【選書】「ミステリーって多すぎて自分に合うのを選べる気がしない」という友達に選書のコツを全力で話してみました〈第六夜〉 -人気作家は選書力upの味方-
~「読んでよかった」のために自分の好みを知ろう
分け合いたい! 底知れぬミステリーの魅力~
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〈第五夜〉はこちらから ↓↓↓
※以下、作家名は敬称略。本のデータは最後に記します
※あくまで私が読んだ本、好きなタイトルから話しています。ミステリーの選書に関してはすべて、ただの本好きの個人的な見解です
※おすすめの作品名も出しますが、あくまで選書のコツ・考え方がテーマです
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(1)「自分で本選び」が一番楽しいから、それをやってみよう!
エイミ ではさっそく前回のつづきで、東野圭吾のシリーズ以外の作品選びについてだね。
ミキ 私は『容疑者Xの献身』を「なんか有名だし」っていう理由で選んで読んでみたけど、作品の魅力の半分しか堪能できなかった・・・という話だったね、前回は。
エイミ 作品のせいじゃなく、あくまで読み手とのマッチングの問題だからね。これに関しては、ミキはそもそも理詰めの謎解きにあまり興味がないことが後でわかったから。
ミキ 私の好みはガリレオより加賀恭一郎のほうだろうってことは第五夜で理解したけど、シリーズもの以外なら、私はどうすれば自分に合った1冊を選べるんだろう?
エイミ そこで今日は「人気作家の作品群から自分好みの1冊を引き寄せる方法」を考えてみたいと思うんだ。
ミキ 自分好みの1冊を引き寄せる方法?
エイミ うん。たとえばある程度の人気作家なら、作品リストや各作品のあらすじはネットでも簡単に調べることができるよね。東野圭吾クラスなら、収集しきれないほどの情報が溢れてるだろうし。
ミキ 確かにかなり詳しいレビューを書いてる人もいるし、ネタバレありか、なしかも選べそう。
エイミ でも、それはあくまで表面上の出版情報や、書いた人目線の感想や評価なわけで。それだけをいくら読み込んでも、ミキにとって・・・いやミキの選書にとって必要な情報が確実に得られるどうかは未知数。だからそれを土台にしつつ、ミキが欲しい情報を引き寄せるんだよ。自分なりのアンテナや質問力を使って!
ミキ なんか・・・難しい話にはならない?
エイミ ならないよ、質問すればいいだけだからね。情報を引き出す相手は、本好きの友達でも司書さんでも、なんらかの選書サービスでも、ネットの質問コーナーでもいい。「この人はこういうことが知りたいんだ」と答える人の頭にピカッと電気が光るような質問を、ミキがするといいんだよ。
ミキ あぁ、電気ピカッ! ついでに左手のパーに右手のグーを1回ポンって叩きたくなるような・・・。
エイミ 右手のパーに左手のグーでもいいけどね、右利きには咄嗟には難しいよ。いやそれはさておき、これまで何夜にもわたって話してきたからミキはもうわかってると思う。もちろん自分でスマホとかにキーワードを入力して検索するのでもいいけど、具体的なイメージをもって選書するのとしないのとでは、成果はまったく違うからね。
ミキ 具体的なイメージをもって選書する、か・・・。
エイミ 大丈夫! じゃあそのためにまず、東野圭吾作品の全体像についてざっと説明するね。メモとかいらないから、とりあえず聞いてて。
ミキ お願いします!
エイミ 東野圭吾作品には、論理的な謎解きを楽しむ本格ミステリーもあれば、感動的な人間ドラマと謎解きを融合した社会派ミステリーもあります。
本格のなかでも科学、物理をメインにした理系謎解きもあれば、近未来的なSF設定やファンタジー的な要素を題材にしたものもあります。
また、ホテルや医療、スポーツなど特定のジャンルを題材にしたミステリーもあれば、謎解きよりも濃厚な人間ドラマをメインに描いた作品もあります。・・・ミキ、起きてる?
ミキ 起きてはいる。
エイミ ミキは、本を読んでどんな気持ちになりたいんだっけ? どんなミステリーなら「あぁ感動した!」と思えるんだっけ。
ミキ は! そうでした。
エイミ ミキにはもうその情報収集のチカラが充分に備わってると思うよ。
ミキ そっか・・・私、できるかも。じゃあちょっと質問してみるね!
(2)自分好みの1冊を引き寄せる「質問の切り口」とは?
