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#岸政彦

一人の参加者から見た「東京の生活史」プロジェクトの凄み

一人の参加者から見た「東京の生活史」プロジェクトの凄み

一人一人の人間に、生まれた場所があって、生きてきた時間があって、かなしみやたのしみがある。そういう当たり前のことを、私たちはいつも簡単に忘れてしまう。

先日紀伊國屋じんぶん大賞を受賞した「東京の生活史」。今をときめく岸政彦さんが指揮をとって、150人の聞き手が、150人の語り手に聞き取りをした、壮大な一冊だ。

去年の6月、その聞き手を公募すると知って、胸を高鳴らせたことをよく覚えている。それか

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一人ひとりの「合理性」を理解する――「地元を生きる 沖縄的共同性の社会学」を読む

一人ひとりの「合理性」を理解する――「地元を生きる 沖縄的共同性の社会学」を読む

待望の本が出たぞと手に取ったはいいけれど、予想以上に分厚くて重たくて、今はちょっと…と本棚に押し込んだ。

週末、改めて手に取って、ページをめくってみる。第一章で数字やグラフが並んでいるのを素通りし、さらに進むと、打越正行さんの著書「ヤンキーと地元」に登場した名前をいくつも発見した。

それは、30代になっても、地元の建設会社で働き、何人もの先輩に深夜呼び出され、送迎をさせられる毎日を送る男性の生

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2019年面白かった本 ベスト5

年末すべりこみで振り返り。
そもそもたくさん読めていないのですが、自分では選ばない本をいくつも読めた良い年でした。 

1. 東畑開人「居るのはつらいよ」
東畑さんに「いるのはつらいよ」と言ってもらえて救われた人が、いったいどれだけいることでしょう。
私は、子育てのしんどさがうまく言葉にできなかったとき、ものすごく救われました。

いま振り返ると、息子が1歳を過ぎるころまでは、めまぐるしい非日常の

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