりの女性」の話でした。 まだまだ子どもだった私は 「

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■物語だからこそ感じるセーシュン―『哀愁の町に霧が降るのだ』

大学時代、椎名誠さんのエッセイで ある方が「1年で1000冊読んでいる」と 仰っているのを読みました。 その直後、なぜか私は 「んじゃ、200冊なら行けるんじゃね?」と 根拠もへったくれもなく 至極唐突に考え付き 四の五の言わず実行に移したのです。 その結果が今の 「重度の活字中毒雑食系」。 なぜ、200冊だったのか。 なぜ、可能だと思ったのか。 なぜ、実行したのか。 それは未だに分かりません(笑) が、#読書の秋2022 の企画で 椎名誠さんの作品が 推薦されているの

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■日常のなかにある歴史と自分―『羊飼いの暮らし』

以前、友人が すぐ近くに山がないのって 関東と尾張くらいなんだよねと話していました。 確かに、関東は関東平野が広がっていますし 私が暮らす尾張には濃尾平野があります。 言われるまで ほとんど意識したことはありませんでしたが、 たとえば、山を背にする新神戸駅とか 新幹線で広島あたりを走ってるときとか 生活のすぐ背に山のある土地が 日本には多いことに気づきます。 そして、濃尾平野で育った私は すぐ近くに山があることのもたらす感覚を 持たないのです。 そう考えると 生活圏に山が

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■実践が導く思索が見ないフリしたものを炙り出す―『ぼくはウーバーでねん挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』

売れていたり、話題だったりしても 自分には縁遠い気がして 手に取れない本があります。 私にとって 『人新世の「資本論」』がそうでした。 トライしようと、書店で何度か 実際に手に取ってみたのですが そのたびに、しっくりこなくて そっと棚に返していたのです。 今回、読んだのは その筆者である斎藤幸平さんの新刊です。 『人新世の…』を読む準備運動ではありませんが 気軽に読めそうなものが出ていたので 購入してみたのでした。 ■『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた

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■自分の「好き」をまっすぐに放つ―『寝ても覚めてもアザラシ救助隊』

ぼんやりと本を眺めながら 書店をふらふらしていると 時折、本と「目が合う」感覚があります。 事前知識も、何もないのに ただその本と「目が合う」。 目が合ってしまう。 そして、それを手に取ると 紙の感触や、書籍の持つ重みが しっくりきっちり馴染んでいる。 そういう本は「買い」です。 間違いなく面白い。 中をパラパラ見るとかしなくても 絶対に面白いと分かる。 何より、視覚、触覚、嗅覚、聴覚が 「これは絶対、今買っとけ」と教えてくれる本。 今日ご紹介する本とは そんな風にし

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■孤独と言葉とちくわ天―最果タヒ『もぐ∞』

うどん屋さんに行くと なぜか、必ず「ちくわ天」を頼みます。 先日など、うどんの量を小盛にしてまで 「ちくわ天」を頼む始末。 私はどうしてこんなに 「ちくわ天」を愛しているのだろうか。 などと思っていたら、私と同様に 「ちくわ天」を愛している人を発見!な 本がコチラです。 ■『もぐ∞』について □最果タヒ □河出文庫 □2022年4月初版(単行本は2017年) □570円+tax

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■気持ちをざわつかせる言葉たち―『今日拾った言葉たち』

その昔、院浪をしていたころ、 私は、自分を説明するための「肩書き」を 持っていませんでした。 そのときの寄る辺のなさは ずいぶん時間の経った今思い出しても ちょっと強めのしんどさが ズンっとココロにのしかかってくるほど 重く、圧の大きいものでした。 そして、 そのとき感じていたしんどさや寄る辺のなさにも ちゃんと理由のあることを教えてくれたのが こちらの本です。 ■『今日拾った言葉たち』 □武田砂鉄 □暮しの手帖社 □2022年10月初版 □1700円+tax

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■他者の読書を垣間見る―落合陽一 『忘れる読書』

■思考が止まらない! 読んでいるときからずっと 思考が回転し続けてしまう本があります。 今回、岡山旅行へ持参して読んだ 落合陽一さんの『忘れる読書』(PHP新書)が まさにそれでした。 では、そのとき 私は何を考え続けていたのか。 それは。 自分自身の読書に対する姿勢についてでした。 落合氏の読書との共通点、相違点、 そこから得られる展望について 私は本書を片手に、 文字通り一晩中、点検し反省し、 言語化し、考え続けていたのです。 ■『忘れる読書』について 『忘れ

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■転がる好奇心で、拡張する世界―『パンダのうんこはいい匂い』

こんばんは。えりたです。 本日、読み終えたのはコチラです。 『パンダのうんこはいい匂い』 ■藤岡みなみ ■左右社 ■1800円+tax ■ISBN:9784865280951 ■異文化に触れるということ 「異文化」という語を聞いて どんなことを思い浮かべますか?

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■弱さや苦手を生かして生きる―『マイノリティデザイン』

こんばんは。えりたです。 本日、読了したのはコチラです。 『マイノリティデザイン』 ■澤田智洋 ■ライツ社 ■1700円+tax ■ISBN:9784909044297 表紙デザインのポップさに 気持ちが吸引され、ポチりとしました。 また、届いた実物を見たら タイトルに点字が重ねられていて。 タイトルの説得性が直に伝わるのも ステキだと思いました。 筆者の澤田さんは 息子さんの視覚障害をきっかけに 「マイノリティ」への考え方、関わり方が 大きく変わります。 それはどんど

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■思考によって日常を冒険に変えてみる―『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する』

こんばんは。えりたです。 本日読み終えたのはコチラの2冊です。 『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する』 1.まだ歩きださない 2.読めないガイドブック ■友田とん ■代わりに読む人 ■価格 1.700円+tax 2.1500円+tax

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■本を読むことの幸せに満ちた物語―『やんごとなき読者』

こんばんは。えりたです。 本日、読了した本はコチラです。 『やんごとなき読者』 ■アラン・ベネット著/市川恵里訳 ■白水社(Uブックス) ■1300円+tax ■ISBN:9784560072363 こちらの本は 病理医ヤンデル先生のこちらのtweetが きっかけで購入→即読みしました。

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■コミュニケーションの基本を知る―東畑開人『聞く技術 聞いてもらう技術』

こんばんは。えりたです。 本日、読了したのはコチラです。 『聞く技術聞いてもらう技術』 ■東畑開人 ■ちくま新書 ■860円+tax ■ISBN:9784480075093 東畑先生の本は幾つか読んでいて 今回もそのご縁で購入しました。 はじめに 「『聞く』と『聴く』の どちらが難しいと思いますか」と 筆者は問いかけます。

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