ミキ では質問です。
「はじめまして。私はあまり読書慣れしていない者ですが、東野圭吾作品の1冊目、2冊目で読みやすい作品を探しています。ジャンルとしては、不可解な謎を解明する本格的な謎解きよりも、真相がわかって感動が広がるような人間ドラマ的ミステリーが好きです」
エイミ うんうん。ちなみにこれって誰に対しての質問を想定してる?
ミキ 誰ってこともないけど、本好きの友達でもネットの質問箱でも、言葉づかいを変えればどこでも通用する感じで。
エイミ いいね! これだけでも返答できないことはないけど、もう少し続けてみよう。
ミキ ほんと? あ、そうだ。「ガリレオや加賀恭一郎などの長いシリーズものは少し後で読む予定なので、まずは単体の作品から教えていただけるとうれしいです」
エイミ いいね! これだけでも返答できないことはないけど、もう少し続けてみよう。
ミキ 「後味が悪いものより、最後は少し希望がもてるような作品が好みです。また、書き手の目線が何度も入れ替わるような複雑な構成や、文庫本で500ページ以上あるような長い話も最初は避けたいと思っています」
エイミ いいね! これだけでも返答できないことはないけど、もう少し続けてみよう。
ミキ ・・・なんかさっきから同じこと言ってない? 途中でAIと交替した?
エイミ いや本当にミキの質問が素晴らしいからだよ! なんならAIのほうがもっと気のきいたこと言うわ。・・・さて、ここまででも本好き、東野圭吾好きなら「こんなのどう?」と返答したくなりそうだけど、せっかくだからもう少しポイントを絞るところまでやってみる?
ミキ え~。1回バトンタッチしてもいい? 脳みそ疲れた。
エイミ じゃあこんなのもどうだろう。
「SFやファンタジーの要素が入っていても大丈夫です」とか、または逆に「非現実的な設定よりも、実際に起こり得そうな事件のほうが好みです」とか、「ミステリーなので辛い展開は承知していますが、謎解きを楽しみつつ、明るい雰囲気の話はありませんか?」とか、質問としてはアリだと思うよ。
ミキ 確かにかなり絞れそうな気はするね。・・・もうすでに、東野圭吾の何かが私に近づいてきた気はするわ。
エイミ あとは逆転の発想で、「あなたがいちばん好きな東野作品は?」「いちばん泣いた東野作品は?」「いちばんトリックに驚いた東野作品は?」みたいな質問もありだと思うよ。
ミキ 世間一般の評価じゃなく、あなたにジャストフィットシリーズだね。
エイミ あとはたとえば「東野圭吾は理系的な謎解きが面白いと聞いたのですが、そのなかで読書初心者でも読みやすいものは」とか、「スポーツを扱っている作品でおすすめは」とか。ただしこういう質問をするためには、あらかじめ作品リストや作風を少しは調べておく必要があるけどね。
ミキ そうか、私は今まで本選びに「自分の好みや視点」を絡めていくっていう発想がなかったから、なんか新鮮。ただただ名作や傑作と言われるものを読んでみて、何も感じなければ私の読解力がないんだと思ってた•••。
エイミ 自分の個性や感性って大事だと思うよ。ミキはこの世にただひとり。AIの時代になっても、自分の感性の代わりはいないからね。それを知ったうえで選書力を磨くのがベストだと思うし、結局は自分でできるようになるのがいちばん楽しいと思うよ。
ミキ そうだね。本好きの人たちが感じてる「あぁ面白かった!」っていう感想を、私ももってみたいな。
エイミ それとこういう質問や選書の方法って、特に質問する相手がいなくても、自分で「そういう視点」をもって調べるだけで結果がガラッと変わるものだからね。
ミキ ちなみにこれらの質問の仕方って、ほかの作家でもつかえるよね?
エイミ あぁうん。そうなんだけど・・・。
(3)多作・人気の作家こそ「選書力アップ」の強い味方!
エイミ 私が今回東野圭吾をテーマにしたのは、ミキの読書ワールドに「多作の人気作家」がいたらいい、と思ったからなんだ。
ミキ 多作の人気作家? 作品が多すぎて逆に選ぶのが大変、ってことはないの?
