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紙幣は日銀の負債である/お金の新常識#6

はじめに

こんにちは。

前回、お金の正体は、「発行者にとっての『負債』である」と結論付けました。

今回は、あなたのサイフに入っている「紙幣」も、発行者にとっての負債であるということを述べたいと思います。


前置き

本稿では、日本政府と日本銀行を同じ経済主体とみなして扱います。少し乱暴な捉え方かもしれませんが、ここではそういう解釈で差し支えありません。

「全体」が掴めなければ「部分」が理解できず、「部分」が理解できなければ「全体」が掴めない…

そういう種類の論理構造を扱うために、一旦「全体」像の方を大づかみに捉えていただく戦略を取っているのだとお考えください。

(※そんなことでは、中央政府と中央銀行を同一視することに納得できない!という方に向けて、もう少し踏み込んだ言い訳、もとい説明を、本稿最下部に付け加えておきます。)


紙幣の発行者

さて、紙幣の「発行者」とは、誰でしょうか?

その答えは、皆さんもご存知の通り、また紙幣の券面に「日本銀行券」とあるように、

「日本銀行」です。

日本銀行券(壱万円)
中央上部に、「日本銀行券」の記載があります

でも「紙幣」は本当に、日銀の負債なのでしょうか?


「紙幣(日本銀行券)」も負債である

日本銀行令和6年上半期財務諸表より
https://www.boj.or.jp/about/account/index.htm

上の表は、日本銀行が公表している財務諸表のうち、日本銀行の「負債」についてまとめられた箇所です。

「科目」の第1段目に、「発行銀行券」という記載があるのを確認できます。

これが、あなたのサイフにも入っている、「紙幣」です。

これまでに発行されて、流通している(=日銀の手元を離れた)紙幣が119兆円余り。

それらが日本銀行の「負債」として計上されていることが分かります。


なぜ「負債」なのか

ではなぜ、日本銀行券が日銀にとって「負債」なのでしょうか。

(ここから、日本銀行と中央政府は同じ経済主体なのだと考えてくださいね。)

「紙幣(=日本円)」は、政府が課す「税」の支払手段です。

したがって、政府は「紙幣」つまり「日本円」という通貨を発行するにあたって、それか「納税」に使えることを保証しなければなりません。

つまり政府にとって日本円は、「これを持ち込むと、必ず税として受け取って、あなたに脱税の罰を与えません」と約束し、その義務を負っていることになります。

この意味で、「紙幣(=日本円)」は、発行者である日本政府(=日銀)にとって、負債となっているのです。

そして、発行者にとっての「負債」は、発行者以外の私たちにとっては「資産」となります。

私たちは、政府が発行する「税金支払いチケット(政府の負債/国民の資産)」を『お金』と呼んでいるのです。

※この、税とお金の関係については、「モズラーの名刺」の寓話をご参照ください。

これが、お金の本質的な正体です。

今回の記事の内容、ご納得いただけましたか…?やや説得力に欠けるでしょうか。

とりあえず、今回はこの辺で。

お読みいただき、ありがとうございました。



本稿において、
中央銀行と中央政府を便宜上同一視した理由を付記します。

①日銀の「出資証券(≒株式)」の過半数を中央政府が持つ決まりになっているので、事実上、日銀は中央政府の子会社となっているため。

②厳密な理解には、今後解説する予定の『国債』の仕組みの理解が必要となるため。
すなわち、現実には政府が発行する「国債(中央政府の負債)」を、市中銀行を挟んで、日本銀行が発行する「日銀当座預金(日銀の負債)」に置き換えるオペレーションを介するわけですが、本稿では、国民からみて「資産」であるその両者をとりたてて区別する意味がないため。

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