エイミ 適当に選ぶと失敗するかもしれないけど、いちど「この人好き」と思えば次の本、また次の本ってどんどん選んで読んでいくでしょ? そうやって1人の作家の世界観のなかを泳げるようになると、いつの間にか読書力も選書力も上がっていくものなんだ。多作な人気作家は、読書の世界の強力な案内人になってくれるんだよ。
ミキ それなんかわかるかも。じつはうちの子どもが小学生のとき、はやみねかおるっていう児童書の作家にハマって・・・。
エイミ 児童書界のベストセラー作家だね。『名探偵夢水清志郎』シリーズとか『都会のトム&ソーヤ』シリーズが代表作かな。 確かに、読んでも読んでも読むものがなくならない多作の作家さん。
ミキ その人の本を読んでるうちに、うちの子どもは読書にけっこう慣れたみたいだった。
エイミ うん。第一夜で辻村深月、第三夜で宮部みゆきをミキにおすすめしたけど、東野圭吾もミキの読書ワールドに合ってると思ったんだよ。作風、好きだと思うから。
ミキ 私って東野圭吾の作風、好きなんだ(笑)。
エイミ だと思うな、かなり重いテイストを除けばだけど。辻村深月も宮部みゆきも東野圭吾も、ミキがミステリー小説に期待する要素をかなり高い確率で満たしている作家だと私は思う。それぞれ作風は違うけど、共通点があるんだよね。
ミキ そうなんだ! 自分のことだけど、いまのところ理解してないわ(笑)。
エイミ 第一夜から第四夜まで話してきてわかったことだよ。私がミキにすすめる作家の共通点は次の通り。ただしあくまで基本的な作風の話だから、作品によっても異なるし、あとは好き好きだけど。
(1)基本的に、提示した謎については解明、回収する
(2)全体的にミステリーであっても、人間の感情面を物語にしっかり絡ませる
(3)基本的に、最後は(一筋であっても)希望を描く
(4)読書初心者でも読みやすい、比較的シンプルな構成の作品がある
ミキ ・・・たしかに私、こういうのが読みたい気がする。
エイミ この作家さんたちは、これらの期待に応えてくれたうえで、さらにそれぞれの魅力があるんだよね。
ミキ さらにそれぞれの魅力?
エイミ うん。私の個人的な期待としては、さらに東野圭吾は「読み始めたら本を閉じられない展開の早さとエンタメ性」、宮部みゆきは「事件・出来事の渦中にいる人間の〝感情面での質の高いドラマ〟」、辻村深月は「現代を生きる私達のリアルな感性・感情に訴えかけるみずみずしさ」・・・に期待してる。
ミキ なるほど! 基本的なことかもしれないけどあらためて、本好きな人って本に期待してるんだよね。
エイミ 本そのものにも期待するし、本を読んで「面白かった」と思う自分の感情にも私は期待して読んでるかな。・・・余談だけど、子育てで「本を読む子は自己肯定感が高くなる」ってデータを見たことがあって、本を読んで面白いと思える自分の感情を発見するからじゃないかと、私は思ってる。自分って、興味深い生き物なんだよ。
ミキ 自分は興味深い生き物か・・・。
(4)好きな作家やジャンルが接点となり書店が「なじみの店」になる
エイミ 読書を始めようと思っている人に、東野圭吾みたいな多作の作家はとくにおすすめなんだ。最初はシリーズものにハマったとしても、そのうち「ほかのも読んでみようかな」とか「この人こういうのも書くんだ」みたいになって、その作家の全体像が見えてくるようになるでしょ。
ミキ 確かに何冊か読んでる時点でその作家はもう「おなじみさん」みたいに距離が縮まってるから、ほかの作品に対するハードルも下がるよね。
エイミ そしてそのときはもう、気が付けば自分自身が「読書初心者」じゃなくなってるかもしれないしね。
ミキ いや~、そうなったらうれしいなあ。
エイミ 前にミキが、書店で人気作家のコーナーが「壁」に感じるって言ってたでしょ? でもそれがだんだん行きつけの店みたいな感覚になっていって、知ってる作家の新作を見かけると「おっ!」と思うようになるんだよ。アンテナが反応するみたいに。
ミキ 本好きな人と書店に行くと、新刊を手に取って目をキラキラさせたりしてるけど・・・あれがそうなのね。
エイミ たとえばいま現在、東野圭吾の『あなたが誰かを殺した』とか『クスノキの番人』シリーズの新作が書店の目立つ場所に並んでると思うけど、作家についてある程度知っている人は、「これはファンタジー系かな?」とか「加賀恭一郎の新作なんだ!」と自分なりに感じることができる。それが、書店を楽しいと思う人の気持ちなんだよね。
ミキ 私には今までそれがなかったから、書店に行くとなんとなく居場所がない感じがしてたんだ・・・。
エイミ 自分に何が似合うかわからない人が洋服屋に行っても楽しくないけど、少なくとも「今日は青いTシャツを買おう」みたいな目当てがあればあれこれ手にも取れるし、それを繰り返すうちに「こんどは赤も着てみようかな」と思ったりするでしょ。
ミキ 接点があるから、なじみの店になっていくんだね・・・。居酒屋とかも、自分ひとりで飛び込みで新規開拓しようと思えば失敗も多いけど、友達の行きつけなら、なじみやすいもんね。
エイミ そういう解釈なんだ(笑)。ミキが前に「本ってなにを基準に選べばいいの? 話題性? インスピレーション?」って言ってたけど、そのひとつの答えがここにあると思う。まとめておくね。
〈本ってなにを基準に選べばいいの?〉
(1)実際に何冊か読んだ経験
(2)ちょっとだけでも調べる習慣
(3)好きな作家をベース基地にした、ほかの作家や作風へのアクセス(※第四夜で紹介)
(4)自分が「何を読みたいか」をある程度わかっているという自己信頼感
ミキ なんか納得・・・じゃあエイミ、あらためて質問いい?
エイミ はいどうぞ。
(5)東野作品について具体的に質問してみる
ミキ 質問です。「はじめまして。私はあまり読書慣れしていない者ですが、東野圭吾作品の1冊目、2冊目で読みやすい作品を探しています。ジャンルとしては、不可解な謎を解明する本格的な謎解きよりも、真相がわかって感動が広がるような人間ドラマ的ミステリーが好きです」
エイミ なんかデジャヴ・・・そうきたか(笑)。私も全部読んでるわけじゃないから、あくまで個人的な好みで答えるね。ガリレと加賀恭一郎については第五夜で書いたから、できるだけそれ以外でってことで。
お答え「読みやすさ、人間ドラマという視点からいくと入門編として『秘密』『手紙』『流星の絆』はいかがでしょう。『秘密』はメインの登場人物2人の関係が中心なので読みやすく、一見推理とは無関係に思えますが、後半で驚くような展開が起こります。
『手紙』はミステリーというより人間ドラマですが、悲しくも感動的です。『秘密』や『手紙』で描かれる一定の重みや痛みが東野作品の特徴でもあるので、この2作が気に入れば東野ワールドに入りやすいでしょう」
ミキ 「どちらかというと後味が悪いものより、最後は希望のもてる話が好みですが、そういう作品はありますか?」
エイミ 「『流星の絆』は少々長めで、ある3人のきょうだいが辛い犯罪に巻き込まれるミステリーですが、最後はすっきり解決し、後味もよいです。また、ファンタジー色OKでミステリー色が薄くてもよければ、感動作として『時生』『ナミヤ雑貨店の奇跡』『クスノキの番人』もお好みに合うかもしれません」
ミキ 「ミステリーなのである程度辛い展開は承知していますが、謎解きを楽しみつつ、あまり重い気分にならない作品はありますか?」
エイミ お答え「『マスカレード・ホテル』もおすすめです。シリーズものの第1作ですが、単体の作品として成立していて、舞台がホテルとあって場面もイメージしやすく読みやすいです。謎を解くのが刑事とホテルスタッフのコンビで、2人のやりとりが面白く、最後はすっきり解決します」
ミキ 質問「東野圭吾は理系的な要素が組み込まれていて面白いと聞いたのですが、そのなかで読書初心者でも読みやすいものはありますか?」
エイミ お答え「理系謎解きといえばガリレオですが、第1作『探偵ガリレオ』と第2作『予知夢』は短編集なので読みやすいのでは。気に入ればそのままシリーズに突入できます。
また、少し古い作品で『宿命』や『分身』はSF的な脳医学や生命工学がカギになっていますが、物語そのものは人間ドラマが中心。スポーツ選手の遺伝子をテーマにした『カッコウの卵は誰のもの』も、難しい内容ではなく親子関係や出自について考えさせられる物語です」
ミキ 質問「あなたがいちばん好きな東野作品は?」
エイミ お答え「個人的な最高傑作は『白夜行』です。犯罪小説としての圧倒的な完成度と、完全犯罪を繰り返す主人公2人の暗さに満ちた切実な人生が心を打ちます。重量感のある作品なので読書慣れしていない人にはおすすめしませんが、東野文学の最高峰だと思います」
ミキ ・・・それ、けっこう前にドラマで観たことあるわ。
エイミ 『白夜行』のドラマ版は名作だよ・・・もう少し答えていい?
ミキ いいよ。答えたくてたまらないんだね?
エイミ お答え 「あまり有名ではありませんが『むかし僕が死んだ家』は、謎解き魂を満たしてくれる大好きな作品です。とある洋館で訳アリの男女が、ある日記を手掛かりに女性の過去を探るミステリーですが、後半の怒涛の伏線回収がゾクゾクするほど面白いです。
また、最近読んだなかでは『夢幻花(むげんばな)』が素晴らしかった。青春ミステリーの爽やかさがある一方で、与えられた〝負の遺産〟についてひとつの決意が提示されていて、感動しました」
また、かなり初期の作品ですが女子大生コンビが次々と暗号の謎を解く『白馬山荘殺人事件』も大好きです。スマホがない時代の謎解きは人間力がほぼすべてなので、今とはまた違った読みごたえがあります」
ミキ ・・・ながっ! エイミの本紹介長いわ! 動画ならカットしてるとこだって。
エイミ すみません。本好きのひとりごとです。
ミキ ・・・なんか最近そんな名前の本かアニメなかった? まぁいいや。最後の質問いくね。
「逆に、読書初心者や東野圭吾初心者にはおすすめしない作品はありますか?」
(6)東野作品で1冊目におすすめしない作品は?
エイミ 「はい。重厚感がありすぎる『白夜行』のほかには、その続編という世界観で書かれた『幻夜』も1冊目にはおすすめしません。単体の作品として紹介されることもありますが、ぜひ『白夜行』の後に読んでいただきたいです。
また、加賀恭一郎シリーズの異色作であり、最後まで犯人が明かされない『どちらかが彼女を殺した』『私が彼を殺した』も読書初心者の1冊目としてはおすすめしません(※第五夜で紹介)。
また、叙述トリック系や、ひねりの強い作品は読書初心者にとって咀嚼不能なラストになる可能性があるので、2~3冊目以降におすすめします。具体的には『仮面山荘殺人事件』『回廊亭殺人事件』『ある閉ざされた雪の山荘で』あたりですが、逆にうまくハマり読書好きになる可能性も秘めている・・・とだけ添えておきましょう」
ミキ ありがとうございました。なんだか、お腹いっぱいです。
エイミ 最後にこれだけは言わせて。 東野圭吾の最大のすごさは、ひとりの作家がここまで多彩な「謎のパターン」を追求していて、大半の作品がヒットしているところだと思う。自分に合ったミステリーを探している人にぜひ、おすすめしたいです!
ミキ なんかアツい・・・アツいね。私もこんど「多肉植物の育て方」について語るわ。
エイミ まだまだ紹介できなかった作品もあるけど、第六夜はこのへんで。
ミキ そういえば近々「日常の謎」について話すって前に言ってなかった?
エイミ そうです。ミキ待望の、誰も死なない「日常の謎」だよ。
ミキ 私それ待望なの?
エイミ 「あなたが好きな謎の種類は?」って第二夜で質問したとき、「殺人事件が起こらない、身近で平和的な謎解き」も面白そうって言ってたでしょ。それが「日常の謎」っていうジャンル。
ミキ 忘れてた。
エイミ 質問のコツをミキがわかってくれて、ようやく私達はいまミステリー選書の扉の前に立ったに過ぎないからね。この先は、ミステリーってこんなにいろいろあるんだっていう話になるから。
ミキ マジで・・・ノックくらいしたと思ってた。もうここまできたら最後までつきあうわ。
エイミ つづきます!
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ミキ ・・・ところでエイミが読書の扉を開くキッカケになった「多作の人気作家」って誰かいるの?
エイミ 赤川次郎だね。中学生のとき『三毛猫ホームズの推理』を読んでハマって以来、そのとき読めるものはほぼ読みつくした。赤川次郎がいなければいまの私はいないな・・・。
ミキ 『三毛猫ホームズ』なら何年か前にドラマで観たことあるよ。
エイミ あぁ、石立鉄男の?
ミキ いや古いわ!
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【読書スキルと好みに合わない選書をしないための・・・今日のポイント】
・「どんな本を読みたいか」「質問の仕方」を整理して、自分で情報収集&本選びをしてみよう
・東野圭吾のような、人気シリーズを有する「多作の作家」を入口にすると、書店や出版業界が身近に感じられ、書店ウロウロが楽しくなる
・本選びの基準は
(1)実際に何冊か読んだ経験
(2)ちょっとだけでも調べる習慣
(3)好きな作家をベース基地にした、ほかの作家や作風へのアクセス
(4)自分が「何を読みたいか」をある程度わかっているという自己信頼感
・・・これらをもとに、読みたい本を選んでみよう!
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【第七夜予告】
誰も死なない「日常の謎」ってなに?↓↓↓
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すべての始まり・・・〈第一夜〉はこちらから↓↓↓
どんな謎ならワクワクしますか?〈第二夜〉はこちらから↓↓↓
人気作家・宮部みゆきの選書について〈第三夜〉で話しています↓↓↓
〈第四夜〉では「イヤミス」と「作風」について話しています↓↓↓
推理小説の実写化と原作愛について書いています↓↓↓
自己紹介です↓↓↓